世界を変える「日本のベンチャー企業」新興国の発展を「しくみ」で支える

最近、テレビ東京は海外で活躍する日本企業をよく取り上げる。2014年4月8日の「ガイアの夜明け」（テレビ東京）でも、日本の技術が世界の新興国に輸出されている現場を3つ紹介していた。1つ目は、植物工場を製造する日本のベンチャー企業、みらいの取り組みだ。

モンゴルでは冬に葉物野菜を手に入れようとしても、中国産のしなびた白菜などしかなかった。極寒の地ではハウス栽培すらできず、産地から輸送するのに時間がかかって鮮度が落ちてしまう。そんな中、みらいはウランバートルで植物工場を稼働させた。

モンゴルの野菜工場を遠隔操作

みらいは2004年創業、社員40人ながら日本で25か所に植物工場を販売するトップメーカーだ。モンゴル工場の野菜の生育管理は、ネットワークを使って日本から遠隔監視できる。

この工場でできた新鮮なレタスを試験的に100袋販売したところ、価格は中国産の1.5倍と割高だが、あっという間に完売した。

みらいの社長・嶋村茂治さんは「このレタスは健康に良さそう」と喜ぶ主婦を見つめて嬉しそうだった。ロシアへの輸出も決まり、今後の期待をこう語る。

「仕組みを輸出することの1つのスタイルになったと思う。植物工場の技術を寒い地域だけではなく、今度は暑い所でもチャレンジしてみたい」

2つ目は、大阪の中小企業が挑む「脱税できないレジ」。新興国や一部の先進国では、消費税などの税金納付額をごまかす店が多く、問題となっている。そこで、大阪にある社員数約10人の中小企業、BMCインターナショナル製のレジが活躍している。

このレジは、売り上げデータの改ざんができないのが特徴だ。実は、このような特殊なレジを法律で義務づけている国は、世界で31カ国にのぼる。BMCはこのうち23カ国に輸出している、日本唯一のメーカーだ。

社長の山田哲夫さんは更なる市場拡大を狙い、税金の未徴収に悩むアフリカ諸国に新製品を売り込んでいた。一から導入するより簡単な、普通のレジに取り付けられる「黒い箱」と呼ばれる端末だ。

打ち込んだ売上データが1日1回、国の税務当局に自動的に送られるため、売上を絶対にごまかすことができない。さらに、職員に運用を訓練するサービスも組み合わせた「徴税システム」そのものを作り上げた。

西アフリカのブルキナファソでは、初の導入国として正式に契約を結んだ。一定の売り上げがある全店舗に導入予定で、税収は約10億円アップすると見込まれる。山田さんは、この市場に対する見方をこう語る。

「日本人は“仕組み”を作り上げていくのが得意。まだまだ市場は拓かれて行くと思う」

3つ目は、セコムの医療システム。警備保障会社として有名なセコムだが、国内18カ所の病院の経営支援やシステム構築に関わってきた。そのノウハウを生かし、インド南部の経済都市・バンガロールに「サクラワールドホスピタル」という総合病院を建設した。

しかし私立病院のため、治療費は全額負担。これでは富裕層にしか利用できない。インド事業責任者・セコム医療システムの八島利昌さんは、貧しい人でも高度医療を受けられるように、日本の健康保険制度のような仕組みを作った。

地元企業から寄付金を集め、銀行に預けた利息を治療費に充てる基金は「サクラ基金」と名づけられた。この基金はインド政府から正式に承認され、他の病院でもこの基金で治療を受けることが可能になっている。

サクラ基金の適用第1号は、貧しい村からやってきた主婦のラクシャマさん。首の歪みを矯正するという高度な手術を、30万円のところ自己負担6万円で受けることができた。手術の成功を見守っていた八島さんは、こう語る。

「普通だったら医療を受けられない人に対して、医療を受けられる機会を増やせるように一生懸命やっていく必要があると思う」

モンゴルやアフリカ、インドは、いずれも今後の成長が見込まれる新興国だ。早期の支援によって、今後得られる果実も大きくなる可能性がある。縮小する日本国内の市場では活かしきれないノウハウが花開くのも喜ばしい。

ハード・ソフトの両面で、日本式の技術が世界の新興国で役に立っていることに、日本人の良心を感じた。こうした取り組みが日本の良さとして、広く世界に伝わって欲しいものだ。（ライター：okei）