• ワタミ会長、内定出ないのは「学生時代を漫然と過ごしたツケ」

     『14歳と学ぶ「働く」ための教科書』(日本経済新聞出版社刊)は、居酒屋チェーン「和民」などを展開するワタミグループの渡邉美樹会長が、自ら理事長を務める郁文館夢学園の中学生を相手に労働観や人生観を語る本である。2008年発行の『14歳からの商い』の文庫化だ。

     まえがきで渡邉氏は、いきなり「就職難」に対する厳しい姿勢を語る。渡邉氏は「なぜ内定が取れないのかわからない」と嘆く学生に対し、こう問いたいという。

     「じゃあ、将来仕事に就くために大学時代、高校時代、あるいは中学時代、目標を持って努力を積み重ねてきましたか? 何か行動を起こしましたか?」
     

    ニートは「社会に対する責任放棄」である

     目標に向かって行動を起こし、何かの形で残すことができる人は「就職先に困るはずがありません」「なかなか就職が決まらないという人は、学生時代に目的意識なく過ごしてきてしまったツケが回ってきた結果」と言い切る。

     そして、バブル期と比較して「あの人たちはずるい」と嘆く暇があったら、「努力の差がシビアに問われるこの時代に、何を目標にしていかに行動を起こすか、ということを真剣に考えたほうがいい」と突き放している。

     ニートや働かない人たちについて、どう思いますか、という中学生の質問に対しては、「働かないのは社会に対する責任放棄」と断じ、

     「“人に迷惑をかけなければいい”ではなく、“人のために何ができるか”ということを考えながら人間は生きていかなければならない」

     とアドバイスしている。

     労働観は時代で変わり、人によっても異なるが、それを「教科書」という題名で著す感覚に違和感を持つ人もいるだろう。社会の中で責任を担って生きていく重要性を説く内容に、暑苦しくて受け入れがたいと思う人もいそうだ。
     

    「大人になる」ための2つの条件とは? 

     渡邉氏のコメントに腹が立つ理由は、なんだろうか。彼の言い分が間違っていると感じるからなのか、それとも正論だと思えてもなかなか受け入れ難いのか。

     もしも後者であれば、こういう不快な本をたまに無理して読むのも悪くない。自分にとって必要な言葉というのは、往々にして耳が痛くて受け入れがたいものだ。「良薬、口に苦し」ということわざもある。

     ワタミを「ブラック企業」と信じる人にも、抵抗感があるに違いない。しかし、だからこそ彼がどんな主張をしているのか、断片的な発言や事象だけでなく体系的に理解し、事実に即して論理的に批判することも必要だ。

     渡邉氏は、「大人になる」ためには、「『人がなんと言おうが、これが幸せだ』という自分の軸をしっかりと持つこと」「自分以外の人の幸せに関心や責任を持つこと」の両方が必要だという。

     「個人の自由」や「個性」ばかり尊重されて育ち、社会的存在として生きる力が弱まっている若者にとって、反発するにしろしないにしろ、耳を傾けて自分なりに考えてみる価値のある言葉があるように思える。自分も14歳のときに教えてもらいたかった、と思う人もいるのではないか。

     

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