• 「ありのまま」の生活を見せた方がいい 欧米人観光客に楽しんでもらうコツ

    日本は2020年の東京オリンピック開催に向けて、外国人観光客を現在の2倍に増やす計画をしている。現在、日本を訪れる外国人観光客は約80%がアジアからで、欧州や米国、カナダからの観光客は10%を割っているそうだ。

    JTB総合研究所・主席研究員の中根裕氏は、欧米人の観光客を増やすためには「アジアと欧米の人たちの観光スタイルの違いを認識したほうがいい」と語る。2014年8月11日の「未来世紀ジパング」(テレビ東京)は、この中根氏を沸騰ナビケーターに迎え、日本が学ぶべき点が多いという欧州の観光地ノルウェーとブルガリアを紹介した。

    「アナ雪」で観光客が殺到するノルウェー

    ノルウェーは人口510万人に対して、年間観光客数が500万人にものぼる。世界的大ヒットの映画「アナと雪の女王」がノルウェーをイメージして作られたという理由で、いまアメリカや日本から観光客が殺到しているという。

    オーロラが有名な世界遺産の「ネーロイフィヨルド」には橋ひとつ掛かっておらず、「この国の人は、自然をそのまま見せるのがうまいね」と日本人の熟年観光客が感心していた。まさに「ありのままに」というわけだ。

    ノルウェーで一番の老舗ホテルでは、現地の自然や人の暮らしを直接見られるホテル周辺散策が人気で、一番多い客は日本人だ。地元の大学生の案内で森や果樹園を散策して幼稚園の脇を通り、子どもたちと「バイバーイ」と楽しげに挨拶を交わしていた。

    一方で物価が高く、バックパッカーらしきトルコ人旅行者は「すごく高いね。持ってきた缶詰の豆とパンしか食べてないよ」と苦笑いする。世界の物価を比べるビック・マックの値段はひとつ1600円と、堂々の世界第1位だ。

    それでも国は、美しい自然を守るべく様々な政策を打ち出している。高額な税金も電気自動車だけは免除で、普及率は5台に1台に達している。地元ドライバーもこう明かす。

    「このあたりは駐車場代が1時間1300円なんだけど、電気自動車はタダなんだ」

    渋谷の交差点が「絶好の観光スポット」!?

    物価の高いノルウェーに対し、ブルガリアの首都ソフィアは世界49都市で一番物価が安い。30枚切りのパンが50円、タラトールという名物の冷製ヨーグルトスープが150円とリーズナブルで、観光客にはうれしい限りだ。

    ブルガリアは人口730万人に対し、年間650万人の外国人観光客が訪れる。ここの国でも「ありのまま」が重視されている。遺跡の発掘が盛んで、セルディカⅡ駅には地下鉄工事中に発掘された古代ローマ時代の遺跡をそのまま展示、ヒサリャでは古代ローマ時代から続く温泉、テルマエの遺跡を見ることができる。

    大ヒット映画「テルマエ・ロマエⅡ」も、ブルガリアで撮影されたという。現在も温泉が豊富で、温泉ホテルが30以上あり、温水プールや併設される最新医療施設も人気だ。

    ヨーロッパの観光客は、日本で楽しかったこととして「日本文化の体験」や「地域の人との会話やふれあいなど」をあげているという(JTB総合研究所調べ)。短期間に買い物を済ませて帰るアジアの観光客とは大きく異なり、長期休暇をとり、普段の生活の延長で「暮らすように旅できる」ことを求めていると、中根氏は説明した。

    番組ゲストでフィナンシャルタイムズ東京支局長のジョナサン・ソーブル氏も、「ありのまま」の隠れた日本文化が体験できる場所がいいという。

    「海外からの友人が喜ぶ場所は、渋谷のスクランブル交差点と、新宿のゴールデン街。観光客を招くために整備しているものではない」

    日本の現役世代に「旅する余裕」は戻ってくるのか

    ソーブル氏自身も伊豆を旅して、お婆ちゃんが梅干を干している光景が印象に残ったそうだ。中根氏は、欧米人観光客を迎える際の気持ちのあり方をこう提案した。

    「『おもてなし』というと難しいテクニックかと構えてしまうが、自分たちの文化や習慣・生活を、自信を持って海外のお客さんに『お裾分けする』という気持ちが必要です」

    ゲストの宮崎美子さんも、「自分たちの生活に、自信をもつことが必要なんですね」と応じていた。あまり身構えない方が、かえっていいということか。

    一方、番組を通してノルウェーとブルガリアの魅力は十分に伝わってきたが、安い給与で生活に余裕がなく、長期休暇どころか数日の夏休みでさえ取りづらい現役世代には、手の届かない高嶺の花のようにも思えた。

    ブルガリアの森を散策していた日本人は、やはり年配のご婦人方だった。私たちの世代でも年をとったら、あのように豊かな老後を過ごすことができるのだろうか。(ライター:okei)

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