貿易事務 ~商品の輸出入を裏から支える事務の専門家~
仕事の役割 ~輸出入の手配、書類作成、スケジューリングまで~
貿易事務は海外取引のある商社やメーカー、船舶会社、外資系企業や日系企業の国際部などに所属し、商品の輸出入に関する事務を担当する仕事です。
大きく分けると、輸出業務と輸入業務があり、輸出業務では輸出通関手配、通関書類作成、運送便の手配などをおこないます。一方、輸入業務では輸入通関手配、関税・消費税納付、商品の納入管理などを行います。また、企業や雇用形態によっては輸出入業務に関わる人たちへの情報伝達・スケジュール調整なども発生します。このような輸出入の一連の流れを事務面から支えるのが、貿易事務に課せられたミッションといえます。当然のことながら、貿易事務の仕事では英語を使用します。電話対応やメール作成、書類作成など、英語を使用しない日はないといってもいいでしょう。英語スキルをフルに活用したい人や、国際的な仕事にたずさわりたいという人にとっては、魅力的な職種です。
おおよその年収
英語スキルを活用しますが、あくまでもバックオフィススタッフということもあり、平均年収は約330万円~400万円ほどです。雇用形態は正社員のほか、契約社員、派遣スタッフとして働く人も多く、女性比率が高めです。
求められる能力 ~TOEICだけでは通用しない?~
輸出入取引に必要な専門知識やさまざまな書類作成に関する知識など、必要な知識は少なくありません。ただ、英語力さえあれば未経験でもサポートスタッフとして採用をおこなっている企業もあり、必ずしも最初からすべての知識を身につけている必要はないようです。スキルアップしたい場合やより専門的な知識を身につけたい場合は、通関士や貿易実務検定試験の資格を取るといいでしょう。
英語力は必須ですが、貿易事務の場合、定型文でのやりとりが多いので、TOEICで満点を取る必要はありません。むしろTOEICの点数よりも「ビジネス上でどれだけ的確・簡潔に伝えられるか」が重視されます。ちょっとした言葉のニュアンスの違いでミスが起きやすい仕事なので、貿易や金融専門用語などの商業英語に慣れつつ、誰にでも通じる明快でわかりやすい伝え方が求められるでしょう。そのほか、事務処理や書類チェックが非常に多い仕事なので、効率的かつ正確に業務を片づける能力も求められます。
向いている人柄 ~英語とデスクワークの両方に意欲がある人~
英語が必須の仕事ではありますが、それと同じくデスクワークに長けていないと、活躍するのは難しい仕事です。たくさんの書類作成や細かいチェック作業が主な仕事なので、正確にミスなく事務処理をこなすことができることが求められます。また、輸出入の手続きで遅れが発生すると、それだけ会社に損害を与える可能性もありますから、時間管理に厳しいことも大切です。
また、海外との取引に付随する事務の仕事なので、ちょっとした言葉のニュアンスの違いで、コミュニケーションに大きなズレが出てきてしまうこともあります。どんなに小さなことでも気配りのできるような人が向いています。
仕事のやりがい ~国際的な舞台で働いている実感~
英語を使う仕事をしたい人には、毎日やりがいのある仕事になるでしょう。オフィス環境も海外のニュースを気にしながら仕事をするなど、国際色豊かな環境で仕事をする実感はやりがいにもつながります。また、言葉の壁を越えて、海外の人たちとスムーズに仕事を進められたときは、この上もない喜びがあるはずです。
仕事の辛いところ ~時差や相手国の事情に振り回される~
貿易事務の仕事には、時差がつきものです。どうしても、海外の相手との仕事を早めに終わらせたい場合も、時差に合わせた行動をしなければいけません。そのため、時間待ちをして、残業になってしまうこともしばしばあります。また、日本の常識が相手国では通用しなかったり、紛争や災害などによって商品の輸出入が制限されたりすることもあります。こうした突発的なトラブルには、臨機応変に対応しなければなりません。(ライター:二之形幸子)