「検討します」を「決断」に変える 営業担当者のためのクロージング技術
お客様から「検討します」と言われた後、なかなか決断に至らないケースはありませんか?「提案内容には満足いただいているのに」「検討しますと言われた後、どう進めればいいのか」――。そんな悩みを抱えている人もいるでしょう。
実は、お客様の「検討します」には、まだ解消できていない不安や懸念が隠れています。今回は、「検討します」を「決断」に変えるための具体的な技術を解説します。
「検討します」の真意
お客様が「検討します」と言う背景には、3つの心理が隠れています。
1.失敗への不安がある
たとえ提案内容に魅力を感じていても、決断には責任が伴います。「この判断は正しいのか」「失敗したらどうしよう」という不安が、決断を躊躇させる大きな要因となっています。特に、大きな投資や新しい取り組みの場合、この不安は一層強くなります。
2.社内説明が面倒
決断には、社内での説明や合意形成が必要です。「上司や関係者にどう説明すればよいか」「反対意見にどう対応するか」という負担が、決断を先送りさせる原因となっています。
3.判断基準が不明確
「今決める必要があるのか」「この条件が最適なのか」という判断に迷いがあります。比較検討の材料や判断基準が明確でないため、決断に踏み切れない状態が続いています。
こんな「対応」では失敗する
「検討します」と言われた後の対応で、よく見られる失敗パターンを理解しましょう。
1.待ちの姿勢
「検討します」という言葉を前向きな反応と捉え、その後のフォローが消極的になるケースです。「お客様から連絡をいただけるはず」と期待して待っているうちに、検討自体が停滞してしまいます。
2.単純な確認の繰り返し
「検討状況はいかがでしょうか」という表面的な確認を繰り返すケースです。検討を妨げている本当の理由を探ろうとせず、形式的なフォローに終始してしまい、状況を改善できません。
3.プレッシャーの掛け過ぎ
「そろそろ決めていただけませんか」と決断を急かすケースです。お客様の不安や懸念に寄り添うことなく、時間的なプレッシャーだけを与えてしまい、かえって決断を遠ざけてしまいます。
改善に向けたステップ
「検討します」を「決断」に変えるには、4つのステップで取り組む必要があります。
1.検討状況の深掘り
まず重要なのは「検討します」の真意を理解することです。例えば、このような質問を通じて、検討の実態と決断に向けた課題を明確にします。
- 「現時点で、どの部分に最も関心をお持ちでしょうか?」
- 「ご検討にあたり、特に重視されている点を教えていただけますか?」
- 「社内での説明に際し、どのような点が課題になりそうでしょうか?」
2.不安要素の解消
特定された不安や懸念に対して、具体的な解決策を提示します。
- 決断への不安→類似事例での成功プロセスを詳しく説明
- 社内説明の負担→説得力のある資料作成や説明のサポート
- 判断基準の不確かさ→比較検討の観点や評価基準の提案
3.小さな合意の積み重ね
一足飛びの決断ではなく、段階的な合意を目指します。これらを一つずつ確認し、最終決断へのハードルを下げていきます。
- 提案内容の価値について
- 導入プロセスの妥当性について
- 投資対効果の考え方について
4.決断のタイミング作り
自然な形で決断のタイミングを作ります。
- 具体的なスケジュールの提示
- マイルストーンの設定
- 判断期限の明確化(価格や条件の有効期限など)
顧客の「決断」を引き出すために
「検討します」は、必ずしも否定的な反応ではありません。むしろ、提案内容に関心を持ってもらっている証しです。大切なのは、顧客の立場に立って、決断に向けた障壁を一つずつ取り除いていくことです。
今回解説した質問技法や合意形成のステップは、すぐに実践できるものばかりです。例えば、「検討します」と言われたら、「どのような点を重視して検討されますか?」と一歩踏み込んだ質問をしてみましょう。
この一言で、お客様の検討状況がより具体的に見えてきます。決断を迫るのではなく、決断のサポートに徹することで、必ず状況は動き始めます。まずは目の前の「検討します」案件で、新しいアプローチを試してみましょう。