• 「一生年収300万円の会社」にうっかり入ったら、どうすればいい?

     今、あなたは働いている会社が、どれだけ危険かを知っているだろうか?

     経営コンサルタントの平康慶浩氏が書いた「うっかり一生年収300万円の会社に入ってしまった君へ」(東洋経済新報社刊)では、以下の10個の質問を投げかけ、危険信号の判定をさせている。

    (1)売り上げが減りつづけている

    (2)3年以内に早期希望退職を実施した

    (3)3年以内に一律の賃金カットをした

    (4)賞与が減る一方だ

    (5)年次ごとの平均人数よりも新入社員が少ない

    (6)サービス残業は当たり前だ

    (7)名ばかり管理職がいる

    (8)顔見知りの20代社員が年に2人以上辞めた

    (9)3分の1以上を出資している親会社がある

    (10)役員に名前だけの社長親族が2人以上いる

     さあ、あなたの会社には、いくつYESがあっただろうか。

     著者の平康氏が解説する。

     「3個以上の『その通り』があれば、その会社には危険信号がともる。さらに、5個以上になれば、昇給は、ほとんどなかったはずだ」

     そしてこう続けている。「そうした会社は『ブラック型企業』か『業績悪化型企業』のどちらかだ」と。いや、「最悪の場合は、その両方の『二重苦企業』かもしれない」と。


    賃金アップがない時代に給与を増やす方法とは?

     いま日本の会社の4社に1社は、昇給がない。

     厚生労働省の「賃金引き上げ等の実態に関する調査結果」によると、さらに、残る3社のうち2社では昇給額は5000円未満だ。つまり、5000円以上の昇給がある会社は4社に1社しかないのだ。

     なぜ給与が増えなくなったのだろうか。理由は2つある。

     1つは、人件費がコストとして管理されるようになったためだ。かつては人件費は「聖域」だった。給与を下げることは、どの会社でもほとんどなかった。しかし、今や人件費は、大半の企業で「変動費」になってしまった。

     もう1つは、人を相場の給与で入れ替えられるようになったからだ。かつては、転職しないで、がんばる人が優秀な社員で、会社もそのがんばりに報いていた。しかし、転職が一般化するにつれ、企業は優秀な人だけを昇給させればよくなってしまった。つまり「給与の相場」ができてしまったのだ。

     では、そんな時代にどうやって給与を増やせばいいのか。

     この疑問に対し、この本は具体的に指南をしている。基本的な方法は以下の3つだという。

    (1)定期昇給で増やす

    (2)昇進で増やす

    (3)配置転換で増やす

     もちろん、第4の方法として、その会社を辞めて「転職する」という道もある。だが、その前にするべきこととして、この3点を重視している。


    職種・業種別で具体的な方法を展開

     そして、本書の真骨頂がここから始まる。

     先の(1)~(3)で示した方法が、それぞれ「普通の企業」「ブラック型企業」「業績悪化型企業」での給与の増やす方法に対応するのだ。

     「ブラック型企業であっても、業績悪化型企業であっても、社内にとどまって給与を増やす方法はある」。この本がユニークなのは、著者がこのように主張している点にある。

     さらに、それを職種・業種別に区分けを行い、具体的な方法を展開している。そのため、非常に興味深い一冊となっている。

     例えば、「ブラック企業型の飲食業」の場合は、どうすれば「昇進」によって給与を増やせるのだろうか。この本によると、次の3つがポイントになるという。

    (1)POSシステムを使いこなす

    (2)原価率を覚える

    (3)常に役職者を目指し続ける

     1つ目はどういうことだろうか。「POS」とは、「ポイント・オブ・セールス」で、多くの飲食店が導入をしている販売管理システムだ

     ただし、これは単なるレジではない。商品をいつ仕入れて、いつ売れたのかをタイムリーに把握するシステムだ。この本では、POSシステムを使いこなし、「売り上げ履歴の確認」と「客単価の確認」を、身をもって覚えていくことを強く勧めている。

    こうして店舗ビジネスというものの仕組みを理解することが、低賃金から抜け出す手段になるのだという。残りの2点については割愛するが、本の中では、非常に詳しく説明されている。

     もちろん、ブラック企業で昇進することのデメリットを認めた上で、「飲食業で昇進なんてしたくない」という意見に対しては、親身のアドバイスも展開している。

     「一生年収300万円の会社に、うっかり入ってしまった」

     その罠に落ちた若者たちにとって、この本は実践的な救済の書となるだろう。


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