鳶職人 ~高所作業のプロフェッショナル~
仕事の役割 ~足場作りから骨組みの組み立てまで~
高所での工事現場に欠かせない、建設の立役者が鳶職人です。ビルやマンション、タワー、大型商業施設、橋梁、ダムといった大規模な土木建築現場での作業が多く、一般家屋を手がける大工とは区別されています。鳶職人は、携わっている作業によって「足場鳶」「鉄骨鳶」「重量鳶」などとタイプ分けすることもできます。
●足場鳶……建設現場で足場(高所作業のための歩行場)を組む職人。建築図面から建物をイメージして、他の職人が仕事をやりやすくするための足場をつくります。
●鉄骨鳶……鉄骨造建物の骨組を組む職。鉄骨をクレーンでつり上げ、高所で組み立てます。
●重量鳶……建築物の内部に機械などの重量物を据え付けるのが仕事です。足場鳶と鉄骨鳶よりも専門性が高い鳶職人。
一般的には足場鳶と鉄骨鳶が一般的によく知られており、双方をかねる人も少なくありません。また、ベテランになれば職長として現場リーダーを任されることもあります。その場合は進捗管理や安全管理、後輩の指導・育成なども手がけます。高所かつ狭い足場を行き来しながらの作業ですので、ときには重大事故に遭う危険性も伴う仕事です。
おおよその年収
平均年収は約400万円となっています。建設現場の作業員の中でも危険性が高いため、バブル期には比較的高額な収入が得られました。近年は建設不況が続いており、年収も下落傾向にあります。ボーナスを支給する企業も減少しており、多くの場合、給料は日給月給制となっています。経験や技術により日給に大きな差が出るのが特徴です。
●見習い職人:日給7,000円~10,000円程度 年収200万円~300万円
●中堅の職人:日給10,000円~14,000円程度 年収300万円から500万円
●職長クラス:日給12,000円~18,000円程度 年収500万円から600万円
求められる能力 ~冷静さと忍耐、体力、経験。建設物の完成をイメージするスキル~
18歳以上であれば誰でも就業することができ、建設会社に入社することからキャリアがスタートします。鳶職人に最も求められるのは、冷静さと忍耐、体力です。高所で作業する危険性の高い仕事なので、高い場所でも恐怖心や不安を感じることなく、機敏に作業できなければなりません。慣れていくにつれて恐怖心も減っていくので、とにかく経験をこなすことが大切です。
また、足場鳶も鉄骨鳶も、建設物の完成図をイメージしながら、効率のよく作業を行わなければいけません。その場その場の作業イメージに合わせて、適切な判断をしていく必要もあります。見習いや一人前の職人に成り立てのころは先輩職人の指示によって動くだけですが、徐々に判断力や創造力が求められてきます。
必須資格ではありませんが、「とび技能士免許」や「足場の組み立て等作業主任者」「玉掛作業者」といった資格を取得しておくと、キャリアアップや独立を目指す場合にもより信用が得られるでしょう。
向いている人柄 ~高所でも恐怖を感じることなく黙々と作業ができる人~
当然のことながら、高所恐怖症の人には向いていません。場数を踏めば慣れるとは言え、高所恐怖症だと仕事に支障がでてきてしまうでしょう。また見習い時には、職人気質の先輩に仕事の基本を教えてもらいます。重大事故を起こさせないようにするため、時には厳しい指導を受けることもあるでしょう。そんな人との関わりも苦にならない人は、先輩にもかわいがられ、どんどんステップアップできます。
仕事のやりがい ~肉体をフル活用、仕事を終えた後の充実感~
鳶職人はやればやるだけ収入があがります。また、誰にでもできる仕事ではないので、一生ものの技術が身につく仕事と言えます。18歳から資格がなくても挑戦しやすく、若いうちからお金を稼ぎたい人には広く門戸が開かれた職だと言えます。また、完成した建造物を見たときこそが、鳶職人の達成感や満足感を感じることができるでしょう。鳶職人の仕事はもともと体を動かすことの好きな人が志願する職業でもあるため、ある意味トレーニングであると考え、肉体的にも磨かれるという良い面があります。
仕事の辛いところ ~年金や健康保険がすべて自腹なことも~
鳶職人の業界では会社に属してはいても国民年金や国民健康保険を自腹で払うところが多いようです。確定申告はもちろん、作業着も自前ということもあります。また、常に危険と隣り合わせの仕事なので、高所から落下してケガをしてしまうことも普通の職業よりもリスクが高くなります。(ライター:二之形幸子)