アートディレクター ~ビジュアルデザインをかじ取りする~
仕事の役割 ~広告・雑誌などのデザインをディレクション~
アートディレクターはWebサイトや広告(雑誌広告、街頭ポスター、CMなど)、雑誌記事などのビジュアルデザインにおける全般的なディレクションを担います。制作物のデザインや撮影監修を行う責任者で「現場監督」のような位置づけと言っていいでしょう。
具体的な仕事が明確に決まっているわけではありませんが、Webサイトや広告などにおけるビジュアルデザインのコンセプト段階からかかわることがほとんどです。「このテーマなら、こういう色合いを中心にしよう」「イラストレーターやカメラマンは、こういう人にしよう」「この商品ならこんなタイプの女性モデルがいい」など、見た目に関すること全般をかじ取りしていきます。
具体的な仕事では、クライアントから仕事の依頼があり、プロデューサーやほかのクリエイターと企画の方向性を話し合いながらビジュアルデザインを考えていきます。ある程度企画が固まったらデザイナーやコピーライター、カメラマン、イラストレーターなどに指示を出していきます。制作物の完成後もデザインを細かくチェックをして修正依頼するなど、クオリティの高い制作物を目指すのがひとつのミッションです。ディレクションやマネジメント要素の強い仕事ですが、実際にはデザインナーを兼ねているアートディレクターも多いようです。
おおよその年収
平均年収は約480万円です。クリエイター職の中では比較的安定した給与ですが、その分、ポジションの数は限られており、誰もが気軽になれる職業ではないでしょう。
求められる能力 ~デザインセンスとリーダーシップ~
媒体物の見た目を左右するため、アートディレクターには優れたデザインセンスが求められます。デザインの基礎・フォント・色彩・写真・映像など知識のほか、流行の一歩先を読むようなセンスを求められるので、美術大学やアート系の専門学校出身者が多い職業です。ほとんどの人は現場のグラフィックデザイナーからスタートして、デザインスキルや制作現場の知識を身に着けてから、アートディレクターにステップアップしていきます。数年間はデザインやWebの知識などを吸収し、経験を積んだ後、アートディレクターとして監督する立場になるのです。
クライアント折衝の多い仕事なのでコミュニケーションスキルや人から好かれる人柄であることは必須でしょう。また、デザイナーやカメラマン、イラストレーターなどのクリエイターたちに細かく指示を出していくのでリーダーシップも大切です。
向いている人柄 ~美的センスがあって統率力のある人~
美的センスがあり、多くの人とひとつのモノを作っていく作業が好きな人が向いています。アートディレクターは監督のような役割も兼ねているので、コミュニケーションスキルにリーダーシップのある人が向いています。また、新しいものが好きで、世の中のトレンドに敏感であることも大切な要素です。クライアントから案件を受注するためのプレゼン力のある人だと、活躍の幅も広がるでしょう。
仕事のやりがい ~街中で自分の制作物を目にする喜び~
グラフィックデザイナーと比較すると、現場での業務負担が低いのですが、その分、制作物のビジュアルコンセプトの段階から深く関わり、さまざまなクリエイターたちとひとつのものをつくり上げていきます。仲間たちと協力しつつ、さらには自分が携わった制作物を街中で目にしたりする瞬間は感慨深いものがあるでしょう。また、タレントやモデルを使って仕事する機会も多く、その華やかな面に仕事のやりがいを感じる人も多いでしょう。
仕事の辛いところ ~年齢的な限界を感じやすい~
クリエイターはこだわりの強い人が多く、またクライアントも無理な要求をしてくるものです。その間に立ち、お互いの要望や言い分を両立させ、一般ユーザーに“刺さる”ビジュアルデザインを作り上げるのはアートディレクターの腕次第です。両方の言い分を聞くので、精神的に疲れてしまうこともあります。また、浮き沈みの激しい業界で、若手もたくさん出てくるので、ときに「自分のセンス」に自信がなくなってしまうこともあります。(ライター:二之形幸子)