• 転職ガイド

    カテゴリーリスト

    マーケティング担当者のためのABM入門 ターゲット企業の選定からアプローチ実践まで

    マーケティング担当者のためのABM入門 近年、B2B企業のマーケティング手法として注目を集めているのがABMです。これは、アカウントベースドマーケティング(Account Based Marketing)の略で、特定の有望企業にリソースを集中させることで、効率的な商談創出を実現する手法です。

    これは、従来の幅広いリード獲得を目指すマーケティングとは、根本的に異なる手法です。今回は、これからABMを始めようとする企業のマーケティング担当者に向けて、基本的な考え方から具体的な実践方法までを解説していきます。

    ABMの基本を理解する

    ABMとは、特定の企業をターゲットとして、その企業に最適化されたマーケティング活動を展開する手法です。マス向けのマーケティングと比べて、より効率的なリソース活用と高い商談化率が期待できます。

    1.なぜいまABMなのか

    従来型のマーケティングでは、多くのリソースを投じて広くリードを獲得しても、最終的な商談化率が低いという課題がありました。ABMは、最初からポテンシャルの高い企業にフォーカスすることで、より効率的な商談創出を目指します。

    • 優良顧客の特徴:商談化率が高い/LTV(顧客生涯価値)が大きい/製品活用度が高い/追加購入の可能性が高い
    • 従来型マーケティングの課題:リード獲得コストが高い/営業での選別工数が大きい/商談化までの時間が長い/リソースの分散
    • ABMのメリット:効率的なリソース活用/ターゲット企業への深い理解/営業との連携強化/カスタマイズされたアプローチ

    2.ABMのタイプを知る

    企業規模や目的に応じて、ABMは大きく3つのタイプに分類されます。自社のリソースと目的に合わせて、適切なタイプを選択することが重要です。

    • 1-to-1 ABM:特定の大口見込み顧客に対して、完全にカスタマイズされたアプローチを行う(例:年間5-10社程度)
    • 1-to-Few ABM:共通の特徴を持つ企業群に対して、ある程度カスタマイズされたアプローチを行う(例:年間20-30社程度)
    • 1-to-Many ABM:類似した特徴を持つ多数の企業に対して、セグメント化されたアプローチを行う(例:年間50-100社程度)

    3.成功のための前提条件

    ABMを成功させるためには、以下の要素が重要です。これらの条件が整っているか、事前に確認しましょう。

    • 組織体制:マーケティング部門と営業部門の密接な連携、経営層のコミットメント、専任担当者の配置
    • データ基盤:ターゲット企業の情報収集体制、行動データの蓄積基盤、分析ツールの整備
    • コンテンツ資産:業界別の課題解決コンテンツ、導入事例、製品比較資料、技術文書

    ターゲット企業の選定プロセス

    ABMの成否を決める最も重要な要素が、ターゲット企業の選定です。以下のステップで、効果的な選定を行いましょう。

    1.選定基準の設定

    選定基準は、定量的な要素と定性的な要素の両方を考慮して設定します。

    • 定量的な基準:企業規模(売上・従業員数)、IT予算、既存システムの状況、拠点数、成長率
    • 定性的な基準:デジタル化への積極性、意思決定の特徴、組織文化との親和性、競合製品の導入状況
    • 優先度の考え方:商談化可能性、案件規模、展開可能性(他部門・他拠点)、参照可能性

    2.データに基づく企業分析

    選定基準に基づき、具体的な企業をリストアップしていきます。

    • 基本情報の収集:企業データベース、ニュース記事、IR情報、求人情報、技術ブログ
    • 独自情報の活用:自社サイトでの行動履歴、セミナー参加履歴、問い合わせ履歴、営業部門からの情報
    • 競合分析:競合製品の導入状況、技術スタック、課題やニーズの把握

    3.ターゲットリストの作成

    収集した情報を基に、具体的なターゲットリストを作成します。

    • 優先順位付け:選定基準に基づくスコアリング、営業部門との合意、リソース配分の検討
    • プロファイル作成:キーパーソン情報、組織構造、意思決定プロセス、想定される課題
    • アプローチ計画:時期的なタイミング、必要なリソース、期待される成果

    アプローチ戦略の立案

    ターゲット企業が決まったら、具体的なアプローチ戦略を立案します。

    1.企業別の戦略設計

    各企業の特性に合わせて、最適なアプローチ戦略を設計します。

    • 情報収集方針:公開情報の監視、SNSでの発信内容、展示会やイベントでの接点
    • コンテンツ戦略:カスタマイズコンテンツの作成、業界特有の課題に対する提案、成功事例の活用
    • チャネル選択:広告配信、イベント開催、ダイレクトメール、オンライン施策の組み合わせ

    2.具体的なアプローチ手法

    実際のアプローチは、複数の手法を組み合わせて実施します。

    • デジタルアプローチ:IPアドレスターゲティング広告、カスタマイズされたメールキャンペーン、ソーシャルメディア広告
    • オフラインアプローチ:ターゲット企業限定のイベント開催、個別訪問、業界イベントでの接点作り
    • ハイブリッドアプローチ:オンラインセミナーと個別フォロー、デジタルとリアルの組み合わせ

    3.パーソナライゼーションの実践

    ターゲット企業の特性に合わせて、コミュニケーションをカスタマイズします。

    • メッセージ設計:企業特有の課題への言及、業界トレンドとの関連付け、具体的な価値提案
    • コンテンツカスタマイズ:業界別ホワイトペーパー、企業規模に応じた事例、部門別の活用提案
    • コミュニケーション最適化:担当者の役職に応じた内容、部門特有の課題への対応、使用チャネルの選択

    組織的な推進体制

    ABMの成功には、組織全体での取り組みが不可欠です。

    1.マーケティングと営業の連携

    ABMの成否を左右するのは、マーケティングと営業の緊密な連携です。

    • 情報共有の仕組み:定期的なミーティング、進捗報告の仕組み、成果の可視化
    • 役割分担:企業分析、アプローチ計画、コンテンツ作成、個別フォロー
    • 評価指標の統一:共通KPIの設定、成果の評価方法、改善プロセス

    2.実行体制の整備

    効果的な実行のための体制を整えます。

    • 担当者の配置:専任担当者の選定、スキル要件の定義、教育研修の実施
    • ツールの整備:MAツール、CRMツール、分析ツールの選定と導入
    • プロセスの標準化:実行手順の明確化、品質管理の仕組み、ナレッジの蓄積

    3.PDCAサイクルの確立

    継続的な改善のための仕組みを作ります。

    • 効果測定:アプローチ別の反応率、商談創出数、受注率の測定
    • 分析と改善:成功要因の分析、課題の特定、改善策の立案
    • ナレッジ共有:成功事例の共有、失敗からの学び、ベストプラクティスの確立

    運用上の注意点と効果測定

    ABMの運用にあたっては、以下の点に注意が必要です。

    1.主な注意点

    最も重要なのが「リソース配分の適正化」です。ターゲット企業の数は、自社のリソースに見合った適切な規模に設定する必要があります。一社あたりのカスタマイズコンテンツ作成やアプローチ実施にかかる工数を正確に見積もり、それに基づいて無理のない企業数を設定しましょう。

    「カスタマイズコンテンツの品質管理」も重要な要素です。企業分析に基づく適切な提案内容、一貫性のあるメッセージング、そして細部まで作り込まれた資料作成が必要です。

    「プライバシーへの配慮」も忘れてはなりません。ターゲット企業の情報収集や分析を行う際は、個人情報保護法をはじめとする各種法令を遵守することはもちろん、企業としての情報管理体制を整備することが重要です。

    2.効果測定の方法

    ABMの効果測定には、短期的な指標と長期的な指標の両方を組み合わせることが重要です。短期的な定量指標としては、ターゲット企業からのウェブサイト訪問や資料ダウンロードなどの「エンゲージメント率」、実際の「商談創出数」、そして最終的な「受注金額」などが挙げられます。

    一方で、定性的な評価も欠かせません。例えば、ターゲット企業のキーパーソンとの関係性がどの程度深化したか、製品や自社への理解度がどれだけ向上したか、といった点も重要な評価ポイントとなります。

    さらに、長期的な視点での効果測定も重要です。例えば、一度取引が開始された企業での他部門への展開可能性や、追加製品の導入機会の創出など、中長期的な企業価値の向上につながる指標もモニタリングしていく必要があります。

    これからのABM展開に向けて

    ABMは、効率的な商談創出を実現する有効な手法である一方で、その実践には入念な準備と組織的な取り組みが求められます。

    今回解説したように、しっかりとした企業分析に基づくターゲット選定、ターゲット企業に合わせた綿密なアプローチ計画の立案、そして営業部門との緊密な連携が成功の鍵となります。

    デジタル技術の進化により、より精緻なターゲティングや効果的なアプローチが可能になっています。自社の状況に合わせて着実にステップを踏みながら、新しい手法や技術も積極的に取り入れ、継続的な改善を図っていくことが重要です。

     

    転職営業のキャリアアップに挑戦
    してみませんか?

    60万社以上の本音の口コミを公開中

    営業職で失敗しない転職をするために
    無料会員登録して口コミを確認

    あわせて読みたい

    カテゴリーリスト

    キャリア情報館

    スキルアップ講座

    仕事図鑑

    差がつく転職ノウハウ

    転職の基本