航空機パイロット ~乗客の命を預かる空の最高責任者~
仕事の役割 ~航空機を操縦し、人・貨物を運ぶ~
ANAやJALといった航空会社で働くエアラインパイロットは、航空機を操縦し、目的地まで安全に人や貨物を運ぶのが役割です。快適で安全なフライトのために、コックピットに座って操縦するのはもちろん、フライト前にもさまざまな業務をこなさなければいけません。例えば、出発前の副操縦士やキャビンアテンダントとのミーティング、天候や空港の状態の確認、航空機の整備状況の確認などなど。そのほか、出発前に飛行高度や速度、燃料の量などを決めるのも機長の役目。航空機の整備状況や飛行高度、燃料なども念入りにチェックします。安全なフライトのために万全を期すことが求められます。
正規のパイロットになるには、長い道のりがあります。パイロット養成コースのある大学を卒業したあとでも、新卒で航空会社に入社してから平均15年ほどかかり、40歳前後で機長になるのが一般的と言われています。日本国内のパイロットの数は機長、副操縦士、訓練生を合わせても1万人に満たず、非常に狭き門と言えます。
おおよその年収
大勢の乗客、アテンダントの命を預かる責任重大な仕事であり、高度な専門知識と経験が求められます。そのため年収は非常に高く、副操縦士でも平均年収は1,500万円、機長になると平均年収2,000万円と言われています。
求められる能力 ~専門知識と経験、生まれつきの素質が重要~
航空機を操縦するには、当然ながら非常に高度な専門知識が問われます。JALやANA、LCC各社など航空会社の航空機を操縦するためには、定期運送用操縦士という資格が必要です。この定期運送用操縦士の資格を取得するには、「新卒で航空会社に入社し、企業内で養成コースを受講する」もしくは「パイロット養成課程のある学校で資格を取得する」という2つのルートがあります。また、資格を取得後は法律で定められた既定の飛行時間をクリアし経験を積まなければ、機長になることはできません。
資格に加えて、パイロットは計算に強いことも大切です。旅客機の現況を把握するため、機体の速度や距離、周囲の気温や気圧、ほかにもさまざまな数字を見ながら、その結果に基づいてフライトをします。とっさの計算力、数字のセンスを問われる職業でもあります。
そしてさらに、パイロットは健康体であることも求められます。健康基準については航空法で定められており、「航空身体証明書」を取得しないと、ライセンスを持っていても、操縦できません。また、眼鏡を使用することも可能ですが、近距離視力や両眼視機能、視野、眼球運動、色覚などの異常があると、パイロットにはなれません。知識、経験だけでなく生まれつきの資質にも大きく左右されるのです。
向いている人柄 ~とっさの判断力がある人~
ジャンボ機の大勢の乗客を乗せるので、そのプレッシャーも相当なもの。緊張し過ぎて冷静さが欠けるような人にはつとまりません。さらに小さな故障やトラブルを見過ごさず、フライトを中断する勇気や決断力も必要です。ときには飛行中に急な判断を迫られるケースもあります。自分の判断・直感を信じ、ミッションを遂行できる人が向いているでしょう。
仕事のやりがい ~あこがれの職業No.1、航空機を操縦する喜び~
パイロットは小さな子どものあこがれの仕事です。上空の旅を1便1便、無事に達成するたび、仕事の充実感を得られるでしょう。また、離陸した瞬間からきれいな風景が広がり、雲ひとつない青空もきれいです。そんな美しさがパイロットの仕事の大きなやりがいにつながっていることは確かでしょう。また、乗客はもちろん、キャビンアテンダントや副操縦士など、さまざまな人に頼られることは責任感もありますが、それだけに大きな達成感もあります。
仕事の辛いところ ~責任重大で労働環境も甘くない~
パイロットになるには、まず副操縦士として約10年間、その後、機長昇格試験(実技審査)に合格しなければいけません。訓練の間にも実技の審査が行われるなど、その道のりはとても険しいものです。また大勢の乗客の命を預かる仕事なので、重大な事故があれば、マスコミに叩かれ、フライトも停止、給料が激減、家族まで後ろ指差されることになりかねません。毎日がミスのできない仕事の連続なので、心身への負担も大きいでしょう。また、LCCなど確約航空会社のパイロットなどは、フライト便数が多い割に給料も比較的低く、決して楽な労働環境ではないといわれています。(ライター:二之形幸子)