大手総合スーパー 現場知らずの経営陣が仕掛ける「値下げ競争 秋の陣」 2012年10月3日 企業徹底研究 ツイート 大手総合スーパーによる「秋の値下げ競争」が始まった。 ダイエーは先月22日から開催した「創業祭」に合わせ食品1000品目、日用品700品目の計1700品目を一斉値下げした。 値下げ幅は最大47%で、平均で10~20%。日用品400品目は創業祭期間中の10月8日までの限定値下げだが、残りの1300品目は10月9日以降も値下げ後の価格で販売する。 今回の値下げは、イオンや西友がすでに実施している大量一斉値下げに対抗し、価格競争力を維持するのが狙いだ。 イオンは今年6月、1000品目を最大30%値下げしている。そのほかにも値ごろ感のあるPB(自主開発)商品のラインナップを拡充した。西友も今年6月に500品目の値を下げた。9月13日には、さらに700品目を追加。合計で1200品目、最大26%の値下げを行っている。 「エブリデー・ロープライス(毎日安売り)」はスーパーの基本戦略だが、大手総合スーパーが、ここまで過当な値下げ競争に突入したのは、長引く消費不況の影響が大きい。 1世帯当たりの平均所得が538万円と、過去10年間の最低を更新。電気料金の値上げと消費税増税が追い打ちをかけ、消費者の生活に対する心理的な不安が高くなり、財布の紐は固くなっている。 そのため、「その紐を少しでも緩める策は価格を下げるしかない」(スーパー関係者)は値下げ競争に突入した格好だ。 9月下旬、日本チェーンストア協会が発表した8月のスーパー業界売上高は、前年同月比1.3%減と6カ月連続で前年を下回った。年間売上高も消費税が5%に引き上げられた97年以降から15年連続でマイナスが続いている。 つまり、売り上げの減少傾向を食い止めようと行っている値下げは、まったく効果を発揮していないのだ。それでも「あっちが値下げしたからこっちもと、大手スーパーは完全な思考停止に陥っている」(事情通)。 では、値下げ以外に客を呼び込み、売り上げを伸ばす方策はないのかと言えば、実はあるのだ。キャリコネに寄せられた口コミを見ると、そのヒントがある。 ◇ 成長戦略が具体的な形で見えない まずは主要各社の社員の声を拾ってみよう。ダイエーの40代前半の男性社員は、自社の現状について、こう述べている。 「会議でも40歳の私が若い部類に入るなど高齢化が進んでいる。20~30代の人材育成と新規出店の成長戦略が具体的な形で見えないと、将来が描けない」 同社はまた、過去のリストラで優秀な人材が離れて行ったためか、社員のレベルが低下していると、30代前半の男性社員は指摘する 「男性社員には競馬や競輪、パチンコ好きな社員が多く、時事問題や経済問題についての知識は極めて乏しい。日経新聞などは読まず、スポーツ新聞のみ」 こんなレベルの社員が多いのなら、業務改善もままならないだろう。 また、イオンでは現場と経営の乖離(かいり)があるようだ。イオンリテールの30代前半の女性契約社員は、次のように話している。 「色々提案しているが、時間がないやら予算がないなどと否定的なことが多々ある。専門力が必要だと言いながら、一人三役四役を要求される」 この女性社員は教育がなおざりなので、会社に不安感を持つ若手社員が多いとも指摘している。 20代後半の女性パート社員は、こう言う。 「商品に関して『たぶん』こうだと思うと言った曖昧な答えが多い。(略)そんな従業員を30年間以上勤めさせている会社はどうなのか? と疑問に思う。お客様にとって曖昧な答えはいらない。的確な答えを望んでいるはずなのに改善しようとしない」 これではイオンから客足が遠のくのも当然と思われる。経営陣は時間のかかる業務改革には関心がなく、目先の売り上げ追求の値下げしか眼中にないようだ。 一方、9月に正社員半減の人件費削減を打ち出したイトーヨーカ堂はどうだろうか。 20代後半の男性社員は店頭の要員不足を訴えている。 「現場に十分な人員が配置されている訳でなく、場合によってはやりたくても十分にお客様に対応できない」 こんなことも来店客を減少させているのではないだろうか。 一方、40代前半の男性社員は現場と経営陣の状況について、こう話している。 「トップダウンが優先の社風のため、ボトムアップは皆無。あーしたい、こーしたいと思っても、なかなか実現できない」 ◇ スーパーに必要なのは各社の独自色 消費税引き上げを機に消費者が財布の紐を締めて以来、大手総合スーパーは「売り上げ不振→値下げ→業績悪化→売り上げ増」を図る手段として値下げを行ってきた。しかし、その結果は業績悪化だった。しかし、それに懲りず、同じことを繰り返してきた。 売り上げが伸びない要因の半分は、口コミが示しているように、スーパー経営者の「現場知らず」にあると言って良いだろう。要するに「顧客第一」の言葉と行動がかけ離れているのだ。 もう半分の要因は「金太郎あめ的な品揃え」といえる。地域ごとの消費者ニーズを無視した全国一律の品揃えが、消費者からスーパーの魅力を奪っている。また、繰り返す値下げは、「値下げ」に対する価値やインパクトを消費者から奪うことになり、自分の首を絞める結果にしかなっていないのだ。 「エブリデー・ロープライスがスーパーの基本戦略として通用する時代は終わった。値下げも販促策にはならなくなった。スーパーよりロープライスの業態が増えているから当然だ」。流通に詳しい経済アナリストは、こう言う。さらに次のように警告している。 「接客、品揃え、アフターサービス、様々な形で各社が独自性のあるビジネスモデルを再構築しなければ、スーパーは小売業態の1つに埋没してしまう」。 【その他の企業徹底研究の記事はこちら】 *「キャリコネ」は、社員が投稿した企業に関する口コミ、年収情報、面接体験などを共有するサイトです。2012年9月末現在、45万社、20万件の口コミが登録されています。
大手総合スーパー 現場知らずの経営陣が仕掛ける「値下げ競争 秋の陣」
大手総合スーパーによる「秋の値下げ競争」が始まった。
ダイエーは先月22日から開催した「創業祭」に合わせ食品1000品目、日用品700品目の計1700品目を一斉値下げした。
値下げ幅は最大47%で、平均で10~20%。日用品400品目は創業祭期間中の10月8日までの限定値下げだが、残りの1300品目は10月9日以降も値下げ後の価格で販売する。
今回の値下げは、イオンや西友がすでに実施している大量一斉値下げに対抗し、価格競争力を維持するのが狙いだ。
イオンは今年6月、1000品目を最大30%値下げしている。そのほかにも値ごろ感のあるPB(自主開発)商品のラインナップを拡充した。西友も今年6月に500品目の値を下げた。9月13日には、さらに700品目を追加。合計で1200品目、最大26%の値下げを行っている。
「エブリデー・ロープライス(毎日安売り)」はスーパーの基本戦略だが、大手総合スーパーが、ここまで過当な値下げ競争に突入したのは、長引く消費不況の影響が大きい。
1世帯当たりの平均所得が538万円と、過去10年間の最低を更新。電気料金の値上げと消費税増税が追い打ちをかけ、消費者の生活に対する心理的な不安が高くなり、財布の紐は固くなっている。
そのため、「その紐を少しでも緩める策は価格を下げるしかない」(スーパー関係者)は値下げ競争に突入した格好だ。
9月下旬、日本チェーンストア協会が発表した8月のスーパー業界売上高は、前年同月比1.3%減と6カ月連続で前年を下回った。年間売上高も消費税が5%に引き上げられた97年以降から15年連続でマイナスが続いている。
つまり、売り上げの減少傾向を食い止めようと行っている値下げは、まったく効果を発揮していないのだ。それでも「あっちが値下げしたからこっちもと、大手スーパーは完全な思考停止に陥っている」(事情通)。
では、値下げ以外に客を呼び込み、売り上げを伸ばす方策はないのかと言えば、実はあるのだ。キャリコネに寄せられた口コミを見ると、そのヒントがある。
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成長戦略が具体的な形で見えない
まずは主要各社の社員の声を拾ってみよう。ダイエーの40代前半の男性社員は、自社の現状について、こう述べている。
「会議でも40歳の私が若い部類に入るなど高齢化が進んでいる。20~30代の人材育成と新規出店の成長戦略が具体的な形で見えないと、将来が描けない」
同社はまた、過去のリストラで優秀な人材が離れて行ったためか、社員のレベルが低下していると、30代前半の男性社員は指摘する
「男性社員には競馬や競輪、パチンコ好きな社員が多く、時事問題や経済問題についての知識は極めて乏しい。日経新聞などは読まず、スポーツ新聞のみ」
こんなレベルの社員が多いのなら、業務改善もままならないだろう。
また、イオンでは現場と経営の乖離(かいり)があるようだ。イオンリテールの30代前半の女性契約社員は、次のように話している。
「色々提案しているが、時間がないやら予算がないなどと否定的なことが多々ある。専門力が必要だと言いながら、一人三役四役を要求される」
この女性社員は教育がなおざりなので、会社に不安感を持つ若手社員が多いとも指摘している。
20代後半の女性パート社員は、こう言う。
「商品に関して『たぶん』こうだと思うと言った曖昧な答えが多い。(略)そんな従業員を30年間以上勤めさせている会社はどうなのか? と疑問に思う。お客様にとって曖昧な答えはいらない。的確な答えを望んでいるはずなのに改善しようとしない」
これではイオンから客足が遠のくのも当然と思われる。経営陣は時間のかかる業務改革には関心がなく、目先の売り上げ追求の値下げしか眼中にないようだ。
一方、9月に正社員半減の人件費削減を打ち出したイトーヨーカ堂はどうだろうか。
20代後半の男性社員は店頭の要員不足を訴えている。
「現場に十分な人員が配置されている訳でなく、場合によってはやりたくても十分にお客様に対応できない」
こんなことも来店客を減少させているのではないだろうか。
一方、40代前半の男性社員は現場と経営陣の状況について、こう話している。
「トップダウンが優先の社風のため、ボトムアップは皆無。あーしたい、こーしたいと思っても、なかなか実現できない」
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スーパーに必要なのは各社の独自色
消費税引き上げを機に消費者が財布の紐を締めて以来、大手総合スーパーは「売り上げ不振→値下げ→業績悪化→売り上げ増」を図る手段として値下げを行ってきた。しかし、その結果は業績悪化だった。しかし、それに懲りず、同じことを繰り返してきた。
売り上げが伸びない要因の半分は、口コミが示しているように、スーパー経営者の「現場知らず」にあると言って良いだろう。要するに「顧客第一」の言葉と行動がかけ離れているのだ。
もう半分の要因は「金太郎あめ的な品揃え」といえる。地域ごとの消費者ニーズを無視した全国一律の品揃えが、消費者からスーパーの魅力を奪っている。また、繰り返す値下げは、「値下げ」に対する価値やインパクトを消費者から奪うことになり、自分の首を絞める結果にしかなっていないのだ。
「エブリデー・ロープライスがスーパーの基本戦略として通用する時代は終わった。値下げも販促策にはならなくなった。スーパーよりロープライスの業態が増えているから当然だ」。流通に詳しい経済アナリストは、こう言う。さらに次のように警告している。
「接客、品揃え、アフターサービス、様々な形で各社が独自性のあるビジネスモデルを再構築しなければ、スーパーは小売業態の1つに埋没してしまう」。
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