• 「働いたら負け」の時代にあえて「嫌われ仕事」で働く

     「働かざるもの食うべからず」という言葉がある。日本国憲法も「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負う」と規定し、労働は日本国民の義務としている。

     それに対抗するように、ネット上には「働いたら負け」という言葉が、まん延している。

     グローバル化の進展でブルーカラーの仕事は新興国に流れ、単純作業の単価は急降下。なんとかホワイトカラーになれたと思えば、長時間労働にサービス残業、セクハラ、パワハラ、ノルマ未達成で「自爆営業」を強いられる。

     高度成長の恩恵を受けた親の世話になれば、しばらく死ぬことはない。ネットやゲームで、安く暇つぶしができる。汗水垂らしてアルバイトするより、生活保護を申請すれば収入がいい。世間体なんか気にして働く道を選んでしまったヤツは負けなのだ――。

     


    「誰もがやりたくない」から存在するチャンス

     そうなったら、働く意味を見いだせなくてもおかしくない。

     「選ばなければ、働き口はある」

     とはいうものの、残っているのは誰もが嫌がる仕事ばかり。よほど他人に誇れて人気のあるモテそうなブランド仕事だったら、あえて就いてあげてもいいけれど…。

     そんな「働いたら負け」世代の考え方とは、対照的な働き方を勧める本がある。「自分を磨く『嫌われ仕事』の法則」(経済界)だ。

     嫌われ仕事とは、他人が嫌がってやりたがらない仕事のこと。著者の唐鎌氏がなりわいとするのは「雨漏り修理」職人である。原因が特定しにくく手間がかかって面倒な「雨漏り」は、建設会社にとってもっともありがたくないクレーム。顧客対応にも及び腰になる。

     しかし、そこの住人にとっては、これ以上ない深刻な悩みだ。自分が大金を投じて建てた家が、雨すら防げないなんて。一級建築士の手がけるデザイナーズ住宅のような華やかな仕事の裏にも、実は「雨漏り」がある。

     そこで「誰もが進んでやりたがらない仕事」をあえて買って出ることで、市場で勝つことができるという。嫌われ仕事は供給が弱く、需要が強いので、「お客から感謝される」「価格競争に巻き込まれにくい」特徴があるからだ。唐鎌氏も、お客から泣いて感謝されることもあるという。

     


    リストラ候補にならないサバイバル戦略に

     儲からない、面倒、危険、汚い、怖い、くさい、キツイといった仕事にこそ、チャンスが潜んでいる。考えてみれば、いまや一大ビジネスになっている宅配便ビジネスも、最初は嫌われ仕事だった。

     この発想は、普通のサラリーマンでも応用できるところがある。日常の仕事の中で、みんなが「嫌だなあ」と敬遠したがる仕事、苦手な仕事を探し、それをあえて買って出る方法だ。

     いまや大手企業でも、早期希望退職という名の大リストラが進行中である。いつ上司に肩を叩かれるかも分からない。そんな中、

     「あいつは使える。辞めさせられないな」

     「ヤツは残しておくか」

     と思わせるためには、ええカッコしい仕事より「嫌われ仕事」のエキスパートの方が有利に違いない。だいたい、キレイな仕事ばかり選り好みするヤツは、実は周囲から冷ややかに見られているものなのだ。

     英語だ、会計だ、グローバル人材だ、などと煽り、「楽して稼げる」「驚くほど儲かる」といった詐欺的言辞をろうして読者を食い物にしてきた最近のビジネス書とは対極にある、サバイバル戦略のヒントになりそうな本だ。


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