営業マネージャーと部下の「1on1」が失敗する3つの要因
「1on1をやっているけど、単なる業務報告で終わってしまう」「部下の本音を引き出せない」――。形だけの1on1ミーティングに悩む営業マネージャーは少なくありません。
本来、1on1は部下の成長を促し、パフォーマンスを向上させるための重要な機会のはずです。なぜ形骸化してしまうのか。今回は、営業マネージャーが陥りやすい失敗パターンを分析し、効果的な1on1の実践方法を解説します。
1on1の目的
まずは、なぜ1on1が必要なのか、その本質的な目的から見ていきましょう。
1.部下の成長支援
個別の対話を通じて、各メンバーの現状の課題や成長機会を発見し、その克服を支援します。画一的な指導ではなく、部下一人ひとりの状況に応じた成長支援が可能になります。
2.パフォーマンス向上
その部下の目標達成を妨げている要因を特定し、解決策を共に考えます。時には組織的な課題が隠れていることもあり、発見と解決は組織全体の生産性向上にもつながります。
3.信頼関係の構築
定期的な1on1を通じて本音で話せる関係性を醸成し、マネージャーと部下の間に信頼関係を築きます。この信頼関係が、より深い課題の共有や効果的な問題解決につながっていきます。
1on1の必要要素
効果的な1on1を実現するために必要な要素を見ていきましょう。
1.継続的な対話
一回限りではなく、定期的な実施が重要です。継続的な対話を通じて、より深い相互理解と信頼関係を築くことができます。
2.成長機会の特定
各メンバーの強みを活かし、課題を克服するための具体的な機会を特定します。成長のステップを明確にすることで、具体的な行動計画を立てることができます。
3.障害の除去
目標達成を阻害している要因を特定し、その解決策を検討します。時には組織的な課題の解決が必要な場合もあります。
4.実行支援
議論だけで終わらせず、具体的な行動計画を立て、実行をサポートします。次回の1on1までの間も、適切なフォローアップを行います。
この1on1では失敗する
代表的な失敗パターンと改善方法を見ていきましょう。
1.業務報告会で終わり、成長機会の特定ができていない
単なる業務状況の報告で終わってしまい、部下の成長機会を見出せていません。より深い対話を通じて、個々の課題や成長機会を特定する必要があります。
2.数字の追及ばかりで、阻害要因の本質が見えていない
表面的な数値目標の達成状況のみを追及し、パフォーマンスを妨げている本質的な要因を見逃してしまっています。数字の背景にある要因を丁寧に探る必要があります。
3.マネージャーが話しすぎて、信頼関係が築けない
マネージャーが一方的に話してしまい、部下の声を十分に聴けていません。まずは部下の話に耳を傾け、その思いや考えを理解することが重要です。
改善に向けたステップ
では、具体的にどのように1on1を改善していけばよいのでしょうか。
1.今回の1on1の目的の設定
各回の1on1では、明確な目的を持って臨むことが重要です。例えば「商談における提案力の向上について話し合う」「新規開拓の課題を整理する」など、具体的なテーマを設定します。事前に部下にも伝えることで、より充実した対話が可能になります。
2.信頼関係構築のための場作り
オープンな対話には、適切な環境設定が欠かせません。会議室での実施が基本ですが、時にはカフェなどの外部環境を選ぶことで、より率直な対話が生まれることもあります。時間は最低30分は確保し、途中で中断されないよう、他の予定とは余裕を持って設定します。
3.個別課題の特定と克服計画の立案
成長支援では、まず現状の棚卸しから始めます。「何ができるようになったか」「どこに困難を感じているか」を具体的に洗い出します。例えば「大規模案件のクロージングに不安がある」という課題が出てきた場合、その要因を深掘りします。「なぜ不安を感じるのか」「どんなサポートがあれば自信が持てるか」といった質問を通じて、具体的な克服計画を立てていきます。
4.具体的なアクションと必要な支援の確認
議論した内容は、必ず実行計画に落とし込みます。例えば「次の大型案件ではベテラン社員とペアを組んで提案を行う」「商談の事前準備を上司と共有する」など、具体的なアクションとして定義します。また、実行のためにマネージャーとして提供できる支援(同行営業、資料のレビュー、ロールプレイングなど)も明確にします。
5.次回までのフォローアップ計画
1on1の効果を最大化するには、次回までの適切なフォローが重要です。「週初めにメールで進捗を共有する」「重要な商談前後でミニ面談を実施する」など、具体的なチェックポイントを設定します。
また、計画の修正が必要な場合に備えて、臨時の相談機会についても確認しておきます。実行計画の途中で行き詰まりを感じた際は、早めに相談するよう促しておくことで、問題の早期発見・対応が可能になります。
チームの生産性向上にも
1on1は、マネージャーと部下が共に成長するための貴重な機会です。この機会を最大限に活かし、強い営業組織の構築につなげていきましょう。
効果的な1on1は、単に部下の業務状況を把握するだけでなく、その成長を支援し、チーム全体のパフォーマンスを高める重要な機会となります。
完璧な1on1を目指すのではなく、まずは「部下の話を聴く時間」として始めてみましょう。そこから対話の質を高め、具体的な行動につなげていくことで、自律的に考え、行動できる営業チームを作り上げることができるのです。