新卒営業の離職率が半年で50%! 楽天流サバイバルゲームの実態 2012年5月30日 企業徹底研究 ツイート 大卒者の3割は3年以内に離職する――この数字は、意外なことに、ここ20年以上変わっていない。内閣府が3月に発表したデータでは、2010年3月に大学を卒業して就職した約57万人のうち、20万人が3年以内に離職するという推計が出ている。 しかし、これはあくまで一般的な数字。企業によってこの数は異なる。より短い期間で、大量の離職者が出る会社もあるのだ。 その1つが楽天だ。ここでは、プロパー(新卒)社員が数多く辞めていくという。そこで、今回、キャリコネの口コミと、退職した元プロパー社員の取材から、その実態に迫った。常にニュースを提供してくれる華やかなイメージもある楽天だが、どんな裏の顔があるのだろうか。 ◇ 配属されると、ほとんどが辞める「楽天市場事業部」 楽天で特に多くの退職者が出すのが、ネット通販の楽天市場を担当する楽天市場事業部だ。ここは「ネット広告で高いノルマを課され、朝早くから終電までほぼ毎日働かされる“激務”な部著」(楽天市場事業部に営業で勤務していた元社員のAさん)だという。 だから、この事業部の離職率は、3割どころではない。半数近くの人が会社を去ると言われている。そのため、2010年度入社で、楽天市場の営業に配属されたプロパー社員は、わずか半年で半数が辞めたというから、もう驚くしかない。 この時は、システムエンジニアとして開発に配属など、営業以外に配属された社員までもが、三木谷浩史会長兼社長の「楽天市場の売り上げアップが急務だ。担当者を増員させよ」という、鶴の一声で、配属が急遽変更。希望していなかった人も営業に投入され、その激務ぶりにあてられ、退職者が続出したという。 ◇ 役員・社員は全員集合!「朝会」という名の修行 楽天市場事業部以外の部署でも楽天のやり方そのものに疑問を感じ、外へ出て行くプロパー社員も多数存在している。 「入社して少し経った頃から同期とは、『ちょっと変じゃない?』と話していた。例えば、朝会が業務時間外に8時からあるのもおかしい。『自由参加』とうたっているけれど、出席管理されていて、3回休むとボーナスが減額される。あなたもう2回休んでますよ、と貼り出されて脅されることもあった」 Aさんはこう話す。この頃から「楽天って変だ。辞めようかな」と感じていたという。 「朝会」とは「社長のありがたいお話を聞ける週1回開催の素晴らしい会」なのだと、Aさんは言う。 その内容は社長の講話、役員たちによる各部署の売り上げの進捗報告、トピックス報告、社内連絡などだ。以前は毎週月曜日の朝8時から開催されていた。去年からは社内公用語を「英語」にすることになったため、国際時間に合わせて毎週火曜日に開催されているという。 この朝会、一般社員は「8時までにIDの振り当てられた社員証で打刻し、朝会に出席した痕跡を残せば良い」(Aさん)。しかし、役員クラスは朝会前に事前会議があるため、朝7時には会社に来なければならないという。業務時間外の朝会もだが、この事前会議も「業務外なのに要出席」というのだから、“修行”に近い。 ◇ 上司に好かれることがすべて、出世で一層ひどくなる労働環境 一方で、キャリアアップや出世について疑問を抱いて、離職する人も少なくない。キャリコネの口コミを見ると、30代前半で経理の女性社員はこう書き込んでいる。 「簡単に言えば、社内営業が得意な人が簡単に出世する会社だと思います。一方で非常に能力が高くても、社内営業が下手だったりすれば、貧乏くじをひかされ続ける傾向が強かったです。一般的に会社も人間関係で成り立つ側面もあり、どの会社もそのような面はあると思いますが、その傾向は楽天に限って言えば非常に強いと思います」 元社員で楽天市場事業部の営業のBさんも「特に市場事業部では、社内でキーパーソンとなっている人への個人的な営業を含め、上の人から好かれる能力は数字を出すことと同じくらい大事」と告白する。 ただ、社内営業や上への覚えを良くするように努力して出世しても、さらに大変なことが待っている。 例えば、楽天市場事業部で、楽天市場の商品ジャンルごとのリーダーに昇格したとしよう。この役職はジャンルにもよるが、9名程度の部下を持ち、担当する商品の売り上げの責任を持つで管理職だ。 その実態は「事業部長、時には役員から直接、売り上げノルマの数字を常に詰められ、部下からは『なんで私にこんなにたくさんの売り上げノルマを課すんですか!』と突き上げられるポジション。そのプレシャーは一般社員の時よりもさらに激しく半端ではない」(Bさん)。 その結果、ストレス性の顔面麻痺になる人もいて、出世しても退職してしまう人は多いだのという。 ◇ 結局はミッキーがすべての会社 楽天は「基本的にはミッキー(三木谷社長)の気分で色々決まる。トップダウンが激しい会社」と、Aさんは言う。三木谷社長がすべてなのだ。そして、その“ワンマン”ぶりについて、こう話している。 「社内公用語が英語になったのも彼のツルの一声。側近にはイエスマンしかいないし、彼の力が何よりも強すぎる。確かに実績はあるから、彼の言う通りにやると成功するのは分かるけど…。誰も逆らえないし、少しでも逆らうと左遷されるのは目に見えている」 そのトップの号令で決まった英語についても社員は冷めた目で見ている。30代後半で営業事務の男性社員は、こんな口コミを寄せている。 「社内英語化といわれてから入社している人たちはもちろんベラベラだが、以前からいる役職員はTOEIC300点台もザラにいる。そもそも語学が堪能なら、あんな会社にはいないだろう」 楽天は国内市場の鈍化を見越して、海外事業の強化を図っている。一方で中国での事業を撤退するなど、その戦略にも不透明感が漂っている。トップダウンで決まった英語の習得も、このお粗末な社内の状況のままでは、先行きが不安視される。 三木谷社長の絶対君主制が支配する楽天。ここでは体力、精神力、対人能力、英語力のすべてを持つ人だけが生き残れるようだ。 【その他の企業徹底研究の記事はこちら】 *「キャリコネ」は、社員が投稿した企業に関する口コミ、年収情報、面接体験などを共有するサイトです。2012年4月末現在、45万社、17万件の口コミが登録されています。
新卒営業の離職率が半年で50%! 楽天流サバイバルゲームの実態
大卒者の3割は3年以内に離職する――この数字は、意外なことに、ここ20年以上変わっていない。内閣府が3月に発表したデータでは、2010年3月に大学を卒業して就職した約57万人のうち、20万人が3年以内に離職するという推計が出ている。
しかし、これはあくまで一般的な数字。企業によってこの数は異なる。より短い期間で、大量の離職者が出る会社もあるのだ。
その1つが楽天だ。ここでは、プロパー(新卒)社員が数多く辞めていくという。そこで、今回、キャリコネの口コミと、退職した元プロパー社員の取材から、その実態に迫った。常にニュースを提供してくれる華やかなイメージもある楽天だが、どんな裏の顔があるのだろうか。
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配属されると、ほとんどが辞める「楽天市場事業部」
楽天で特に多くの退職者が出すのが、ネット通販の楽天市場を担当する楽天市場事業部だ。ここは「ネット広告で高いノルマを課され、朝早くから終電までほぼ毎日働かされる“激務”な部著」(楽天市場事業部に営業で勤務していた元社員のAさん)だという。
だから、この事業部の離職率は、3割どころではない。半数近くの人が会社を去ると言われている。そのため、2010年度入社で、楽天市場の営業に配属されたプロパー社員は、わずか半年で半数が辞めたというから、もう驚くしかない。
この時は、システムエンジニアとして開発に配属など、営業以外に配属された社員までもが、三木谷浩史会長兼社長の「楽天市場の売り上げアップが急務だ。担当者を増員させよ」という、鶴の一声で、配属が急遽変更。希望していなかった人も営業に投入され、その激務ぶりにあてられ、退職者が続出したという。
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役員・社員は全員集合!「朝会」という名の修行
楽天市場事業部以外の部署でも楽天のやり方そのものに疑問を感じ、外へ出て行くプロパー社員も多数存在している。
「入社して少し経った頃から同期とは、『ちょっと変じゃない?』と話していた。例えば、朝会が業務時間外に8時からあるのもおかしい。『自由参加』とうたっているけれど、出席管理されていて、3回休むとボーナスが減額される。あなたもう2回休んでますよ、と貼り出されて脅されることもあった」
Aさんはこう話す。この頃から「楽天って変だ。辞めようかな」と感じていたという。
「朝会」とは「社長のありがたいお話を聞ける週1回開催の素晴らしい会」なのだと、Aさんは言う。
その内容は社長の講話、役員たちによる各部署の売り上げの進捗報告、トピックス報告、社内連絡などだ。以前は毎週月曜日の朝8時から開催されていた。去年からは社内公用語を「英語」にすることになったため、国際時間に合わせて毎週火曜日に開催されているという。
この朝会、一般社員は「8時までにIDの振り当てられた社員証で打刻し、朝会に出席した痕跡を残せば良い」(Aさん)。しかし、役員クラスは朝会前に事前会議があるため、朝7時には会社に来なければならないという。業務時間外の朝会もだが、この事前会議も「業務外なのに要出席」というのだから、“修行”に近い。
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上司に好かれることがすべて、出世で一層ひどくなる労働環境
一方で、キャリアアップや出世について疑問を抱いて、離職する人も少なくない。キャリコネの口コミを見ると、30代前半で経理の女性社員はこう書き込んでいる。
「簡単に言えば、社内営業が得意な人が簡単に出世する会社だと思います。一方で非常に能力が高くても、社内営業が下手だったりすれば、貧乏くじをひかされ続ける傾向が強かったです。一般的に会社も人間関係で成り立つ側面もあり、どの会社もそのような面はあると思いますが、その傾向は楽天に限って言えば非常に強いと思います」
元社員で楽天市場事業部の営業のBさんも「特に市場事業部では、社内でキーパーソンとなっている人への個人的な営業を含め、上の人から好かれる能力は数字を出すことと同じくらい大事」と告白する。
ただ、社内営業や上への覚えを良くするように努力して出世しても、さらに大変なことが待っている。
例えば、楽天市場事業部で、楽天市場の商品ジャンルごとのリーダーに昇格したとしよう。この役職はジャンルにもよるが、9名程度の部下を持ち、担当する商品の売り上げの責任を持つで管理職だ。
その実態は「事業部長、時には役員から直接、売り上げノルマの数字を常に詰められ、部下からは『なんで私にこんなにたくさんの売り上げノルマを課すんですか!』と突き上げられるポジション。そのプレシャーは一般社員の時よりもさらに激しく半端ではない」(Bさん)。
その結果、ストレス性の顔面麻痺になる人もいて、出世しても退職してしまう人は多いだのという。
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結局はミッキーがすべての会社
楽天は「基本的にはミッキー(三木谷社長)の気分で色々決まる。トップダウンが激しい会社」と、Aさんは言う。三木谷社長がすべてなのだ。そして、その“ワンマン”ぶりについて、こう話している。
「社内公用語が英語になったのも彼のツルの一声。側近にはイエスマンしかいないし、彼の力が何よりも強すぎる。確かに実績はあるから、彼の言う通りにやると成功するのは分かるけど…。誰も逆らえないし、少しでも逆らうと左遷されるのは目に見えている」
そのトップの号令で決まった英語についても社員は冷めた目で見ている。30代後半で営業事務の男性社員は、こんな口コミを寄せている。
「社内英語化といわれてから入社している人たちはもちろんベラベラだが、以前からいる役職員はTOEIC300点台もザラにいる。そもそも語学が堪能なら、あんな会社にはいないだろう」
楽天は国内市場の鈍化を見越して、海外事業の強化を図っている。一方で中国での事業を撤退するなど、その戦略にも不透明感が漂っている。トップダウンで決まった英語の習得も、このお粗末な社内の状況のままでは、先行きが不安視される。
三木谷社長の絶対君主制が支配する楽天。ここでは体力、精神力、対人能力、英語力のすべてを持つ人だけが生き残れるようだ。
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