工業デザイナー ~工業製品を美しく・使いやすくする~
仕事内容 ~製品の美しさとユーザビリティーをデザイン~
大量生産の工業製品の使いやすさや美しさを追求するデザインを、インダストリアルデザインと呼びます。そのような工業製品(携帯電話や家電製品、文房具から自動車に至るまで)をデザインするのが工業デザイナー(インダストリアルデザイナー)です。単にカッコよさや美しさだけでなく、製品の使いやすさや耐久性、安全性などにも考慮したデザインを生み出すことが、工業デザイナーに課せられたミッションです。
デザイン時には製品の機能面や安全面、生産コストを考えながら仕事するのが基本です。そのためひとりでデザインを行うのではなく、技術者やクライアント企業と打ち合わせをしながら進めます。具体的には、まずはおおまかコンセプトとデザインを考え、それをラフ画にしてイメージを形にし、それを図面に起こして設計部と打ち合わせを行いながら製品イメージをかためていきます。生産前に試作品を作り、最終的なゴーザインが出たら、ようやく生産開始。主な就職先はメーカーのデザイン部などが多いようです。
おおよその年収
平均年収は約470万円~500万円と言われています。ただし、革新的なデザインや世界的ブランドのデザインを手掛けるような売れっ子デザイナーのなかには、年収1000万円以上を実現している人もいるようです。
求められる能力 ~ユーザー目線でデザインできるかどうか~
工業デザイナーに特別な資格はありませんが、デザインの基礎的な知識は必要です。そのため、大学や専門学校でデザイン工学を学んでいる人が多いようです。デザイン事務所などでアシスタントとして現場で学ぶ方法もありますが、基礎的な知識に差がある場合は、どうしても高い年収は見込めないようです。
求められるスキルとして、デザインの美しさはもちろん、ユーザビリティーの観点が必要です。使う人がどう使うのか、使うことでどう感じるのかなどを想像し、それをデザインとして具体的な形に落とし込む能力が問われます。ある意味で「自分は芸術家ではない」という自覚が必要でしょう。新製品を出すまでには、多くの人との協力が必要なので、協調性も大切なスキルのひとつです。机上でデザインを考えるだけではなく、ユーザーが求めているものをデザインするセンス、それを設計部やクライアントにプレゼンできる能力が求められます。
向いている人柄 ~よいモノをつくり出したいという情熱~
芸術的なセンスや発想力のある人が向いていますが、芸術家ではないので、安全面や使いやすさまで考えられる、細部までこだわれる人が向いています。そういう意味では大雑把な人よりも几帳面な人が工業デザイナー向きと言えるでしょう。また、世の中の流行に敏感で、よいモノをつくり出したい、という情熱のある人はやりがいも感じられるはずです。
仕事のやりがい ~試作品を前にアイデアを出し合う楽しさ~
新製品が完成するまでの道のりはハードですが、製品が形になったときは大きなやりがいを感じられるでしょう。大量生産される製品がほとんどなので、街中で自分がデザインしたものを見かけるチャンスも多いようです。また、技術者や開発担当者など、モノづくりへの情熱がある人たちとアイデアを出し合いながら、企画会議をする時間は仕事の楽しさも感じられるはずです。
仕事の辛いところ ~プロ意識のぶつかり合いで修羅場になることも~
工業デザイナーは設計部やクライアントと一緒になって新製品を作り上げます。それぞれに、プロの仕事人としての主張もあるので、衝突することもしばしばあります。あまり自己主張が強すぎると、修羅場になってしまうことも。また、デザイン事務所でアシスタントからスタートした場合は師匠のアシスタントのまま、世に出ることもなく終わってしまうこともあるようです。(ライター:二之形幸子)