試用期間中の解雇・本採用見送りに遭わないための留意点
試用期間は、企業が労働者の適性を見極めるための重要な期間です。同時に、労働者も企業での仕事が自分に合っているかを判断する機会です。しかし、試用期間が終わる直前に「本採用は難しい」と告げられることもあります。
この場合、どのような手続きや権利が労働者にあるのか、そして本採用見送りや解雇に遭わないための対策について解説します。
試用期間とは?
試用期間は、企業が労働者の業務能力や適応性を確認するために設ける期間です。通常3ヶ月から6ヶ月程度で設定されますが、業界や企業によって異なります。
試用期間中も労働契約は有効であり、給与や福利厚生などの基本的な労働者の権利は保障されています。
試用期間中の「解雇」は許される?
試用期間中に企業が労働者を解雇することは、労働基準法に基づいて可能です。ただし、解雇が認められるためには「客観的に合理的な理由」が必要です。これは、労働者が著しく業務能力を欠いている場合や、重大な規則違反を犯した場合などが該当します。
また、企業は解雇を行う際に30日前に解雇予告を行うか、30日分の解雇予告手当を支払う必要があります。
「本採用見送り」との相違点は?
試用期間満了時に本採用が見送られることは、法的には「解雇」として扱われます。そのため、原則として30日前に本採用拒否の通知を行うか、解雇予告手当を支払う必要があります。つまり、試用期間が終わる直前に「本採用は難しい」と突然告げられた場合、企業は30日分の賃金を労働者に支払う義務があります。
なお、「本採用見送り」には「解雇」と異なる以下の特徴があります。
1.企業側の裁量が広い
試用期間中の評価に基づく判断のため、通常の解雇よりも企業側に若干の裁量が認められる傾向があります。
2.判断基準がやや緩やか
試用期間満了時の本採用見送りの際には、通常の解雇よりも判断基準が緩やかに認められることがあります。しかし、それでも合理的な理由が求められることには変わりありません。
3.適切なタイミングでの通知が必要
本採用見送りの決定は、試用期間満了の30日前までに通知することが必要です。通知がない場合には、解雇予告手当を支払う義務があります。
解雇等の「正当な理由」とは?
本採用見送りや試用期間中の解雇が正当とされるためには、以下のような「客観的に合理的な理由」が必要です。
1.業務成績が著しく低い場合
期待される業務成果に著しく達していない場合は、正当な理由となる可能性があります。特に、指導や研修を受けても改善が見られない場合が該当します。
2.規則違反等があった場合
重大な規則違反や不正行為があった場合、例えば繰り返しの無断欠勤や情報漏洩などは、解雇や本採用見送りの正当な理由になります。
3.適応力の欠如が見られる場合
職場の文化に適応できない、または同僚や上司とのコミュニケーションに問題がある場合も、企業が本採用見送りを判断する合理的な理由となり得ます。
4.業務遂行能力に欠ける場合
健康状態が業務に大きな影響を与える場合や、基本的な業務遂行能力に欠ける場合も解雇の理由として認められることがあります。
5.企業の経営状況が悪化した場合
企業の経営悪化に伴うリストラなど、経営上の理由による解雇も認められます。ただし、これも合理的な理由を明確にする必要があります。
解雇等に必要な手続きは?
企業が試用期間満了時に本採用見送りを決定する場合、30日前に労働者に対して通知する義務があります。通知がない場合には、30日分の解雇予告手当を支払う必要があります。
また、解雇や本採用見送りを行う際には、合理的な理由を労働者に説明する義務があります。これが行われない場合、不当解雇とみなされる可能性が高まります。
労働者側の留意点
試用期間中に解雇や本採用見送りを避けるためには、以下の点に注意が必要です。
1つ目は「業務能力の向上」。労働者として業務をしっかりとこなし、企業が求める成果を上げることが重要です。
2つ目は「コミュニケーションの強化」。上司や同僚とのコミュニケーションを円滑にし、チームワークを大切にすることが評価につながります。
3つ目は「規則やルールの遵守」。企業のルールや規則に従い、誠実に働く姿勢を示すことが大切です。
4つ目は「フィードバックを求める」。試用期間中に自分のパフォーマンスに関してフィードバックを求めることで、改善点を早期に把握し対応できます。
なお、不当な解雇や本採用見送りに遭遇した場合や、解雇予告手当などに疑問が生じた場合には、労働基準監督署などに相談することが考えられます。あるいは「この会社には入るべきではなかった」と分かれば、そのまま他社への転職活動を始めるのもいいのかもしれません。