Web業界の「デザイン系」職種とは?5つの職種の仕事内容とキャリアパスを解説
デジタル時代は、Webサービスの「見た目」と「使いやすさ」が成功の鍵を握ります。優れたデザインは単に美しいだけでなく、ユーザーの行動を導き、ビジネス目標の達成を後押しするため、Web業界ではデザイン系職種の重要性が高まり続けています。
「デザインに興味はあるけど、具体的に何ができるのか分からない」「自分のスキルがどの職種に活かせるか知りたい」と考えている方も多いのではないでしょうか。今回は、Web業界で活躍するデザイン系職種の具体的な仕事内容、必要なスキル、年収相場、そして将来性について詳しく解説します。
Web業界のデザイン系職種とは
Web業界におけるデザイン系職種は、ユーザーに価値を届けるための見た目と体験を創り出す専門家です。それぞれが異なる専門性を持ちながら協働しています。
デザイン系職種の役割と重要性
Web業界のデザイン系職種は、単に「見栄えを良くする」だけの仕事ではありません。ユーザーが直感的に理解できるインターフェース設計、ブランドの世界観を表現するビジュアル制作、感情に訴えかけるアニメーションなど、多岐にわたる役割を担っています。
例えば、ECサイトのコンバージョン率(購入や会員登録などの成果につながる率)は、デザインの良し悪しによって大きく変わります。また、企業サイトの第一印象はブランドイメージに直結し、アプリの使いやすさはユーザー継続率に影響します。
デザイン業務の基本的なワークフロー
デザイン業務の一般的な流れは、要件定義→リサーチ→ワイヤーフレーム作成→デザイン制作→レビュー・修正→実装サポートという段階を踏みます。プロジェクトの規模や性質によって異なりますが、この基本的なプロセスを理解しておくと全体像が掴みやすくなります。
最近では「デザイン思考」と呼ばれるアプローチが広く取り入れられています。これは「共感→問題定義→アイデア創出→プロトタイプ作成→テスト」のサイクルを繰り返しながら、ユーザーの本質的な課題を解決するデザインを生み出す手法です。
ビジネス成果に直結するデザインの価値
優れたデザインは単なる装飾ではなく、ビジネス成果に直結する戦略的資産です。直感的に使えるUIは問い合わせ数の削減につながり、魅力的なビジュアルは滞在時間の延長や離脱率の低下をもたらします。
実際、多くの企業がデザインに投資する理由は明確なROI(投資対効果)が見込めるからです。Googleによる「Material Design」、Appleの「デザインガイドライン」など、大手企業が独自のデザインシステムを構築・公開しているのも、デザインの戦略的重要性を示しています。
1. UI/UXデザイナーの仕事
ユーザーインターフェース(UI)とユーザーエクスペリエンス(UX)を設計するUI/UXデザイナーは、近年特に需要が高まっている職種です。使いやすく、目的達成をスムーズにするデザインを生み出す役割を担います。
UIデザインとUXデザインの違い
UI(ユーザーインターフェース)とUX(ユーザーエクスペリエンス)は密接に関連していますが、厳密には異なる概念です。UIはボタン、メニュー、テキストボックスなど、ユーザーが直接触れる視覚的要素を指します。一方UXは、サービス全体を通じてユーザーが得る体験、感情、使用感の総体を意味します。
わかりやすく例えると、UIは家の内装(壁紙、家具のデザインなど)、UXは家全体の間取りや動線計画に例えられます。UXが良くてもUIが悪ければ使いにくく、UIが美しくてもUXが考慮されていないとユーザーの目的達成は難しくなります。
ユーザーリサーチと要件定義
UI/UXデザイナーの仕事は、見た目のデザインを考える前に、ユーザーリサーチから始まります。ユーザーインタビュー、アンケート、行動観察、競合分析などを通じて、ターゲットユーザーの行動パターン、ニーズ、痛点を理解します。
このリサーチを基に、「ペルソナ」(典型的なユーザー像)や「カスタマージャーニーマップ」(ユーザーの行動プロセス全体の可視化)を作成し、具体的な要件を定義していきます。ビジネス目標とユーザーニーズを両立させることが重要です。
ワイヤーフレーム・プロトタイプ作成
要件が定まったら、画面構成や情報設計を行うワイヤーフレーム(骨組み)を作成します。この段階では見た目の美しさより、情報の優先順位や画面遷移の流れなど、基本構造に焦点を当てます。
さらに、実際の操作感を確認するためのプロトタイプ(試作品)を作成します。Figma、Adobe XD、Sketchなどのツールを使って、ボタンをタップした時の反応やスクロール動作などを再現し、実際にユーザーテストを行ってフィードバックを得ます。
デザインシステムの構築と管理
大規模なプロジェクトやチーム開発では、「デザインシステム」と呼ばれる共通のルールやコンポーネント集を構築することが一般的になっています。ボタン、アイコン、フォーム要素などの基本パーツを標準化し、一貫性のあるデザインを効率的に実現します。
UI/UXデザイナーは、このデザインシステムの構築と管理にも携わり、プロダクト全体の統一感とブランドアイデンティティの維持を図ります。エンジニアとの協業もスムーズになるため、チーム全体の生産性向上にも貢献します。
年収相場とキャリアパス
UI/UXデザイナーの年収相場は、経験やスキルによって幅がありますが、未経験からのスタートで400〜500万円、経験3年以上で600〜700万円、シニアレベルでは800万円以上も珍しくありません。特にユーザー中心設計の経験やデータに基づく改善実績がある人材は評価が高い傾向にあります。
キャリアパスとしては、より専門性を高めてUXリサーチャーやUXストラテジストに進む道、マネジメント志向でデザインディレクターやデザイン部門の責任者になる道、またプロダクトマネージャーへのキャリアチェンジなど、様々な選択肢があります。
2. Webデザイナーの仕事
Webサイトの視覚的なデザインを担当するWebデザイナーは、デザイン系職種の中でも歴史が長く、幅広い業務を担当します。サイトの見た目だけでなく、使いやすさや技術的な実装も考慮した総合的なスキルが求められます。
サイトデザインとレイアウト設計
Webデザイナーの基本的な仕事は、Webサイト全体のデザインコンセプトを決め、各ページのレイアウトを設計することです。企業のブランドイメージに合った色使い、フォント選択、画像やイラストの配置などを通じて、統一感のあるデザインを創り出します。
例えば、企業サイトであれば信頼感と専門性を、ECサイトであれば商品の魅力と購入へのスムーズな導線を、メディアサイトであれば読みやすさとエンゲージメントを意識したデザインが求められます。
レスポンシブデザインの実装
現在のWebデザインでは、スマートフォン、タブレット、PCなど、様々な画面サイズに対応する「レスポンシブデザイン」が標準となっています。Webデザイナーは、デバイスごとにどのように表示を最適化するかを考え、一貫したユーザー体験を提供します。
例えば、PCでは横並びで表示していた要素をスマホでは縦に並べる、ナビゲーションをハンバーガーメニューに変更する、画像サイズを調整するなど、様々な工夫を凝らします。単に見た目を縮小するだけでなく、各デバイスの特性を活かした設計が重要です。
HTML/CSSのコーディングスキル
多くのWebデザイナーは、デザインだけでなくHTML/CSSによるコーディングも行います。Photoshop、Illustrator、Figmaなどでデザインした内容を、実際にブラウザで表示できるコードに変換する作業です。
特に中小規模の制作会社やフリーランスの場合、「デザインからコーディングまで一貫して担当できる」ことは大きな強みになります。最近ではJavaScriptの基礎知識を持つWebデザイナーも増えており、インタラクティブな要素も自分で実装できるスキルが評価されます。
CMSテンプレートのカスタマイズ
現在のWebサイト制作では、WordPress、Shopify、Wixなどのコンテンツ管理システム(CMS)を使うケースが増えています。Webデザイナーはこれらのプラットフォーム上で、テンプレートをカスタマイズしてクライアントの要望に合ったデザインを実現します。
CMSの知識があると、クライアントが自分で更新できるサイト構築が可能になり、長期的な運用コストの削減にもつながります。また、デザインだけでなく、プラグインの選定や基本的な設定など、技術面でのサポートも行えると重宝されます。
年収相場とキャリアパス
Webデザイナーの年収相場は、未経験からのスタートで350〜450万円、経験者で500〜600万円程度です。フリーランスの場合、スキルと実績次第で年収800万円以上も可能ですが、営業力や顧客管理能力も求められます。
キャリアパスとしては、UI/UXデザイナーへの専門特化、アートディレクターへのステップアップ、Webディレクターとしてプロジェクト全体を統括する道などがあります。また、コーディングスキルを深めてフロントエンドエンジニアに転向する人や、デザインの知見を活かしてWebマーケティングに進む人もいます。
3. グラフィックデザイナーの仕事
Web上で使用される様々なビジュアル素材を作成するグラフィックデザイナーは、伝える情報を視覚的に魅力的かつ効果的に表現する専門家です。印刷物とは異なるデジタルならではの特性を理解したデザインが求められます。
バナー・アイコン・イラスト制作
グラフィックデザイナーの主な仕事の一つは、Webサイトで使用されるバナー広告、アイコン、イラスト、インフォグラフィックなどの制作です。限られたスペースで情報を的確に伝え、ユーザーの注目を集めるビジュアルを作ります。
例えば、キャンペーンバナーであれば「何が」「いつまで」「どのような特典があるか」を一目で理解できるデザイン、アイコンであれば直感的に機能が理解できるシンプルな表現など、目的に応じたビジュアルコミュニケーションを設計します。
ブランドアイデンティティの表現
企業やサービスのブランドアイデンティティを視覚的に表現するのもグラフィックデザイナーの重要な役割です。ロゴデザイン、カラーパレット、フォント選定、キービジュアルなど、ブランドの世界観を一貫して伝えるビジュアル要素を作成します。
Web上でのブランド表現は一貫性が重要です。例えば、コーポレートサイト、SNSアカウント、メールマガジン、広告など、様々な接点で統一感のあるデザインを提供することで、ブランド認知とイメージ定着につなげます。
広告素材・SNS投稿用画像の作成
デジタル広告(バナー広告、リスティング広告のサムネイル等)やSNS投稿用の画像制作も、Webに特化したグラフィックデザイナーの主要業務です。クリック率やエンゲージメント率を高めるための視覚的工夫が求められます。
特にSNSでは、スクロールしているユーザーの目を引き止める「止め効果」のあるデザインや、シェアしたくなるようなインパクトのあるビジュアルが重要です。プラットフォームごとに最適なサイズや表現方法が異なるため、それぞれの特性を理解した制作が必要になります。
印刷物とデジタルデザインの違い
従来のグラフィックデザイナーが主に印刷物(CMYK)を扱っていたのに対し、Web向けグラフィックデザイナーはデジタル表示(RGB)のための制作が中心になります。この違いを理解し、適切なカラーマネジメントができることが重要です。
また、印刷物と異なり、デジタルデザインではファイルサイズの最適化、様々な解像度での表示、インタラクティブ要素の考慮など、Web特有の条件を踏まえた制作が求められます。両方の知識を持っていると、オンライン・オフライン両方のマーケティング施策に対応できる強みになります。
年収相場とキャリアパス
Webに特化したグラフィックデザイナーの年収相場は、未経験からでは350〜450万円程度、経験を積むと500〜600万円、専門性の高いシニアデザイナーで700万円以上になることもあります。
キャリアパスとしては、アートディレクターへのステップアップ、UI/UXデザインへの領域拡大、モーショングラフィックスへの専門特化などが考えられます。また、Webマーケティングの知識を深めてマーケティングデザイナーとして活躍する道もあります。デジタル広告の重要性が高まる中、デジタルマーケティングとデザインの両方を理解している人材の需要は増加傾向にあります。
4. モーショングラフィックデザイナーの仕事
動きのあるグラフィックやアニメーションを制作するモーショングラフィックデザイナーは、静止画だけでは表現できない時間軸を活用した視覚表現を担当します。Web上の動的コンテンツの需要増加に伴い、注目度が高まっている職種です。
Webサイト用アニメーション制作
Webサイトに動きを加えるマイクロインタラクション(小さな動的効果)やページ遷移アニメーション、ローディング表示など、ユーザー体験を向上させる様々な動的要素を設計・制作します。
例えば、ボタンにホバーした時の反応、スクロールに連動したコンテンツの表示、数値の動的カウントアップなど、適切な動きを加えることでユーザーの関心を引き、情報の理解を助けます。ただし、過剰なアニメーションはサイト表示速度や使いやすさを損なう可能性もあるため、機能とのバランスが重要です。
プロモーション動画・説明動画の作成
Webサイトのヒーローセクション(最初に目に入る大きな領域)に使われる動画やサービス説明動画、製品紹介動画など、短時間で効果的に情報を伝える動画コンテンツを制作します。
特に近年はSNSやWeb広告での短尺動画の需要が高まっており、5〜15秒程度で視聴者の注目を集め、メッセージを伝える技術が求められています。テキストやグラフィック要素を動きと組み合わせることで、静止画では伝えきれない情報や感情を表現します。
インタラクティブコンテンツの設計
ユーザーの操作に反応するインタラクティブなコンテンツの視覚設計も、モーショングラフィックデザイナーの領域です。マウスやタッチの動きに連動するビジュアルエフェクト、データの動的可視化、インタラクティブなストーリーテリングなどを実現します。
例えば、スクロールに応じてストーリーが展開するWebサイト(スクロールストーリーテリング)や、ユーザーの入力によって変化するインフォグラフィックなど、一方的な情報提供ではなく、ユーザーが能動的に参加できるコンテンツ設計が特徴です。
使用ツールと必要スキル
モーショングラフィックデザイナーの主要ツールとしては、Adobe After Effects、Adobe Animate、Cinema 4D、Blenderなどがあります。また、Web向けであればCSS/JavaScriptアニメーション、SVGアニメーションの知識もあると強みになります。
必要なスキルとしては、グラフィックデザインの基礎知識に加え、タイミングやイージング(加減速)など時間的要素のセンス、ストーリーボード作成能力、基本的な映像文法の理解などがあります。また、アニメーションの原則(タイミング、スペーシング、アンティシペーションなど)の理解も重要です。
年収相場とキャリアパス
モーショングラフィックデザイナーの年収相場は、未経験からでは400〜500万円程度、経験者では600〜800万円、専門性の高い人材では1,000万円を超えることもあります。需要に対して人材が少ない分野のため、高いスキルを持つ人材は評価される傾向にあります。
キャリアパスとしては、より専門的な3DCGアニメーションへの発展、映像制作全般へのスキル拡大、インタラクティブコンテンツ制作に特化したクリエイティブコーディングの習得などがあります。また、広告制作会社やデジタルエージェンシーでのクリエイティブディレクターへのステップアップも可能です。
5. デザインエンジニアの仕事
デザインとコーディングの両方のスキルを持ち、橋渡し役となるデザインエンジニアは、比較的新しく登場した職種です。デザイナーが考えた体験をそのままコードで実現し、デザインとエンジニアリングの垣根を低くする役割を担います。
デザインとエンジニアリングの融合
デザインエンジニアは、従来別々だったデザインとエンジニアリングの領域を融合させる存在です。デザイナーとして美的センスと使いやすさを理解しつつ、エンジニアとしてコードを書く能力も持ち合わせています。
例えば、Figmaなどのデザインツールで作成されたモックアップを見て、それを忠実にHTML/CSS/JavaScriptで再現するだけでなく、技術的な制約や可能性も考慮したデザイン提案ができることが特徴です。
フロントエンド実装とデザインの一貫性確保
デザインエンジニアの主要な役割の一つは、デザインカンプから実際のWebページへの変換プロセスで、意図したデザインが正確に実装されることを保証することです。
ピクセルパーフェクトな実装(デザイン通りの正確な再現)はもちろん、レスポンシブデザインの挙動、アニメーションのタイミングやイージング、様々なブラウザやデバイスでの表示確認など、デザインの品質管理も行います。
インタラクションデザインの実装
タップ、スワイプ、スクロールなどのユーザー操作に対する反応を設計・実装するインタラクションデザインも、デザインエンジニアの重要な担当領域です。単純な見た目だけでなく、「操作感」までを含めた体験設計を行います。
例えば、スムーズなページ遷移アニメーション、スクロールに連動するパララックス効果、ドラッグ&ドロップのインターフェースなど、コードを駆使した高度なインタラクションを実現します。CSS、JavaScript、WebGLなどの技術を使いこなすスキルが求められます。
デザインシステムの技術的実現
大規模なWebサービスやアプリケーションでは、「デザインシステム」と呼ばれる再利用可能なコンポーネントライブラリを構築することが一般的です。デザインエンジニアは、このデザインシステムの技術的実装と維持を担当します。
例えば、デザインツールで作成されたコンポーネントを、React、Vue.js、Angularなどのフレームワークを使って実装し、開発チーム全体で使えるようにドキュメント化します。デザイナーとエンジニアの「共通言語」として機能するデザインシステムは、開発効率と品質の向上に大きく貢献します。
年収相場とキャリアパス
デザインエンジニアの年収相場は、デザインとエンジニアリングの両方のスキルを評価されるため比較的高く、経験によって500〜900万円程度、高いスキルを持つ人材では1,000万円を超えることもあります。
キャリアパスとしては、より専門的なフロントエンドエンジニアへの発展、デザインシステム専門家としての特化、プロダクトデザイン全体を統括するリード職などが考えられます。また、スタートアップ企業では少人数でプロダクト開発を進める中核メンバーとして重宝されることも多く、CTOやCPOへのキャリアアップも可能性としてあります。
デザイン系職種のキャリア形成とスキルアップ
デザイン系職種で長く活躍し、市場価値を高めていくためのキャリア形成とスキルアップについて考えてみましょう。適切な戦略を持つことで、より充実したキャリアを築くことができます。
ポートフォリオの重要性と効果的な見せ方
デザイン系職種において、ポートフォリオ(作品集)は履歴書以上に重要な自己アピールツールです。単なる作品の羅列ではなく、各プロジェクトの背景や課題、解決策としてのデザイン、成果までを含めたストーリーで見せると説得力が増します。
効果的なポートフォリオの作り方のポイントとしては、(1)ターゲットとする職種/業界に合わせた作品選定、(2)少数精鋭の厳選された作品、(3)プロセスの可視化(ラフスケッチから完成までの過程)、(4)可能であれば数値的な成果の提示などが挙げられます。
専門性を高めるか領域を広げるか
デザイン系のキャリア形成では、「専門特化型」と「多機能型」のどちらを目指すかという選択があります。前者はUI/UXやモーショングラフィックなど特定分野で深い専門性を持つ道、後者はデザインからコーディング、マーケティングまで幅広くカバーする道です。
どちらが正解ということはなく、自分の強みや興味、市場ニーズに合わせて選ぶことが大切です。ただし、まったく専門性がないのは避け、「一つの軸」と「関連する周辺知識」を持つT字型人材を目指すのが現実的でしょう。
デザインツールの習得戦略
デザイン業界では新しいツールが次々と登場します。すべてを完璧に使いこなすのは現実的ではないため、効率的な学習戦略が必要です。まずは業界標準ツール(Figma、Adobe Creative Cloudなど)の基本をしっかり押さえ、それからニーズに応じて専門ツールを習得するのが良いでしょう。
また、ツールの操作だけでなく、デザイン原則や論理的思考、問題解決能力など「ツールに依存しないスキル」を磨くことも重要です。これらの基礎があれば、新しいツールへの適応も早くなります。
副業を通じたスキルアップと市場価値の向上
デザイン系職種は副業との相性が良く、本業とは異なる業界や領域のプロジェクトに携わることで、幅広い経験とポートフォリオの充実化が可能です。特に自社では携われないタイプのデザイン案件に挑戦することで、市場価値向上につながります。
副業経験は次の転職時に大きな強みになります。面接でも「本業以外にも積極的に自己研鑽している姿勢」「多様なビジネス課題に対応できる適応力」をアピールできるでしょう。特にデザイン職は成果物(ポートフォリオ)で評価されるため、副業での優れた実績が転職市場での評価を大きく左右することも珍しくありません。
デザイナーに求められる非デザインスキル
現代のデザイナーには、デザインスキルに加えて様々な周辺知識が求められます。特に重要なのが、ビジネス理解力(クライアントの業界や課題への理解)、データ分析力(ユーザー行動の分析・解釈)、コミュニケーション能力(関係者への説明・説得)です。
また、基本的なマーケティング知識、SEOの基礎、アクセシビリティの考え方など、専門領域を越えた知識があると、より付加価値の高い提案ができるようになります。デザイナーの役割がビジネス成果に直結するという認識が広がる中、これらの非デザインスキルの重要性はますます高まっています。
Web業界のデザイン系職種で活躍するために
Web業界のデザイン系職種は、技術の進化とともに専門性が細分化され、同時に領域を越えた連携も求められるようになっています。どの職種を選ぶにせよ、美的センスだけでなく、ユーザーの課題を解決し、ビジネス目標を達成するためのデザイン思考が重要です。
また、デザインツールの操作スキルはもちろん、関連分野の基礎知識、チームでの協働、クライアントとのコミュニケーション能力など、総合的なスキルセットが求められます。日々の業務で培った知見をポートフォリオとして蓄積し、継続的に学び続ける姿勢が、デザイン系職種として長く活躍するための鍵となるでしょう。