• 就活とは「自分が手伝いたい企業」を探すこと 定義を誤ると苦戦する

    「就活とは」と聞かれたら、あなたは何と答えますか? この定義次第で、就活がうまくいくか、苦戦を強いられるかが決まってしまいます。

    就活を、辞書に載っているような「就職先を探す活動」だと考えている人は多いでしょう。この意味も間違ってはいません。間違った定義づけは「自分のことを売り込む場」だとする考え方です。苦戦する理由は、これまでの連載でお伝えした通りです。

    「自分の生活」しか考えない学生に魅力を感じない

    「生活するために必要なこと」だと考えると、同様に苦戦を強いられることが多くなるでしょう。「自分の生活を安定させるために、社員にしてください」という身勝手な言い分で面接に来られても、「ぜひ採用したい!」とはなりません。

    もちろん、「生活のために」という思いがあることは分かります。たとえば、既婚の中年男性の中途採用は家庭を始め様々なものを背負っての就活となりますが、だからといって「自分のために社員にしてくれ」とだけ言われると、採用したい気持ちが生まれないものです。

    これは新卒採用でも同じです。私たち採用担当者が探しているのは、「自分の生活を安定させてくれる会社を探している人」ではなく、「一緒に仕事をしたい人」ですから……。

    では、就活がうまくいく人は、どんな考え方を持っているのでしょうか。私はある学生から、この意味を教えてもらいました。

    採用担当者をしていると、毎年1000名以上の学生と会います。その中で年間数人だけですが、特に良いと思った学生に限り、二次・三次面接を飛ばして、一気に最終面接へ進めています。

    こういった学生は他社からも当然のように内定をもらうので、自社に来てもらうためのフォローが必要となります。そのために、個人的に何度も会うこともしますから、自然と人間関係ができていきます。

    お客様のために働く人は、会社が倒産しても救われる

    ある年、自社への入社を決めてくれた学生と話をしている時に、「入社先を決めた理由」を聞いてみました。その答えに私は驚きを隠せませんでした。

    「内定をもらった企業の中で、私が一番お役に立てるのは御社だと思ったからです」

    21歳の若者が真っ直ぐに目を見て語る姿に、私は感動すら覚えていました。この生き方には頭が下がります。彼の生き様が就活の意味を教えてくれました。就活とは「自分が手伝いたい企業探し」なのだと。

    就職後、最も時間を注ぐことになるのが、日々の仕事です。励めば励むほど、お客様に喜ばれ、会社にも喜ばれます。結果的に、自分自身の成長にも繋がり、収入も上がっていくことでしょう。

    お客様のために仕事をし続ける人は、仮に自社が倒産しても転職時にあまり困りません。それどころか、お客様から「うちなんかで良ければ、来てくれませんか?」というお誘いがあるかもしれません。そういう体験をしている人を、私は何人も知っています。

    全ての仕事は「人の役に立つこと」が根幹にあり、就活はその入口です。自分が何かをしてもらうことだけを考えるのではなく、自分がどんな形で力を貸せるのかを考えてください。自分が「力になりたいな」と思える企業を探すことが就活です。(河合浩司)

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    【プロフィール】河合 浩司(かわい・こうじ)
    上場企業のメーカーで人事課長を務める、採用業務15年超のベテラン。学生たちの不安を煽って金を儲ける最近の就活ビジネスを批判し、ペンネームでのツイッター(@k_kouzi7)やウェブコラムを通じて「自然体の就活」を回復するよう呼びかけている。

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