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仕事のエコノミクス

拡大する日本の格差は、いまや「戦前に近いレベル」
(更新日:2009/12/07)

  
  
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 格差をめぐる論争が何年間にもわたってにぎやかだ。嚆矢となったのは、1998年に出版された橘木俊詔著『日本の格差社会』。ほんの少し前までは、

「一億層中流」「日本は格差の少ない平等社会だ」

 などといった見方がそれなりに浸透していたから、橘木が示した格差の存在は、驚きをもって受け止められた。
 折しも80年代バブル崩壊後。不景気が長びき、「失われた10年」などの言葉も生まれていたころだ。不安定な非正規雇用やフリーターが増えていたことも相まって、格差のありかたが大きな論争になった。
 そこで提出された論点は、「そもそも格差はあるのか」「あるならば、どれだけか」などだ。橘木に対する代表的な反論の一つに、大竹文雄から寄せられたものがある。大竹は、大きく次の2点を主張した。

<1>格差は近年に急拡大したわけでなく、1980年代半ばからの傾向である。
<2>そもそも格差が拡大している主な原因は、国内人口の高齢化によるものだ。

データに基づいた冷静な論証には、迫力さえあった。

 ただし大竹も、格差そのものの存在を否定していたわけではない。だが、ほかの論者のなかには、「格差なんてない」と格差自体を認めなかったり、「格差があって何が悪い」などと拡散するものがあったりで、議論は次第にわかりにくくなった。
 さらに2005年ごろからは、小泉改革による「郵政民営化」や「規制緩和」といった問題が格差論議とむすびついて過熱。国会論戦にも取り上げられるなどして政治化し、さらに議論を複雑にした面もある。
 では結局、格差の現状はどうなのか。論争をまとめたものとしては、文春新書編集部編『論争 格差社会』などがあり、経緯などを知るに便利だったが、肝心の部分である「要するに、事実は?」ということは相変わらずわかりにくかった。
 ようやく最近、入門書としても最適で、データもすっきり整理された決定版ともいえる一冊が出た。橋本健二著『「格差」の戦後史』だ。同書がまとめた格差の実情は、グラフの通り。
 ここでジニ係数という指標が、格差の大きさを表す数値である。この数値が大きいほど、格差が大きいことを示す。したがって、グラフから一目瞭然。日本の所得格差は、高度成長期からオイルショックにかけては低下傾向にあったものの、その後はずっと拡大しているわけだ。

広がる日本の所得格差(ジニ係数は、1980年ごろから上昇する)

 ジニ係数とはなにか。それは図のように、横軸に人数、縦軸に所得をとって、所得の低いひとから順に所得を合計していったときの曲線から求められる。
 所得格差がまったくなければ、この線は直線で右上がりだ。これが完全に平等な状態を表している。しかし、実際は所得格差があるから、線は下方向に張り出した弓のかたちの曲線だ。

 ジニ係数は、この格差ゼロの場合の直線と、実際の累積所得の曲線で結ばれた部分の面積を示している。つまり、格差がゼロならば、ジニ係数も0になる。反対に、1人の独裁者がすべての富を独占していれば、ジニ係数は1になる。もちろん、ジニ係数が1や0のような社会は現実にはない。実際はおおむね0.2~0.6程度に収まっている。
 では日本のジニ係数は現在いくらか。これは、税金や社会保険料などを集めて失業給付や生活保護などによって所得再配分をした「再分配所得」で計算した場合で、2004年が0.387だ。また、再分配をしないままの「当初所得」では0.526である。橋本はこう述べている。

「ジニ係数は、数字の上ではすでに戦前に近い水準にある」



(記事:Bizトピックス編集部 → 編集記者募集中

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