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【仕事のエコノミクス】vol.29 【更新日:2011/12/27】

TPPを論じるための不可欠な知識
「比較優位」をすっきりと整理する

  
  
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 環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉に参加する意思を、日本政府が表明した。モノやサービスだけでなく、知識や人の交流まで、幅広い分野を対象にして、貿易の自由化を図るための取り決めだ。
 国内には、このTPPをめぐって、賛成と反対の意見がはげしく衝突している。物品の関税を、例外なしに100%撤廃するのがTPPの原則だ。影響は大きい。
 とりわけ反対論が根強いのが、農業分野だ。コメではなんと800%。そんな途方もない公立の税金を課すことによって、農産品は輸入を阻止してきた。消費者からすれば、それだけ高い食品を買わされてきたわけだ。
 ではなぜ、こうした問題が起きるのか。そもそも国と国のあいだで貿易が起きるのは、どのようなメカニズムによるのか。
 そのもっとも基本的な理論が「比較優位」という考え方だ。二つの国が貿易をすれば、両方に国に利益がもたらされることを、この理論は証明している。「比較優位」を理解することなしに、そもそも国際貿易を議論することはできない。
 TPPの議論が混乱する背景には、このあまりに当然すぎる理論が、きちんと前提とされていない面があるからだ。
 知っている人にとっては、あまりに当たり前の理論を、あらためて整理する。

 ■アインシュタインに絵を描かせるな

 比較優位の考え方を象徴的に表す言葉がある。これだ。
「アインシュタインに絵を描かせるな」
 ちょっと面倒だが、まずはここから理解しよう。
 画家のゴッホと、科学者のアインシュタインがいるとする。二人がどのように頑張ればベストの成果を上げられるか、考えてみよう。
 こんな条件を想定する。アインシュタインは頑張れば、1年間に100枚の論文を書けるが、絵は2枚しか描けない。反対にゴッホは、頑張れば1年間に100枚の絵を描けるが、論文は2枚しか書けない。
 さあ、もしこの二人に「両方ともガンバレ!」と強制すると、どうなるか。合わせてどれだけの成果が出るだろうか。
 アインシュタインは1年間に、50枚の論文と1枚の絵を仕上げられるだけだ。
 ゴッホも1年間に、50枚の絵と1枚の論文しか仕上げられない。
 つまり、二人で合わせて51枚ずつの絵と論文ができるにすぎないのだ。
 ところが、二人がそれぞれ得意なことに集中すると、どうだろう。アインシュタインは100枚の論文を書き、ゴッホは100枚の絵を描ける。合わせて100枚ずつの絵と論文ができるのだ。すごいではないか。

科学者アインシュタインと、画家ゴッホで考える



 ■両国の富を高めるのが貿易だ

 この「比較優位」の理論は、さらに驚くべき結論を与える。それは、こうだ。
「たとえ相手より劣っている産業であっても、自分の国内でより得意な産業であるならば、その産業に特化して、貿易をしたほうがよい」
 今度は国と国で考えよう。こんな条件を考える。見事な証明が得られる。

<先進国であるA国> コメを100トンつくるには、15人が働かないといけない。車を100台つくるには、5人が働けばよい。
<途上国であるB国> コメを100トンつくるには、100人が働かないといけない。車を100台つくるには、もっとたくさんの200人が働かないと行けない。

 すると、どうなるか。もし貿易をしないと、これだけしかできない。

<A国> 人口は20人で、コメ100トンと車100台ができる
<B黒> 人口は300人で、コメ100トンと車100台ができる

 ここで重要なのは、A国のほうがB国よりも、コメでも車でも得意だということだ。しかし、それでもA国のコメ作りは勝てない。A国は車づくりに専念し、B国はコメづくりに専念するほうが、両国を合わせた富は高まるからだ。ほら、このとおり。

<A国> 20人で車だけをつくれば、400台の車ができる <B国> 300人でコメだけつくれば、300トンのコメが出来る

 つまり、コメも車もたくさんできるのだ。

先進国Aと、途上国Bについて考える



 ■富を交換することで、お互いに豊かになれる

 そうなのだ。これが、貿易が生まれる仕組みである。たとえ相手国とくらべて「絶対劣位」の産業であっても、その国内で「比較優位」にあならば、それに特化したほうが富が増えるのである。互いに得意分野に専念し、そうやって作り出したモノを交換する「貿易」をすることで、二つの国が豊かになれるわけだ。
 そして、ここから軋轢や衝突も生まれる。いまTPPをめぐって起きている問題そのものだ。日本の農家は、たとえ外国と比べて能力が低くなくても、貿易では勝てないのである。なぜなら、農業は国内で「比較劣位」の産業なのだから。
 もし、農家が自分たちの産業を守りたいならば、さらに努力をするしかない。ほかの産業がそうしているように。努力に努力を重ねて、車よりも得意な産業になれるなら、貿易でも車に勝てるだろう。
 しかし農家は、その努力をしない。多額の税金に守られ、競争を避けてきた日本の農家が、いまさら心を入れ替えて、消費者のために「安くてよい品物をつくる」という努力をするようになる見込みは、かなり乏しいだろう。
 これがTPP問題の基本構造だ。



(記事:Bizトピックス編集部 → 編集記者募集中

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