臨床心理士 ~複雑に絡まった「心の問題」を解き明かす~
仕事の役割 ~カウンセリングを通じて心の問題の相談に乗る~
「心の問題」が原因で、心身の不調や生活上の問題を抱える人々が増えています。臨床心理士は、こうした人をサポートするのがおもな仕事です。心理カウンセラーやセラピストと呼ばれることもあり、うつ病やストレスを抱える人が多い昨今で特に注目されている職業のひとつです。
基本的に一対一のカウンセリングで心の問題の解決をはかっていくため、ひとりの患者とじっくり向き合い、信頼関係を築き上げることが大切です。専門的な心理療法やテストなどをおこないながら、どこに問題があるのか、どの解決には何が必要なのかを見極めていきます。そういう意味では、相手を枠にはめ込まない寛容さや、さまざまな人生経験が必要でしょう。勤務先としては児童相談所、少年院などの司法施設、障害児福祉施設といった福祉分野、一般企業などです。そのほか、学校などで「スクールカウンセラー」として働くケースもあります。いずれにしても、うつ病や子どもたちの不登校など、精神疾患に伴う問題が年々増加しているので、今後、臨床心理士の需要も増えてくるでしょう。
おおよその年収
平均年収は約400万円です。
求められる能力 ~資格の取得とプロとしてのレベルアップ~
臨床心理士になるには、大学を卒業したのち、日本臨床心理士資格認定協会が指定する大学院に進学して、さらに資格審査に合格しなければいけません。近年注目を集める臨床心理士は、若い人たちにも非常に人気が高い職業です。しかし資格取得さえすれば、仕事に就けるというわけではありません。活躍する場が限られているため、就職の倍率も高く、実際に働くのは狭き門です。臨床心理士として働く自分の姿をイメージし、諦めない姿勢が大切でしょう。
また、資格取得後も5年ごとに更新審査があり、常にプロとしてのレベルアップが求められています。勤務先も一般企業や学校、福祉施設などさまざまなので、自分はどのような人をサポートしたいか、または合っているのかを見極めておく必要もあります。
向いている人柄 ~感情移入せずに聞き上手でいられる人~
臨床心理士に向いているのは、感情的にならず、常に冷静でいられる人です。相談内容に感情移入をしてしまい、クライアントと一緒に怒ったり悲しんだりする人は、確かに人間味はありますがカウンセラーとしては不向きなのです。実際、クライアントの問題に深入りするのはカウンセリングの手法としても危険とされており、あくまでも冷静に対応していかなければいけません。また、言うまでもなく、人に頼られやすく、何でも相談できる雰囲気を持っている人は、臨床心理士として信頼されるはずです。
仕事のやりがい ~心の問題をときほぐし、解決へと向かわせる~
複雑で目に見えない人の心を問題解決まで導く過程や、複雑に絡んだ糸を解いていくまでの段階で、クライアントが徐々に快方に向かっていくことは、この仕事ならではのやりがいです。毎日が勉強の日々ですので、自分自身がどんどん成長し、スキルアップしているのを実感できる仕事です。「困っている人を助けたい」という思いが達成できたときは、仕事という概念を越えて、生きがいにもつながるはずです。
仕事の辛いところ ~クライアントに深入りし過ぎてしまう危険性~
クライアントは、基本的に心の問題を抱えているので、話す内容も重い雰囲気になります。あまり感情移入し過ぎると、自分自身も精神的に落ち込んだり、心理的な負荷を受けてしまったりします。臨床心理士として、一歩引いた立場から耳を傾ける意志の強さが必要です。また、クライアントによってはイライラが抑えられなかったり、急に怒り出すこともあったりしますので、細心の注意を払わなければいけないというストレスは常にあるでしょう。(ライター:二之形幸子)