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イラストレーターが「買い叩かれる」実態 無報酬でも「選り好みできない」
「アンパンマン」の作者として知られるイラストレーター・絵本作家のやなせたかし氏が、94歳で亡くなった。
多くのファンや関係者がその死を悼んだが、その一方でやなせ氏が多くの仕事を「タダ働き」でこなしていたというニュースも話題になった。
「これが、全部、タダ。あっはっは」
「ほぼ日刊イトイ新聞」の対談で、晩年に制作を依頼された約200のご当地キャラのほとんどが「ノーギャラ」だったことを明かしている。
これを知った人気漫画家の吉田戦車さんが、
とツイッターでつぶやいたところ、ネット上で大論争に発展したわけだ。吉田さんはその後謝罪しているが、Yahoo!ニュースの意識調査では約8割の人が、吉田さんの発言に「共感できる」と回答している。
確かに近年、イラストの仕事が“買い叩かれ”やすいのは確かなようだ。
雑誌イラストのギャラ「1点2000円」
都内在住のフリーのイラストレーター(20代・女性)は指摘する。
事前にギャラの交渉はしたが、「悪いようにはしません」「他の方と同じくらいで」などとぼかされてしまった。仕事が欲しかったので受注はしたが、ギャラを聞いて後悔したと話す。
一般的な商業雑誌の場合、1ページに割り当てられる予算は平均で3万円~5万円ほど。編集者はその中からイラスト料金や原稿料、カメラマンの撮影料などをやりくりするわけだが、さすがにこれは安すぎるだろう。
「ギャラが支払われないまま、編集者に逃げられた」
たくさん数をこなせばいいのでは? と思うかもしれないが、
とため息をつく。この女性の場合、イラストレーターだけでは食べていけないため、カフェのアルバイトとの二足わらじの生活を送っている。友人からもこんな話を聞いたそうだ。
長年続く出版不況のあおりで、制作現場の財布のひもはどんどん固くなっている。
10年以上フリーで活動してきた30代の男性イラストレーターも、「現在はプロのイラストレーターにとって不遇の時代」だと語る。ひと昔前はイラストレーターが「希少」で、仕事を依頼する側とイラストレーターとの「個人的なコネクション」が必要だったという。
クライアントは足元を見て、安いギャラを「ふっかける」
ギャラのいい仕事だけ請け負い、報酬の低い仕事はどんどん切っていけば、クライアントの意識も変わってイラストレーターの立場も上がるのではないか? そんな疑問をぶつけてみたが……。
2013年4月3日に開かれた政府のクールジャパン推進会議では、ポスターやキャッチコピーの制作に関してクリエイターが無報酬で参加するべきだとも提言された。
国がこんな調子なのだから、企業がイラストレーターを“買い叩く”のも無理はないが、それでは新たな才能は育たない。イラストの道を断念する人も増えてしまうかもしれない。
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