客数も収入も激減の映画業界 松竹、日活、ワーナー、TOHOの苦境 2012年8月28日 企業徹底研究 ツイート 映画産業はいま、どうなっているのか。典型的な斜陽産業であり、もちろん想像にどおりの苦境ぶりだ。 日本映画製作者連盟がまとめた「映画産業に関する基本データ」を見ても、その状況は鮮明に浮かび上がる。2011年版から、主な数値をざっと見るだけでも、こんな感じだ。 ●入場人員=14472万人(前年比83%)●興行収入=1811億円(前年比82%)●映画館数=3339館(前年比98%)●公開本数=799館(111%増) 来館者や収入は2割近く減っているのに、映画館数は減少しておらず、公開された作品数はむしろ増えている。つまり、映画館1館あたりや映画1作品あたりの売り上げは、大きく落ち込んでいるのだ。 だからこそ、また新しい作品を制作しなければならないという「自転車操業」の状況。そんな厳しさがひしひしと伝わってくる。 昨年は東日本大震災による自粛ムードもあった。だが、それでは映画館から足が遠のいたぶん、自宅で観賞するDVDソフトなどが伸びたかというと、そうでもないから悲しい。映画ソフトの販売数や観賞人口もまた、前年から減少している。 こんなジリ貧の状況で、映画館や映画会社で働いている人たちの待遇や働き心地は、どうなっているのか。キャリコネに寄せられた各社の口コミから見ていこう。 ◇ 古いままの業界体質 女性の昇進は難しい やはり想像どおり、古い体質のままの業界らしい。松竹で代理店営業を担当する30代前半の男性契約社員は言う。 「一部上場企業ではあるが、封建的な体制はまだ維持されている。新卒では女性の採用もあるが、中途採用で管理職になっている女性はいない。女性が管理職を目指せるかは、入社形態による」 この男性社員によると、出世できるタイプは、上司や同僚に対して、要領よく立ちまわれる人だそうだ。会社への貢献度よりも、こちらが重要だという。 女性社員たちも、同様の意見だ。事務担当の女性(26)はこう明かす。 「やりがいはまったくない。女性は、経理関係以外は男性社員の補助業務しか無く、昇進も異動もない。昇給もほとんどなし」 別の女性(29)も示し合わせたように、こう話す。 「実績が多少伴っていなくても、社内の上層部に顔をうまく売り込める人が出世する」 どうやら社内の雰囲気はおよそ進歩がないらしい。 同業他社はどうだろうか。 「300人足らず(口コミ投稿時点、2012年7月1日時点の社員数は230名)の会社なのに、他部署とのコミュニケーションがなさすぎる。数年いても、まったく話をしたことのない人さえいる」(社員数については口コミ投稿時点、2012年7月1日時点の社員数は230名) と言うのは、日活のベテラン財務担当の男性社員(45)だ。この結果、社内に一致団結力やスピーディーさがなくなり、覇気が失われているのだという。 ◇ 映画館は賃金が安く、休日出勤が評価される厳しい職場 一方、映画館はどうだろうか。日本経済新聞は最近の紙面で「さまようシネコン」と題した連載を掲載。シネマコンプレックス(複合映画館)が転機を迎え、観客動員数が伸び悩んで劇場数の増加も頭打ちとなっている現状を伝えている。 この記事によると、映画の平均入場料は1200円だが、そこから上がる利益はほんの数パーセントしかないという。稼ぎは、館内の飲食や関連グッズの売り上げに頼っているのが現状と伝えている。 こうした現場の状況を、ワーナー・マイカルで映画館のフロアスタッフとして働いている20代前半の男性は、こう告白している。 「サービス残業は当たり前。早朝に出勤した場合も、もれなく夜中に帰宅することになる。とにかく保守的で、何をするにしても上司を通さないといけないため、一つの提案が決定するまでにかなりの時間を要します」 そして、これらに反発する人は、同僚に無視されるなどの社内イジメに遭うそうだ。 TOHOシネマズも、厳しい労働環境は同じらしい。 「劇場はほぼアルバイトスタッフでまわっていて時給の低賃金で働いている。劇場のマネージャー、副支配人、支配人の基本給は低く、残業代で稼いでいる。また、昇進も簡単ではない上に、昇給の期待は低い。劇場から本社勤務は夢のまた夢だ」 そう明かすのは、施設スタッフの20代前半の女性だ。では、給与はどのくらいか。この女性の年収は170万円だ。 社員の20代前半の男性店長(年収300万円で)は、報酬についてこう述べている。 「基本給は、一般社員に相当する劇場マネージャーだと16万円前後と非常に低い。副支配人や支配人に上がると、月給で数十万円単位で変わってくる。だが役職の空きがないため昇級は難しい」 ボーナスは年間で4~5カ月が平均値だそうだ。査定はあってないようなもので、基本は一定なのだそうだ。 「映画館は年中無休で営業をしているので、休日も関係なく仕事をするタイプの人間が評価されているように感じる」 と、この男性社員は言う。なるほど、映画業界はどこまでも旧態依然であるようだ。 *「キャリコネ」は、社員が投稿した企業に関する口コミ、年収情報、面接体験などを共有するサイトです。2012年7月末現在、45万社、19万件の口コミが登録されています。
客数も収入も激減の映画業界 松竹、日活、ワーナー、TOHOの苦境
映画産業はいま、どうなっているのか。典型的な斜陽産業であり、もちろん想像にどおりの苦境ぶりだ。
日本映画製作者連盟がまとめた「映画産業に関する基本データ」を見ても、その状況は鮮明に浮かび上がる。2011年版から、主な数値をざっと見るだけでも、こんな感じだ。
●入場人員=14472万人(前年比83%)
●興行収入=1811億円(前年比82%)
●映画館数=3339館(前年比98%)
●公開本数=799館(111%増)
来館者や収入は2割近く減っているのに、映画館数は減少しておらず、公開された作品数はむしろ増えている。つまり、映画館1館あたりや映画1作品あたりの売り上げは、大きく落ち込んでいるのだ。
だからこそ、また新しい作品を制作しなければならないという「自転車操業」の状況。そんな厳しさがひしひしと伝わってくる。
昨年は東日本大震災による自粛ムードもあった。だが、それでは映画館から足が遠のいたぶん、自宅で観賞するDVDソフトなどが伸びたかというと、そうでもないから悲しい。映画ソフトの販売数や観賞人口もまた、前年から減少している。
こんなジリ貧の状況で、映画館や映画会社で働いている人たちの待遇や働き心地は、どうなっているのか。キャリコネに寄せられた各社の口コミから見ていこう。
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古いままの業界体質 女性の昇進は難しい
やはり想像どおり、古い体質のままの業界らしい。松竹で代理店営業を担当する30代前半の男性契約社員は言う。
「一部上場企業ではあるが、封建的な体制はまだ維持されている。新卒では女性の採用もあるが、中途採用で管理職になっている女性はいない。女性が管理職を目指せるかは、入社形態による」
この男性社員によると、出世できるタイプは、上司や同僚に対して、要領よく立ちまわれる人だそうだ。会社への貢献度よりも、こちらが重要だという。
女性社員たちも、同様の意見だ。事務担当の女性(26)はこう明かす。
「やりがいはまったくない。女性は、経理関係以外は男性社員の補助業務しか無く、昇進も異動もない。昇給もほとんどなし」
別の女性(29)も示し合わせたように、こう話す。
「実績が多少伴っていなくても、社内の上層部に顔をうまく売り込める人が出世する」
どうやら社内の雰囲気はおよそ進歩がないらしい。
同業他社はどうだろうか。
「300人足らず(口コミ投稿時点、2012年7月1日時点の社員数は230名)の会社なのに、他部署とのコミュニケーションがなさすぎる。数年いても、まったく話をしたことのない人さえいる」(社員数については口コミ投稿時点、2012年7月1日時点の社員数は230名)
と言うのは、日活のベテラン財務担当の男性社員(45)だ。この結果、社内に一致団結力やスピーディーさがなくなり、覇気が失われているのだという。
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映画館は賃金が安く、休日出勤が評価される厳しい職場
一方、映画館はどうだろうか。日本経済新聞は最近の紙面で「さまようシネコン」と題した連載を掲載。シネマコンプレックス(複合映画館)が転機を迎え、観客動員数が伸び悩んで劇場数の増加も頭打ちとなっている現状を伝えている。
この記事によると、映画の平均入場料は1200円だが、そこから上がる利益はほんの数パーセントしかないという。稼ぎは、館内の飲食や関連グッズの売り上げに頼っているのが現状と伝えている。
こうした現場の状況を、ワーナー・マイカルで映画館のフロアスタッフとして働いている20代前半の男性は、こう告白している。
「サービス残業は当たり前。早朝に出勤した場合も、もれなく夜中に帰宅することになる。とにかく保守的で、何をするにしても上司を通さないといけないため、一つの提案が決定するまでにかなりの時間を要します」
そして、これらに反発する人は、同僚に無視されるなどの社内イジメに遭うそうだ。
TOHOシネマズも、厳しい労働環境は同じらしい。
「劇場はほぼアルバイトスタッフでまわっていて時給の低賃金で働いている。劇場のマネージャー、副支配人、支配人の基本給は低く、残業代で稼いでいる。また、昇進も簡単ではない上に、昇給の期待は低い。劇場から本社勤務は夢のまた夢だ」
そう明かすのは、施設スタッフの20代前半の女性だ。では、給与はどのくらいか。この女性の年収は170万円だ。
社員の20代前半の男性店長(年収300万円で)は、報酬についてこう述べている。
「基本給は、一般社員に相当する劇場マネージャーだと16万円前後と非常に低い。副支配人や支配人に上がると、月給で数十万円単位で変わってくる。だが役職の空きがないため昇級は難しい」
ボーナスは年間で4~5カ月が平均値だそうだ。査定はあってないようなもので、基本は一定なのだそうだ。
「映画館は年中無休で営業をしているので、休日も関係なく仕事をするタイプの人間が評価されているように感じる」
と、この男性社員は言う。なるほど、映画業界はどこまでも旧態依然であるようだ。
*「キャリコネ」は、社員が投稿した企業に関する口コミ、年収情報、面接体験などを共有するサイトです。2012年7月末現在、45万社、19万件の口コミが登録されています。