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    進化する中高年齢者の就業支援策 「生涯現役時代」に向けて

    65歳以上の人口が総人口の3割を超えようとしている現在、労働力の確保と高齢者の生きがい創出の両面から、「中高年齢者の就業促進」は社会の持続可能性を左右する重要な課題となっています。

     

    今回は、高齢者が持つ豊富な経験と知識を社会の中で最大限に活かし、生涯現役で活躍できる社会の実現に向けた取り組みを詳しく紹介していきます。

    雇用対策の法的枠組み

    「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(高年齢者雇用安定法)は、中高年齢者の雇用・就業対策の要となる法律です。この法律は、高齢者の雇用を促進し、その能力を十分に発揮できる環境を整備することを目的としています。

     

    2013年4月の法改正により、65歳までの雇用確保措置が企業に義務付けられました。具体的には、企業は以下のいずれかの措置を講じる必要があります。

    • 定年制の廃止(定年を完全に撤廃すること)
    • 定年年齢の65歳への引き上げ
    • 65歳までの継続雇用制度の導入
    • 70歳までの就業機会の確保

    さらに、2021年4月の改正では、70歳までの就業機会の確保が、努力義務として定められました。企業は以下のいずれかの措置を講じるよう努めることが求められています。

    • 70歳までの定年引き上げ
    • 定年制の廃止
    • 70歳までの継続雇用制度の導入
    • 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
    • 70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入(事業主が自ら実施する社会貢献事業/事業主が委託、出資等する団体が行う社会貢献事業)

    中高年齢者の再就職援助などについては、厚生労働省のサイトに最新情報がまとまっています。

     

    参考:厚生労働省 | 高年齢者の雇用

    相談窓口:中高年齢者の就業を支える最前線

    中高年齢者の就業を直接支援する相談窓口の役割と機能について解説します。

    ハローワークの役割

    ハローワーク(公共職業安定所)は、中高年齢者の就業支援において中心的な役割を果たしています。ここでは、専門の相談員が個々の状況やニーズに応じて、以下のようなサービスを提供しています:

    • 求人情報の提供:地域の求人情報を幅広く収集し、求職者に適した情報を提供します。
    • 職業紹介:求職者の希望や能力に合った求人を紹介し、就職に向けたマッチングを行います。
    • キャリアカウンセリング:経験豊富なカウンセラーが、個々の状況に応じた就職活動のアドバイスを行います。
    • 職業訓練の案内:必要に応じて、スキルアップのための職業訓練を紹介します。
    • 生涯現役支援窓口の総合的支援:単なる就職斡旋にとどまらない総合的な支援を行っています。

    特に「生涯現役支援窓口」では、55歳以上の求職者を対象に、より専門的で綿密な支援を行っています。キャリアコンサルティングや職業生活の再設計支援、さらには地域の企業に対する求人開拓まで、中高年齢者の就業を総合的にサポートしています。

     

    最新の支援サービスについては、最寄りのハローワークのウェブサイトを参照してください。

    シルバー人材センターの機能

    シルバー人材センターは、主に60歳以上の高齢者を対象とした会員制の組織です。「自主・自立、共働・共助」の理念のもと、高齢者の社会参加と生きがいづくりを支援しています。提供される仕事には以下のような特徴があります。

    • 短期的・臨時的な仕事が中心
    • 地域の日常生活に密着した業務(例:庭の手入れ、家事援助、施設管理など)
    • 会員の能力や希望に応じた多様な就業機会

    支援サービス:スキルアップと就職促進

    中高年齢者の就業を促進するための具体的な支援サービスについて解説します。

    高齢者スキルアップ・就職促進事業

    「高齢者スキルアップ・就職促進事業」は、中高年齢者の就業支援において重要な役割を果たしています。この事業の特徴は以下の通りです。

    • 高齢者向けの職業訓練プログラムの提供
    • 訓練修了後の就職支援
    • 現代社会のニーズに合わせた多様な分野での訓練コース(IT技術、介護、事務など)

    この事業により、中高年齢者がIT関連など新たなスキルを身につけ、変化する労働市場に適応できるよう支援しています。

    ポリテクセンターでの職業訓練

    ポリテクセンター(職業能力開発促進センター)では、中高年齢者向けの短期間職業訓練を実施しています。これらの訓練の特徴は、以下の通りです。

    • 比較的短期間(3〜6ヶ月程度)で実践的なスキルを習得
    • 地域の産業ニーズに合わせたカリキュラム
    • 実習を重視したハンズオン(体験型)の学習方法

    参考:独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 | 職業能力開発促進センター(ポリテクセンター)

    地方自治体による地域特性を活かした支援

    中高年齢者の雇用・就業対策における地方自治体の役割と、各地で展開されている特徴的な取り組みについて紹介します。

    東京都の「シニア就業応援プロジェクト」

    東京都が実施している「シニア就業応援プロジェクト」は、大都市圏における中高年齢者の就業支援の代表例です。「定期的な就業支援セミナーの開催」「企業合同説明会の実施」「履歴書の書き方や面接対策など、実践的なスキル講座の提供」などを行っています。

     

    参考:TOKYOはたらくネット | シニア就業応援プロジェクト

    大阪府の「シニア就業促進センター」

    大阪府の「シニア就業促進センター」は、地域に根ざした就業支援の拠点として機能しています。主なサービスは「無料職業紹介」「就業相談」「企業向けの高齢者雇用に関する啓発活動」で、地域の企業ニーズを熟知したコーディネーターが常駐して支援を行っています。

     

    参考:企業と人が出会う場所 OSAKAしごとフィールド

    福岡県の「70歳現役応援センター」

    福岡県の「70歳現役応援センター」は、その名の通り70歳まで働き続けられる社会の実現を目指した先進的な取り組みです。「就業」の枠を超えて高齢者の社会参加を幅広く支援している点が特徴で、以下のような取り組みを行っています。

    • 就業相談だけでなく、ボランティア活動やNPO活動など幅広い社会参加の機会を紹介
    • 高齢者の多様なニーズに応える柔軟な支援
    • 地域社会の活性化に貢献する活動の推進

    参考:福岡県生涯現役チャレンジセンター

    事業者向け助成金:企業の取り組みを後押し

    中高年齢者の雇用促進には、求職者側への支援だけでなく、雇用する側である企業への支援も欠かせません。

    特定求職者雇用開発助成金

    「特定求職者雇用開発助成金」は、中高年齢者を含む就職困難者(60歳以上65歳未満の者や65歳以上の離職者)を雇用した企業に対して支給される助成金です。

     

    参考:厚生労働省 | 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)

    65歳超雇用推進助成金

    「65歳超雇用推進助成金」は、65歳以上の高年齢者の雇用環境整備(65歳以上への定年引き上げや、66歳以上の継続雇用制度の導入等)を行う企業を支援する制度です。

     

    厚生労働省 | 65歳超雇用推進助成金

    高年齢者評価制度等雇用管理改善助成金

    「高年齢者評価制度等雇用管理改善助成金」は、高年齢者の雇用管理制度の整備等に取り組む企業(高年齢者の雇用管理制度の整備等に係る措置を実施した事業主)を支援する制度です。

     

    独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 | 65歳超雇用推進助成金(高年齢者評価制度等雇用管理改善コース)

    注目される中高年齢者の雇用・就業対策

    中高年齢者の雇用・就業対策は、日本社会が直面する重要課題の一つです。

     

    関連法改正の背景には、高齢者の就業意欲の高まりと、人口減少社会における労働力確保の必要性があります。中高年齢者が培ってきた豊富な経験や専門的な技能を最大限に活用し、社会の活力を維持することが主な狙いです。

     

    同時に、年金支給開始年齢の引き上げに伴う高齢者の所得保障という側面もあります。

     

    新技術の進展に伴い、中高年齢者に求められるスキルも変化していくことが予想されます。これに対応した職業訓練や再教育の機会の提供も、今後の大きな課題となるでしょう。

     

    こうした取り組みは、単に労働力確保の観点からだけでなく、高齢者の生きがいづくりや社会参加の促進、ひいては健康寿命の延伸にもつながる重要な施策として、今後ますます注目されていくことでしょう。

     

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