営業職が大企業から中小企業へ転職した際の注意点
営業パーソンの中には、大企業から中小企業へと転身する方も少なくありません。理由は「規模の小さい企業で自分の力を試したい」「ゆとりを持って仕事に取り組みたい」「大企業の平社員より中小企業で役職者を目指したい」など、さまざまです。しかし企業規模が異なれば、営業の進め方も仕事環境も大きく違ってくるもの。大企業から中小企業へ転職するのであれば、ここでご紹介する点について注意してください。
1. 個人が担う業務量とその範囲
大企業の営業職では、細かく業務を分担していることが少なくありません。例えば、コールセンターでアポ取りを専門におこない、営業職は外勤として商談をおこなう。その後の細かい契約は営業事務が担当する……といった具合です。
しかし社員数の少ない中小企業では、社員1人で担う業務範囲も広くなります。アポからクロージングまで1人で担うのは当然で、契約手続きをはじめとした事務処理まで担ったり、役職者でもプレイングマネージャーとして現場業務まで担当したりと幅広い業務が期待されます。それだけ多くの業務経験が積めるというポジティブな考え方もありますが、場合によって大きなギャップを感じるかもしれません。業務量の多さから、残業が重なるといった可能性もゼロではないでしょう。「中小企業だから大企業よりゆるいはず」といった思い込みは厳禁です。
2. 福利厚生や給与待遇
大企業は中小企業と比べ、福利厚生が充実しています。例えば退職金制度など、これまで当たり前に考えていた福利厚生が無くなることも想定されるでしょう。あるいは給与に関しても、転職によって前職より下がってしまう可能性が考えられます。ベースとなる給与が変わらなくても、賞与に大きな差があり年収が下がったという話は珍しくありません。ただし、その代わりインセンティブ制度を設けているケースも多く、営業成績さえ挙げれば大企業を上回る給与待遇を狙える企業もあります。
3. 意思決定のスピードが速い
例えば決裁を仰ぐ場合、大企業では課長や部長、さらに役員などステップが多く存在します。しかし中小企業ではその階層が少ないため、1つ1つスピーディーに進むでしょう。場合によっては、営業社員に対してある程度の権限を与えるケースもあります。しかし、中にはこのスピード感についていけず、思うように成果が挙げられないこともあるようです。
4. 会社やブランドのネームバリューの差
大企業で高い営業成績を上げた人が、中小企業へ転職したとたん、並みの成績しか上げられないというケースも少なくありません。こうした事態は、会社の名前やブランドに頼っていた人にありがちです。つまり「大手企業の製品だから売れていた」のに、「自分自身のスキルで成績を伸ばした」と勘違いしていたわけです。大企業に所属しているだけで営業スキルや経験が身につくわけではありません。転職して他社でもやっていけるのか、誰も知らないような商品・サービスを売ることができるのか……など、自分の営業職としての力を見極める必要があります。
この他にも、大企業で常識だったことが中小企業では通じないなど、転職後に困惑した経験を持つ方は数多く見られます。これから営業職としてどのようなキャリアを積みたいのか。また、どのような環境下で仕事に取り組みたいのかを、よく考えてみてください。(ライター:ナレッジ・リンクス/三河 賢文)