マミートラックの実態とその対策
育児しながら働く女性社員、あるいは育休から復帰した女性社員が、本人の意図に反して昇級・昇格のコースから外れたキャリアを余儀なくされたり、仕事内容を限定されたりする事例を「マミートラック」と呼びます。近年大きな問題になっているマミートラック。日本における現状とその対策をご紹介します。
マミートラックの実態
「マミートラック」とは、子育てしながら働く女性がキャリアアップのコースから外れてしまうことをいいます。仕事と子育ての両立はできるものの、昇進・昇格とは縁遠いキャリアコースになってしまうことを指しており、延々と陸上競技のトラックを走らされているような状態にちなんでマミートラックと呼ばれるようになりました。
職場の男女均等支援やワーキングマザーの活用支援が不十分な場合、働く母親は補助的な職種や分野に従事して、出世とは縁遠いキャリアを選ばざるをえなくなることが少なくないのです。マミートラックとは具体的にどのような処遇なのでしょうか。
・子育てにより時短勤務を活用したら、評価・給料が下がった
・時間制約がある社員は2軍扱いをされる
・子育て中の女性は昇格しにくい
・ワーキングマザーは、自分の気持ちとは裏腹にたいした仕事を任されない
出産前は第一線で活躍していた女性社員が、子どもを持った途端にサポート業務に移る方が少なくないのが日本の現状なのです。NHKのインターネット調査によると、出産後に復職した1300人の女性のうち、マミートラックを経験した人は27.8%にも及びました。出産した女性の3割近い人がマミートラックの存在を痛感しているのです。
マミートラックへの企業での対策
こうしたマザートラックは労働力を適切に活用できていないこと、一億総活躍社会の方向性に反することなどから、見直しが進められています。実際に、企業でどのような取り組みがなされているかご紹介します。
まず、株式会社カルビーは、時短勤務のワーキングマザーにも一般社員と同等にチャンスを与え、成果を出すことができれば、キャリアアップにつながる制度を導入しました。今でこそ、働き方改革で注目されるようになった同社ですが、以前は、子育てしながら短時間で働く女性が活躍できる雰囲気はなく、管理職も男性ばかりだったそうです。
時短勤務の女性は、時間が来たら会議中でも退社します。その分、電車での通勤時間にアイディアを検討したり、隙間時間に資料をまとめたりするのです。さらに、自宅でもパソコンとスマートフォンで部下や取引先と即時連絡が取れるようにしています。自宅でも連絡をきちんと取れるように整備しているのです。
さらに、日産自動車では、在宅勤務制度やフレックス勤務制度の拡充を進めてワーキングマザーなどが働きやすい環境の整備を進めています。さらに1日8時間労働を意識させる「ハッピー8」を全社員に徹底しました。同時に、コアタイム無しのフレックス制度の導入も実現したのです。
全社員にこうした制度の活用を促すことで、時短勤務などを活用しながら働くワーキングマザーを一般化し、マミートラックを是正しているのです。実際に、産休を控えたタイミングで昇格試験を受け、育休からの復帰と同時にアシスタントマネージャーに昇格した女性社員もいます。
その他に求められるマミートラック対策
・子育て中の女性社員も管理職に抜擢・継続するようにする
・産休・育休前に昇格試験を受けられるようにする
・時短勤務などを広く利用できるようにする
・在宅勤務・リモートワークの整備をする
・ノー残業を徹底し、保育園への送り迎えなどを可能にする
・保育園設置やベビーシッター補助などを整える
・管理職への理解を浸透させる
マミートラックへの対策としては、妊娠・子育て中の女性が管理職へ昇格することを一般化させることが挙げられます。それを実現する方法として、時短勤務や在宅勤務を整備していくことが有効です。さらに、その制度を活用できる雰囲気づくりを人事部が推進することや、トップからの発信をすることは欠かせないでしょう。
また、子育てと仕事を両立させるために、子育てサポートを充実させるのも手。保育園・託児所を会社に併設したり、ベビーシッター利用の補助制度を設けたりすることが有効です。社会全体で、「働きたい子育て女性をサポートしていく」という方向にシフトしていくことが求められるでしょう。(ライター:香山とも)