大企業とベンチャー企業、これだけ違う福利厚生
転職先選びにおいて働く環境は大事。中でも「福利厚生」にこだわる方は多いのではないでしょうか? 本項では大企業とベンチャー企業、両者の福利厚生にどのような差があるのか見ていきます。
福利厚生費は会社規模に比例する
まず福利厚生は法律で企業に義務づけられている「法定福利」と、それ以外の「法定外福利」に区別されます。法定福利とは、雇用保険・労災保険・健康保険・厚生年金保険・介護保険などの社会保険料の会社負担分、労働基準法上の休業補償や児童手当などが該当します。
一方、特別休暇制度や見舞金、祝い金、保養所、社宅、寮、社員旅行、社費による物品購入制度などは法定外福利と見なされます。法定外福利は企業の任意となることから、企業間の福利厚生の差とはこの法定外福利の差と言い換えられます。
大企業とベンチャー企業の法定外福利(以下「福利厚生」とします)を比較した際、一般的に大企業のほうが充実しているといわれています。下記は2013年5月に公表された、厚生労働省の就労条件総合調査(2011年)の結果をグラフにしたものです。
(※常用雇用者=「期間を定めずに、または1か月を超える期間を定めて雇われている者」、「日々または1か月以内の期間を定めて雇われている者のうち、調査期間の前2か月にそれぞれ18日以上雇われている者」)
同調査によると、常用雇用者30~99人未満の企業は1ヶ月一人当たりの福利厚生費が4,587円だったのに対し、常用雇用者300~999人以上の企業では7,017円でした。さらに常用雇用者1000人以上の企業だと13,042円にも上っています。
もっとも、同調査は常用雇用者の人数のみで会社規模を分類していますので、こちらで示した大企業の定義に基づく結果ではありません。しかし「規模が大きい企業ほど、従業員一人の福利厚生にかかる費用が高い」という傾向を知る資料とはなるでしょう。
また「大企業vsベンチャー企業の給与比較」にもあるように、一部の企業を除くベンチャー企業では少人数経営の会社が多い傾向にあります。以上により「大企業はベンチャー企業よりも従業員の福利厚生に費用を投入している」と考えられます。
ベンチャー企業の福利厚生は?
このように金額で見ると大企業に差をつけられているベンチャー企業。しかし、ベンチャー企業でも優秀な人材確保の重要性が認識されつつあり、近年は自社独自の福利厚生を打ち出す会社も増えています。
一例を挙げると、ソーシャルアプリなどの開発を行う株式会社モバイルファクトリーでは、有給休暇の他に1年に最大6日間の休暇が取得できる「カフェテリア制度」を導入しています。また、ソーシャルゲーム事業を行うクルーズ株式会社では、育児支援として従業員の子供が満4歳になるまで、年1回の誕生日に30万円を進呈する「ママサポ」制度を始め多彩な福利厚生を提供しています。
他にも、社内でお酒を飲めるカウンターバーやマッサージルームを設置しているベンチャー企業も存在しています。こうしたユニークな取り組みはベンチャー企業ならではといえそうです。
以上のようなベンチャー企業の福利厚生では、限られた予算でも従業員のニーズに絞った施策を行い、働きやすい環境を実現しているという共通点が見られます。もちろんすべてのベンチャー企業が福利厚生の充実に積極的であるとは限りません。しかし福利厚生本来の目的である「従業員のモチベーションの向上」という点では、大企業とベンチャー企業の差は年々狭まってきていると考えられるでしょう。