パートタイム労働法が改正! そのポイントと注意点
2015年4月、改正パートタイム労働法が施行されます。「パートのことだから自分には関係ない」と思う方もいるかもしれませんが、パート社員とは『会社で定めた所定労働時間が短い労働者』全般のこと。この定義に基づくと全国にはパート社員が、1500万人いると言われており、日本の労働者数の4分の1にものぼるといわれています。
今は関係なくても、いずれあなたにも関係してくる可能性が十分にあり、あなたの身近な人に大きな影響を及ぼすことも考えられる、改正パートタイム労働法。その変更のポイントと注意点をご紹介します。
パートタイム労働法改正の背景
パートタイム労働法は、正式名称を「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」といい、1993年に制定されました。パートタイム労働者の適正な労働条件の確保、雇用管理の改善、通常の労働者への転換の推進などを通じて、パートタイム労働者の福祉の増進を図ることを目的にしています。
では、なぜ今この法律が見直されるようになったのでしょうか。背景にはパート雇用の拡大と、パートタイム労働者の増加があります。企業側が正社員での採用を抑えていることや、20代・30代の意識が変化し正社員として働かない選択をする者が増加したこと、また高齢者などの再雇用が促進しパートタイムで働く機会が増えたことなどがパートタイム労働者増加の要因として挙げられます。
それらのパート労働者が抱えた不満を解消しようという意図が、本改正の目的です。労働政策研究・研修機構の調査によると「勤続を重ねても賃金が上がらない」、「同じ仕事をしている正社員等と比べ賃金が安い」など、特にパート労働者の賃金に対する不満が露呈しました。他にも、福利厚生において大きな差があるなどの不平も明らかになりました。
一方で、これらの不平等感を表明する労働者は著しく少ないこともわかっています。同調査からは、説明を求めても改善されないだろうという諦めや、「面倒なやつ」と見られてより待遇が劣悪なものになることを恐れているためだという結果が出ています。こうした不満を解消するための改正なのです。
パートタイム労働法改正のポイント
今回の改正では大きく何が変わったのでしょうか。ポイントは大きく2点あります。
- ・パートタイム労働者に対する相談窓口を設け、労働条件通知書に担当者名や連絡先を明記することが義務付けられた
- ・パートタイム労働者を雇ったり、契約更新をしたりする際には、賃金制度の変更や正社員への転換措置があるかなど雇用環境の改善について説明しなければならない
全ての企業にパートタイム労働者からの相談を受け付ける窓口の設置が義務付けられました。むろん、労働者が窓口を利用したことによる不利益な取り扱いは禁止されていますし、この設置義務に違反した場合には、事業主名を公表する場合もあると明記されています。
この他にも、親族の葬儀で休んだ場合には解雇の理由としないなど、これまで処遇問題事例として挙がっていた事柄からの具体的な改善も盛り込まれました。厚労省は、こうした措置によりパート労働者の待遇改善と納得感を高めることを狙いとしています。
パートタイム労働法の改正後の注意点
パートタイム労働法改正に伴って、実際のパートタイム労働者はどんなことに注意すべきなのでしょうか。
この改正は「正社員と同等に働いている労働者」を対象にしています。しかし、実際のところ正社員並みに働いているかどうかは客観的には把握しづらいものです。そのため、厚労省では「職務分析・職務評価」の実施を推奨しています。これは業務の内容や必要な知識、部下の有無、権限の範囲などを明確化させるものです。この評価ポイントが高い場合、給与などの改善検討の対象になるといえるでしょう。
パートタイム労働法の改正により、契約更新時などに賃金や雇用条件についての説明がなされるようになりましたし、窓口に相談することもできるようになりました。会社側に対し待遇の交渉をする際には、このような客観的な情報を手元に置いておくとよいでしょう。
さらに、パートタイム労働者は、労働契約の交渉時には、下記の点を注意するとよいでしょう。
- ・目先のことだけでなく、労働条件について今後変化する可能性があるかを聞く
- ・具体的にどんな役割を担えば労働条件が改善されていくかを相談する
- ・会社の状況を理解した上で自分の要望を語る
契約更新時すぐに賃金が上がる(労働条件が改善する)かだけでなく、半年後、1年後など今後変わっていく可能性もあるかも含めて質問するとよいでしょう。もちろん、自分の主張ばかりしていては、「一緒に働きにくい人」という印象になりかねません。「仕事の範囲を広げる必要はありますか?」などと自分がスキルアップしていく意志があることを示すとよいでしょう。今回のパートタイム労働法を上手に活用し、自分のキャリアを前向きにステップアップさせていくことが大切です。(ライター:香川とも)