翻訳 ~文書や映像作品を通じて異国間を橋渡しする~
仕事の役割 ~外国語の文書・映像を正しく日本語へ訳す~
翻訳家の仕事をひと言で説明すれば、外国語の文章や映像を日本語に訳す、あるいは日本の文章や映像を外国語に訳すことです。仕事の分野としては、大きく分けて3つのジャンルがあります。
- 文芸翻訳……海外の書籍や雑誌、漫画など文芸作品の翻訳
- 実務翻訳……ビジネス文書や学術書、マニュアル、契約書などの翻訳
- 映像翻訳……海外の映画やドラマ、ドキュメンタリーなどの字幕制作
いずれの翻訳でも、クライアント(出版社やその他企業)からの依頼があり、それを受注して和訳・外国語訳をおこないます。同じ翻訳という仕事でも、文学作品なら日本語表現力、ビジネス文書なら専門知識など、扱う分野によって必要な知識やスキル、求められるものは少しずつ異なります。また、映像作品の字幕翻訳の場合、映像の再生時間に合わせて適切な文字数で字幕を作成することも求められます。
近年はインターネットの普及に伴って、海外のホームページから最新情報やニュースを得たいというニーズも多く、翻訳スキルを活かせる機会は増加傾向にあります。多くの翻訳家は、大学の外国語学部や翻訳者養成の専門学校などで学んだ後、翻訳会社に就職するか、翻訳エージェントに登録してフリーランスとして仕事をします。また、翻訳コンテストで受賞したり、著名な翻訳家に弟子入りしたりするなどの方法で翻訳家の道を目指す人もいます。フリーランスの場合、こなした仕事量の分だけ収入につながり、仕事の自由度も高いのですが、年収はやや低めのことが多いようです。
おおよその年収
平均年収は約300万円です。翻訳のクオリティーが高く、かつ効率よくたくさんの仕事をこなせれば、さらなる年収アップも可能です。
求められる能力 ~原文の意味やニュアンスを正しく伝えるセンス~
翻訳家に求められるスキルは、何と言っても語学力です。文芸翻訳と実務翻訳では仕事で使う単語も異なりますが、どちらにしても原文の意味を正しく端的に伝えることです。和訳であれば外国語の文章を読み解くための、外国語訳なら外国語を書くための、確かな語学力が必要でしょう。
また、単純に同じ意味の日本語・外国語へ変換するのではなく、原文と同じニュアンスを伝えることが、翻訳の仕事では大切です。例えば「驚愕した」と「びっくり仰天した」は、同じ「おどろいた」という意味ですが、受け取る印象は異なります。こうした微妙な違いをくみ取り、和訳・外国語訳する必要があるので、双方の国の文化や習俗、ことわざ、スラングなどにも精通していなければならないでしょう。必須となる資格はありませんが、日本翻訳協会が行う「翻訳技能認定試験(翻訳検定)」などもあります。
向いている人柄 ~好奇心旺盛で「調べる」ことが好きな人~
翻訳をするには、何時間もデスクで集中することが必要です。そのようなことが苦痛にならない人が向いているでしょう。集中して、正確かつ丁寧に翻訳し、確認作業を行っていける人でなければ、翻訳の仕事を続けるのは難しいのです。翻訳作業中は、疑問点やわからない単語が出るたびに辞書を引いたり、関係資料をあさったり、インターネットで情報を探したりと、さまざまなことを調べる必要があります。新しい単語も次々と生まれてきますので、調べることが好きな人に向いています。
仕事のやりがい ~テキストを通じて国と国との懸け橋になる~
翻訳業は地味な仕事ですが、知的作業やクリエイティブ作業が好きな人には、仕事そのものが楽しいはずです。自分の知識と技術、言葉のセンスを駆使して和訳・外国語訳をおこない、それが作品として評価されたときや、書店などで自分の名前がクレジットされている書物を見かけたときには、この上もないやりがいを感じられるはずです。テキストを通じて異なる国の人々に情報と感動を届けるうれしさも、翻訳という仕事でしか味わえないでしょう。
仕事の辛いところ ~不安定な仕事と締め切り前の徹夜作業~
翻訳家はフリーランスで仕事をする機会が多く、定期的に仕事があるうちはよいのですが、
収入が不安定になりがちな仕事です。また、クライアントによっては何度も修正を求められることもあり、なかなかOKが出ないときなどは仕事の厳しさを感じてしまうでしょう。また、締め切りのある仕事なので、常に締め切りに追われている気分になってしまうこともあります。(ライター:二之形幸子)