AD ~テレビの世界を縁の下で支える仕事~
仕事の役割 ~華やかな世界の何でも屋~
AD(アシスタントディレクター)はテレビ局や製作会社に所属して、ディレクターのアシスタント業務および現場での制作全般を担当します。ディレクターから指示を受けたら、とにかくその指示に応えるのがADのミッション。ADとして活躍すればするほど、ディレクターへのステップアップも早くなります。
具体的な仕事内容は、番組制作に関するありとあらゆること。番組収録時にはカンペ(出演者への指示を書いたメモ)を出したり、美術スタッフなどへの指示を出したりしてディレクターをサポートします。また収録時以外にも取材先へのアポイントや機材の準備、出演者やスタッフの弁当の手配、ロケハン(ロケ前の下見)、掃除などの雑用までこなします。仕事の範囲は広く、挙げきれないほどさまざまな業務があります。きつい仕事ですが、ここでの踏ん張りがプロデューサーやディレクターにキャリアアップするためのカギになっていることは確かです。
おおよその年収
平均年収は約350万円ですが、仕事量から時給換算するとかなり低めでしょう。ただしキー局勤務のADだと500万円以上を稼ぐ人もいます。
求められる能力 ~激務に耐えられるタフさと先読み能力~
テレビ業界の制作は基本的に体育会系です。下積みと言われるADのときは、給料が低い・残業代なし・休みなしがまかり通るなど、人によっては「ブラック」と呼びたくなる環境でしょう。実際すぐに辞めてしまう若者も多く、最終的には「精神的タフさ」と「体力」が何よりも大切になります。特に番組制作会社に勤務するADの場合は顕著です。
また評価されるには、詳細な指示がなくてもディレクターの意図を先読みし、自発的に動けることが大切。「こういう場面ではこう動く」と未来に起こり得る事態を瞬時に想定して、それに随時対応していくという、先を見通す力が必要でしょう。
向いている人柄 ~図太い神経を持ちつつも、気の利く人がAD向き~
先読み能力のある人は、言い換えると気が利く人とも言えます。ディレクターやプロデューサー、出演者が何を求めているのかを察することができる人、気が利き、細やかに動ける人であれば、どんな現場でも重宝されます。そのため立ち止まってじっくり考えることよりも、フットワークの軽さが求められます。
もちろん、上記の通りハードな仕事ですので、どこでも寝られるくらいの図太さも必要です。特に女性の場合は、化粧なし・おしゃれなしで仕事に打ち込むくらいの覚悟が求められるでしょう。
仕事のやりがい ~評価されればディレクター昇進も~
仕事はきついものの、スタッフと出演者が一丸となって番組づくりに携わることはやりがいがあり、毎日がダイナミックになるでしょう。特に自分が携わった番組の評判が良く、「あの番組おもしろかった」などの感想が聞こえてくると、仕事のハードさも忘れるくらいの達成感があります。ADとしての働きが評価されれば、早めにディレクターにステップアップでき、番組づくりの根幹に携わることもできます。上昇志向のある人には大きなやりがいになるでしょう。
仕事の辛いところ ~不規則な生活が続き、健康が悪化することも~
長時間労働や不規則な生活と切り離せないAD。休日に仕事が入ることや、寝ずに働くこともよくあります。長時間勤務にもかかわらず残業代が出ないことも珍しくはありません。また弁当や外食が続いてしまうので、体重増加してしまうことも。
とはいえ、近年はADを目指す人が減少しており、人手不足傾向にあります。そのためADへの過度な無茶ぶりなども少なくなりつつあります。(ライター:二之形幸子)