「カスタマーサクセス」の仕事 向いている人と成長ステップ
従来の「商品を売って終わり」というビジネスモデルから、月額制のサブスクリプションサービスや、クラウドソフトウェア(SaaS)など、顧客と継続的な関係を築くビジネスが主流になってきました。
このような変化の中で注目されているのが「カスタマーサクセス」という職種です。顧客が商品やサービスを継続的に利用し、十分な価値を得られるようサポートする仕事です。売り切り型のビジネスでは必要なかった、しかし継続型のビジネスでは不可欠な、新しい専門職として認知されています。
こんな人に向いている仕事です
カスタマーサクセスには、以下のような素質や興味を持つ人が向いています。
1.お客様の成功と事業の成長を両立できる
お客様が製品やサービスを活用して成果を上げることが、取引の拡大にもつながる。この両方を実現できる人が求められます。単なる技術サポートや親身な対応だけでなく、ビジネス視点を持って取り組める姿勢が重要です。
2.データを見ながら提案ができる
利用状況のデータから課題や機会を見つけ出し、適切なタイミングで次の提案ができる人が活躍できます。「この活用パターンなら、次はこの機能が有効なはずだ」という予測を立て、的確なアップセル・クロスセルにつなげていきます。
3.製品の価値を顧客の文脈で伝えられる
担当する製品やサービスの機能を、お客様のビジネス課題に結びつけて説明できることが大切です。「なぜこの機能が必要なのか」「どんな成果が期待できるのか」を、具体的な事例を交えて提案できる力が求められます。
4.社内外の関係者と協力して成果を出せる
開発チームやサポートチーム、営業部門など、様々な立場の人と協力しながら、お客様の成功と取引の拡大を実現できる人が向いています。お客様の声を的確に社内に伝え、製品改善や新たな提案につなげていく役割も担います。
カスタマーサクセスの役割
カスタマーサクセスの主な役割は、以下の4つです。
1.顧客の目標設定と達成支援
契約後のお客様と密にコミュニケーションを取り、具体的な目標を設定します。その上で、目標達成に向けた実行計画を立て、進捗状況を確認しながら必要なサポートを提供します。これは、単なる支援ではなく、顧客との関係強化と次の提案機会の創出につながります。
2.製品利用状況の分析と改善提案
製品の利用データを分析し、活用が不十分な機能や追加提案の機会を特定します。お客様により多くの価値を感じていただけるよう、具体的な活用方法を提案するとともに、追加機能の導入も推奨していきます。
3.取引の維持・拡大
お客様の成功体験を基に、新たな価値提案を行います。例えば、追加機能の導入(アップセル)や関連サービスの提供(クロスセル)を通じて、取引の拡大を図ります。これは単なる営業活動ではなく、お客様の成功をより確実にするための提案として行います。
4.製品フィードバックの収集と活用
顧客の満足や不満、要求や期待など、お客様の声を収集し、製品やサービスの改善につなげていきます。これは、現在の顧客満足度向上だけでなく、新規顧客の獲得や既存顧客への追加提案にも活用できる重要な情報となります。
具体的な仕事内容
カスタマーサクセスの日常的な業務は、以下のような内容です。
1.オンボーディングの設計と実施
新規のお客様に対して、製品やサービスの効果的な活用方法を説明します。この段階で、お客様の短期・中期の目標を明確にし、成功の定義を共有します。段階的な機能活用計画を立て、将来のアップセルポイントも視野に入れた導入を進めます。
2.定期的なレビューと提案
月次や四半期などの定期的なレビューを実施し、目標達成状況と課題を確認します。利用データを基に、追加機能の提案や新しい活用方法の提案を行い、取引の拡大機会を見出します。単なる状況確認ではなく、次のアクションにつながるミーティングを設計します。
3.利用状況の分析と対策立案
製品の利用データを定期的にチェックし、解約リスクの早期発見とアップセル機会の特定を行います。利用が低下している顧客には速やかにアプローチし、一方で高度な活用をしている顧客には上位プランや追加機能の提案を行います。
4.戦略的な社内連携
お客様からのフィードバックを、製品改善や新機能の提案につなげていきます。開発チームとの協議、営業チームとの連携、サポートチームとの情報共有を通じて、顧客の成功と事業の成長を両立させる施策を推進します。成功事例は文書化して共有し、他の顧客への提案材料としても活用します。
キャリアパスとスキル習得
カスタマーサクセスのキャリアは、以下のようなステップで発展していきます。
Step1.基礎固め
製品知識とビジネス視点の両方を習得する時期です。お客様との信頼関係の築き方、基本的なデータ分析手法、社内の業務フローを学びながら、なぜその機能が顧客のビジネスに価値をもたらすのかを理解します。この段階では、先輩の提案手法や成功パターンを積極的に学ぶことが重要です。
Step2.実践力の向上
より大きな契約を持つお客様や、複雑な要件を持つお客様を担当し、戦略的なアカウント管理を学びます。利用データの分析から提案、取引拡大までを一貫して行えるようになり、担当アカウントの業績向上に直接的に貢献できるようになります。
Step3.キャリアの幅を広げる
基礎力と実践力を身につけた後は、様々な発展の可能性があります。
1つ目は、マネジメント職としての道です。カスタマーサクセス部門のマネージャーとして、組織全体の顧客満足度向上とチーム育成を担当します。
2つ目は、エンタープライズ担当としての専門性です。大手企業の主要アカウントを担当し、複雑な要件を調整しながら顧客の成功を支援します。
3つ目は、経験を活かした転職です。例えば、急成長中のSaaS企業でのカスタマーサクセスマネージャーや、より大規模なサブスクリプションビジネスでの上位ポジションなどが考えられます。
4つ目は、プロダクトマネージャーやビジネスコンサルタントなど、顧客理解とビジネス課題の解決経験を活かした職種へのキャリアチェンジです。
変化するビジネスの最前線へ
新規顧客の獲得にはコストがかかり、人手不足もあってセールスに戦力を割きにくい。そんな背景もあって、顧客の継続的な関係構築をベースとしたビジネスが増えています。これはSaaSだけでなく、あらゆるビジネスの傾向です。
そこで、製品やサービスを「売って終わり」ではなく、顧客の成功を支援しながら取引を拡大していく。そんな戦略的な視点を持った人材が、これまで以上に求められているのです。
顧客のビジネスを理解し、その成長に貢献しながら、自社の事業も発展させていく。カスタマーサクセスの成否が、会社の業績を大きく左右することもあるでしょう。そこには新しい役割を果たせるプロフェッショナルが求められています。