調理師 ~“美味しい!”を生むスペシャリスト~
仕事の役割 ~作る料理によって呼び名もさまざま~
調理師は、読んで字のごとく、料理を作るのがおもな仕事です。活躍の場は広く、ホテルやレストラン、カフェ、飲食店、結婚式場、惣菜店、学校の給食室、企業や病院の調理場など、“食”が必要な場所ならどこでも活躍のチャンスがあります。また、どんな料理を作るか、どこで作るかによって呼び名もさまざま。例えば、日本料理を作る人は「板前」、西洋料理のコック長は「シェフ」、スイーツを作る職人は「パティシエ」などと呼ばれています。
勤務場所によっては個人経営から企業経営まであり、勤務時間や給与、待遇面も職場によって大きく異なります。次から次へとグルメの流行がつくりだされる現代では、調理師は「食文化」を支える料理人として、あらゆるところで必要とされています。将来は自分の店を出すことを夢にしている調理師も数多くいます。
おおよその年収
個人経営の飲食店で働く人が多く、平均年収は約330万円ほどです。しかし、一流ホテルの料理長や有名パティシエならば、レシピ本やテレビ出演などの副収入によって大きく年収を上げることもできると言われています。
求められる能力 ~調理師資格と体力~
調理師免許がなくても料理の仕事につくことはできますが、「調理師」と名乗ることができるのは、調理師国家試験に合格した人のみです。その他、調理師関連の資格としては、代表的なものに「食品衛生責任者」などがあります。飲食店を開業する際には、食品衛生責任者の資格が必要ですが、調理師の資格があれば、試験なしで資格を得ることができます。
料理の技術以外に求められるものとして、第一に体力が挙げられます。基本的に立ち仕事ですし、働く場所によっては朝早くから夜まで働く必要もあります。また、ライバル店と差をつけるためにも、日ごろからトレンドを研究したり、最新のグルメ事情を研究したりする必要があります。女性誌を読む、農家のもとで食材を研究するなどのマーケティング的な努力も必要になるでしょう。しかし、何よりも必要なのは「料理が好き」「自分の料理で誰かを笑顔にしたい」という気持ちです。この気持ちさえあれば、修行の時期を乗り越えることができるはずです。
向いている人柄 ~縦社会・競争社会のなかでも夢を持ち続けられる人~
個人経営のレストランでもない限り、調理師の世界は縦社会です。特にホテルや料亭など、格式の高い飲食店ほどその傾向が強くなります。先輩が言ったことに不満があっても従わなければいけませんし、新人の頃は調理以外の雑用仕事も多くあります。それを修行の時期と割り切り、前向きに仕事をこなしていく忍耐強さが求められます。
また、「いつかは個人で繁盛店をつくりたい」といった夢もあるでしょうが、飲食店は非常にライバルが多い競争社会です。一説によれば開店から2年以内に半分の店が廃業してしまうとも言われており、独立開業しても厳しいビジネスが続くことが考えられます。そうした中でも、夢を持ち続ける忍耐と意欲が求められます。
仕事のやりがい ~作った料理が多くの人を笑顔にできる~
調理師のやりがいは自分が作った料理で、人を笑顔にさせることができることです。心を込めて作った料理に目の前で「美味しかった」と感謝され、喜んでもらえることこそ、調理師にとって最大の喜びになります。また、勉強をするうちに、さまざまな料理が作れるようになるのも、やりがいを感じる瞬間です。技術が身につき、お客様に喜んでもらえるたび、「この仕事を選んで良かった」と思えるでしょう。
仕事の辛いところ ~長時間労働と肉体的疲労~
調理師が一番大変なのは、勤務時間の長さです。飲食店では早出・残業は当たり前、手当てもつかないことがほとんどです。特に新人の頃は、朝早くから夜遅くまで仕事があり、プライベートの時間を作りにくいとも言われます。また、立ちっぱなしで作業をするだけでなく、大鍋を振るい、細かい作業を何度も繰り返すことが多いので、歳をとるごとに、肉体的な辛さを感じる調理師も多いようです。(ライター:二之形幸子)