「わが社は絶対に潰れない」と社員が信じている会社 2012年8月24日 企業徹底研究 ツイート シャープが、東京・市ヶ谷のビルを売却するという。会社が傾くことは、ずっと前から分かっていたはずだ。 本来ならば、危機的状況になる前に人や設備をリストラし、身軽にして事業を立て直してから、再び人を雇い直すのが企業経営というものだろう。 しかし、日本では、そういう当たり前のことができない。「終身雇用」と「年功序列」で人を動かしてきた大企業は、身分を手厚く保護する条件で正社員に滅私奉公を求めてきたからだ。 この「ホワイト企業」っぷりが足かせとなり、何かをするときには余力なく倒れるしか道は残されていない。 ◇ 「暇な人間たくさん」「バブル引きずる経営陣」だったシャープ 案の定、シャープもいよいよになって1万人の削減を打ち出したが、株価は底値になってしまった。あのシャープが実質的に潰れ、台湾の会社に買われるなんて…。数年まで液晶テレビやケータイで絶好調を誇っていたあの人気企業が、である。 まさか自分の会社が潰れるとは想像もしなかった社員たちも、この状態になれば問題の深層に気づかざるをえない。キャリコネに寄せられた口コミで、若手社員がこんな書き込みを残している。 「使えない人材を切らないし、切れない。会社の経営理念上リストラを実施しないのだろうが、そのせいで、暇な人間がたくさんいる」(20代後半の男性社員、法人営業) 「会社としての将来性は低く、いつ潰れてもおかしくない状況である。(略)経営陣、管理職の多くが、液晶の右肩上がり時代に出世しており、未だに当時の液晶バブルの気持ちを引きずっている人が多い」(20代後半の男性社員、研究開発) 「暇な人間がたくさん」「経営陣がバブルを引きずっている」…。こんな会社は、どの大手企業にも見られる傾向ではないか。しかし、「中の人」たちは不思議なほど呑気に「自分の会社は潰れない」と信じている。 「長い間、新規参入がまずない、しかも世界シェアもそこそこの製品ばかり作ってきたので、危機感がない。変化に対するスピードも遅い。ほとんどの人が、会社は絶対に潰れないと思っている」(ヤマハ、40代前半の男性社員) 「もとNTT崩れやドコモ本体の退職おじさま達の受け皿的な部署もあり、のんびり感がある。お役所仕事的。(略)仕事に対する危機感がない人が多く絶対会社は潰れないと思ってる人が意外と多い」(ドコモエンジニアリング、30代前半の男性契約社員) ◇ 「親会社があるから大丈夫」はアテになるのか 日本たばこ(JT)で研究開発に携わる40代前半の男性社員も、管理職の多くが自社を「潰れない会社」と思い込んでいるので 「資本主義社会の中で他社と競争している意識や、顧客志向の発想(がない)」 と、批判している。旧専売公社の名残なのだろう。財閥系の会社でも、親会社があるので自分の会社は潰れないと信じている人がいる。三菱電機インフォメーションシステムズに勤める20代前半の男性社員は 「母体が大きいので『潰れない』という思いもあり、比較的のんびり。仕事をする人はバリバリするが、サボる人はサボる、評価は大差ない」 と、社内の実態を明かしている。しかし、こういう「のんびり」感は危ない。銀行や商社はともかく、一事業会社の運命など保証されたものはないだろう。 他にも大鵬薬品や日本ユニシス、東京スタイルやアツギにも「わが社は潰れない」と信じる社員がいるようだ。しかし、シャープがこうなった今、これを信じ期待して入社する若者たちはもういないのではないだろうか。 【その他の企業徹底研究の記事はこちら】 *「キャリコネ」は、社員が投稿した企業に関する口コミ、年収情報、面接体験などを共有するサイトです。2012年7月末現在、45万社、19万件の口コミが登録されています。
「わが社は絶対に潰れない」と社員が信じている会社
シャープが、東京・市ヶ谷のビルを売却するという。会社が傾くことは、ずっと前から分かっていたはずだ。
本来ならば、危機的状況になる前に人や設備をリストラし、身軽にして事業を立て直してから、再び人を雇い直すのが企業経営というものだろう。
しかし、日本では、そういう当たり前のことができない。「終身雇用」と「年功序列」で人を動かしてきた大企業は、身分を手厚く保護する条件で正社員に滅私奉公を求めてきたからだ。
この「ホワイト企業」っぷりが足かせとなり、何かをするときには余力なく倒れるしか道は残されていない。
◇
「暇な人間たくさん」「バブル引きずる経営陣」だったシャープ
案の定、シャープもいよいよになって1万人の削減を打ち出したが、株価は底値になってしまった。あのシャープが実質的に潰れ、台湾の会社に買われるなんて…。数年まで液晶テレビやケータイで絶好調を誇っていたあの人気企業が、である。
まさか自分の会社が潰れるとは想像もしなかった社員たちも、この状態になれば問題の深層に気づかざるをえない。キャリコネに寄せられた口コミで、若手社員がこんな書き込みを残している。
「使えない人材を切らないし、切れない。会社の経営理念上リストラを実施しないのだろうが、そのせいで、暇な人間がたくさんいる」(20代後半の男性社員、法人営業)
「会社としての将来性は低く、いつ潰れてもおかしくない状況である。(略)経営陣、管理職の多くが、液晶の右肩上がり時代に出世しており、未だに当時の液晶バブルの気持ちを引きずっている人が多い」(20代後半の男性社員、研究開発)
「暇な人間がたくさん」「経営陣がバブルを引きずっている」…。こんな会社は、どの大手企業にも見られる傾向ではないか。しかし、「中の人」たちは不思議なほど呑気に「自分の会社は潰れない」と信じている。
「長い間、新規参入がまずない、しかも世界シェアもそこそこの製品ばかり作ってきたので、危機感がない。変化に対するスピードも遅い。ほとんどの人が、会社は絶対に潰れないと思っている」(ヤマハ、40代前半の男性社員)
「もとNTT崩れやドコモ本体の退職おじさま達の受け皿的な部署もあり、のんびり感がある。お役所仕事的。(略)仕事に対する危機感がない人が多く絶対会社は潰れないと思ってる人が意外と多い」(ドコモエンジニアリング、30代前半の男性契約社員)
◇
「親会社があるから大丈夫」はアテになるのか
日本たばこ(JT)で研究開発に携わる40代前半の男性社員も、管理職の多くが自社を「潰れない会社」と思い込んでいるので
「資本主義社会の中で他社と競争している意識や、顧客志向の発想(がない)」
と、批判している。旧専売公社の名残なのだろう。財閥系の会社でも、親会社があるので自分の会社は潰れないと信じている人がいる。三菱電機インフォメーションシステムズに勤める20代前半の男性社員は
「母体が大きいので『潰れない』という思いもあり、比較的のんびり。仕事をする人はバリバリするが、サボる人はサボる、評価は大差ない」
と、社内の実態を明かしている。しかし、こういう「のんびり」感は危ない。銀行や商社はともかく、一事業会社の運命など保証されたものはないだろう。
他にも大鵬薬品や日本ユニシス、東京スタイルやアツギにも「わが社は潰れない」と信じる社員がいるようだ。しかし、シャープがこうなった今、これを信じ期待して入社する若者たちはもういないのではないだろうか。
【その他の企業徹底研究の記事はこちら】
*「キャリコネ」は、社員が投稿した企業に関する口コミ、年収情報、面接体験などを共有するサイトです。2012年7月末現在、45万社、19万件の口コミが登録されています。