営業組織のタスクマネジメント 「緊急ではないが重要」活動を確実に実行するためには
営業活動において、日々発生する緊急の対応に追われ、本来重要なタスクが後回しになってしまう――。このような経験を持つ方は少なくないでしょう。
緊急性が低いタスクは優先順位が下がりがちですが、放置しておくと組織の将来を左右します。今回は「重要だが緊急でない」タスクを確実に実行するための具体的なマネジメント方法について解説します。
タスクの本質を見極める
営業活動における様々なタスクを適切に分類し、その本質的な価値を理解することが、効果的な管理の第一歩となります。
1.タスクの分類と特徴
すべてのタスクは「重要度」と「緊急度」の2軸で整理することができます。具体的には以下のような分類となります。
- 「重要かつ緊急」のタスク:今日中の見積提出、クレーム対応、締切間近の商談対応など
- 「重要だが緊急でない」タスク:戦略的な新規開拓、重要顧客との関係構築、市場動向の分析など。「緊急ではないが重要」。
- 「緊急だが重要でない」タスク:急な資料要望、突発的な問い合わせ、予定外の会議参加など
- 「緊急でも重要でもない」タスク:定型的な報告業務、形式的な会議への出席など
2.「緊急ではないが重要」タスクの特徴
「緊急ではないが重要」タスクが後回しにされる背景には、日々のノルマや数字の達成プレッシャー、効果が表れるまでに時間がかかること、具体的な成果指標を設定しにくいことなど、いくつかの要因があります。
しかし、これを継続的に後回しにすることは、新規市場の開拓機会の損失、既存顧客との関係性の希薄化、競合他社への後れなど、組織に大きな影響を及ぼすことになります。
重要タスクの具体例と実践法
「緊急ではないが重要」タスクを確実に実行するため、具体的な活動とその実践法を見ていきます。
1.戦略的な営業活動
新規市場の開拓は、典型的な「緊急ではないが重要」タスクです。具体的な実践方法は、以下のようなものが考えられます。
- 週に半日を「新規開拓タイム」として確保する。
- 既存顧客からの紹介可能性を定期的に検討する。
- 業界ごとの重点テーマを設定し、計画的にアプローチする。
2.顧客関係の深化
既存顧客との関係強化も、即効性はないものの重要な活動です。
- 経営課題や中期計画に関する定期的な情報収集を行う。
- 商談以外の接点づくり(情報提供、勉強会など)をする。
- 顧客の業界動向や技術トレンドの研究をする。
3.組織力の向上
チーム全体の能力向上に関する活動も重要です。
- 成功事例・失敗事例の分析と共有を行う会議体を定期開催する。
- 提案力向上のための業界研究会を行う。
- 若手育成のための指導時間を確保する。
実行を確実にする仕組み
様々なタスクに効果的に対応するための具体的な方法を考えていきます。
1.「緊急でも重要でもない」タスクの廃止
まず、定型的な報告業務や形式的な会議など、「緊急でも重要でもない」タスクは、思い切った見直しが必要です。本当に必要なものだけを残し、それ以外は思い切って廃止することで、重要タスクのための時間を創出します。
- 報告業務を自動化したり簡素化したりする。
- 会議の必要性、頻度、参加者を見直し、必要に応じて統合・廃止する。
- 作成書類の種類や量を削減する。
2.「緊急だが重要でない」タスクの省力化
次に、突発的な問い合わせや急な資料要望など、「緊急だが重要でない」タスクについては、対応の効率化、省力化を図り、対応時間を最小限に抑えます。
- よくある問い合わせに対する回答テンプレートを用意する。
- 資料作成の基本フォーマットを整備する。
- 対応可能なメンバーの輪番制を導入する。
3.「緊急ではないが重要」時間の確保
上記の取り組みによって生み出された時間を、「緊急ではないが重要」タスクの実行に充てます。
- 週の特定の時間帯を「戦略タイム」として設定する。
- チーム内で「この時間は新規開拓に集中」「この日は顧客分析の日」といった明確な時間枠を設定する。
- 「集中時間帯」は緊急案件以外の割り込みを制限する。
4.組織内の役割分担と評価
「緊急ではないが重要」タスクを着実に進めるために、組織内での役割分担や協力体制を構築します。
- 「市場分析」や「新規開拓活動」の分担を決める。
- 「緊急対応」を当番制とする。
- 個々人任せではなく、経験者と若手のペア制でタスクに取り組む。
また、以下のような「緊急ではないが重要」活動を適切に評価することで、新しい仕組みを定着させることも重要です。
- 「新規開拓」のための活動量
- 「顧客との関係」の構築度
- 「ナレッジ共有」への貢献
- 「業務改善」への取り組み
持続的な成長に向けて
「緊急ではないが重要」タスクを確実に実行することは、営業組織の持続的な成長に不可欠です。確かに、短期的な数字の達成も重要です。しかし、将来の成長につながる活動を疎かにしていては、組織の競争力は確実に低下していきます。
重要なのは、これらの活動を「やれたらいいな」というレベルではなく、「必ず実行すべき重要タスク」として組織に定着させることです。小さな一歩から始めて、着実に実行を積み重ねていくことで、より強靭な営業組織へと進化させていくことができるでしょう。