金型設計 ~モノのかたちを生み出す職人~
仕事の役割 ~あらゆる製品の型を手がける~
「金型」とは製品を作るための型のこと。パソコンや自動車、電子機器、各種のプラスチック製品、食品パッケージまで、私たちの身の回りにある製品のほとんどが、この金型でつくられています。金型にはプレス用やダイカスト用、ガラス用、プラスチック用と素材ごとにたくさんの種類があり、金型があることで製品を早く・安く・均一に作ることが可能になるわけです。そして、この金型を設計するのが金型設計の仕事。高品質な製品を大量生産するため、なくてはならない存在です。
金型設計者の多くは大手企業の下請けの工場で働いていますが、腕のいい職人ともなれば、現場でも「この人じゃなきゃだめだ」と言われるほど一目置かれる存在になれます。経験と才能がものを言うため、まさに職人の世界と言っていいでしょう。最近は携帯電話も家電製品も、スリム化しているので、金型もより繊細で緻密な設計が求められます。さらに3DCADの普及によって、より複雑な形状の型が作れるようになり、この技術を使った設計が進んでいます。
おおよその年収
平均年収は450万円ほど。しかしスキルと経験によっては、年収800万円以上を稼ぎ出す人もいます。
求められる能力 ~平面図を頭のなかで立体化するスキル~
未経験からでもチャレンジできますが、工業系学校の機械科、技術系専門学校、大学で電気・電子・機械の勉強をしていた人が多いようです。最近では、3DCADを使いこなすことはほぼ必須で、CAD利用技術者資格などを取得していると就職にも有利です。実際の実務的スキルのほかに、平面図を頭のなかで立体化できる能力や想像力が求められます。電子機器にかかわる金型では、ミクロ単位の精度を要求されることもあるので、寸分の狂いも許されない手先の器用さが求められるでしょう。
また、実はコミュニケーション能力も大切です。設計者にとっては、金型設計は自分の設計を守る生命線とも言えます。設計したら終わりではなく、製品を作り上げていく工程で、技術者や職人さんに設計への思いを伝えていくことも大切です。素材などの関係で、元の設計を金型の段階で調整・変更しなければならないこともあり、その理由などを説明し、仕事を進めることも金型設計者の実力のうちです。
向いている人柄 ~細かい作業やモノづくりが好きな人~
手先が器用で、集中力があり、細かい作業を黙々やることが苦にならない人が向いているでしょう。また、設計図や展開図を見るのが得意な人、新しい発想ができる人は、競争力の激しい家電製品などの金型設計者としても向いています。機械いじりやモノづくりが好きな人にはやりがいの大きい仕事になりそうです。設計には納期などは必ず守らなければいけないので、時間厳守の精神も求められるでしょう。
仕事のやりがい ~自分の設計したカタチが市場に出る喜び~
自分が設計した金型で、さまざまな製品が大量生産され、それが市場に出回る……。金型設計の仕事は、こうしたやりがいを実感できます。また、モノづくりの好きな人にとっては、自分の技術と発想でいろいろな工夫ができるのが仕事の醍醐味です。高い品質の製品を低コストでつくることを考えながら作業することは、ビジネスに貢献できていることを実感できるでしょう。
仕事の辛いところ ~下請けならではの無理な要求も多い?~
金型設計者と現場との「意識のズレ」が生じやすいところがこの仕事の辛いところです。設計の意図をなかなか現場に理解してもらえないこともよくあるようです。また、納期のある仕事なので、タイトなスケジュールでもどうにか間に合わせなければいけません。また、いわゆる下請け企業で働くことが多いので、ときとして発注者である大企業からの無茶な要望にも応じなければいけません。(ライター:二之形幸子)