佐川、ヤマト、日通 ネット通販で成長しても旧態依然の宅配業界 2013年2月18日 企業徹底研究 ツイート 宅配事業者の新たな動きが、社会を変えようとしている。ネット通販会社との連携で取引数を伸ばしているだけではない。ネット通販の事業そのものに進出して、内側から変化を起こしている。 こうした中、日本経済新聞は「進化する宅配」と題する連載を展開。その内幕を伝えて反響を呼んだ。 例えば、世界最大のネット通販事業者、アマゾン・ドット・コム。千葉県市川市の沿岸部にあるアマゾン・ジャパンの倉庫は、東京ドーム1.3個分の床面積がある。作業員は携帯端末の指示に従い、効率的に配送品を選び出し、スピーディーに配送準備を整える。日経の記事は、こう伝えている。 「実はこの倉庫は日本通運の運営で、作業員も日通の社員だ。アマゾンの大阪府や岐阜県の物流拠点も同様だ」。 3年前に宅配事業から撤退した日本通運だが、培ってきた出荷ノウハウなどを活用し、ネット通販事業を内側から支えているのだ。 長らく「3K職場」と呼ばれてきた宅配事業者。いま、その環境に変化はあるのか。キャリコネに寄せられた大手宅配会社の社員の声から探ってみよう。 ◇ 給与が大きく伸びることは期待できない まずは佐川急便だ。最近は、同社のドライバーが「佐川男子」として、話題となり、写真集も出版されて注目を集めている。しかし、現実は、やはり大変な仕事のようだ。20代後半で契約社員の男性はこう言う。 「仕分けやドライバーはとてもきつい仕事。しかしながら、契約社員から正社員になるには、セールスドライバーしかないように感じる。ただしセールスドライバーになっても、そこは離職率がすごく高いことを考慮する必要がある」 佐川急便では、このように契約社員からのスタートするのが基本のようだ。30代後半の男性正社員は、次のように明かしている。 「社員になるにも、まずは契約社員スタートで、準社員、社員。そこから給与査定の対象になる」 そして、給与の実態について、こう述べている。 「数年前にずいぶん急に上がってからのものが大きいので、今からは大きく伸びることは期待できない。新人などには大変な時代になっている」 では、事務部門はどうなのだろうか。カスタマーサポート担当の40代前半の男性契約社員が言う。 「まだまだ男社会。今の世の中、このような社風が通用するのかはなはだ疑問です。その雰囲気を気にしない人であれば、いいのかもしれません」 ◇ 「不況のあおりで顧客が絶対的に優位な立場」と社員 次はヤマト運輸。佐川急便に比べるとややソフトなイメージもあるが、厳しさは変わらないようだ。20代後半の男性はこう話す。 「結構重い荷物が多く、荷台に積む作業がつらかった。素早く、かつ効率的に荷物を積み込まなければなりませんでしたので、瞬時に判断する能力、ある程度の体力が必要だなと感じました」 また、会社は「体育会系の体質」という。 「体育会系で積極的な人がベスト。この業界は、労働時間が長いのがネックですが、長労働時間を出来るだけ短くできる仕事のやり方をする事は、上の人間からの評価は高いと思います」 20代前半の男性社員は、こう述べている。 日本通運はどうだろうか。30代後半の男性社員は、仕事について、次のように話している。 「最近は不況のあおりを受け、顧客が絶対的に優位な立場のもと、明らかに過度の要求を求めてきても、それに身を削って対応しなければならないところが理不尽と感じる」 キャリコネに寄せられた口コミには、日経新聞が報じたような倉庫内の仕分け業務についての声がある。20代前半の派遣社員の男性はこう述べている。 「その日の仕事量によって、終了時間が安定しない。派遣会社から説明された定時は22時だが、19時とかに終了することもあり、給料を前もって想定できないのは困る」 こうしてみると、3社に共通するのは、とにかく「仕事はすべて客次第」ということが前提とされることによる独特の厳しさだ。それが、肉体面や精神面ばかりでなく、報酬にまでのしかかっているから残酷だ。
佐川、ヤマト、日通 ネット通販で成長しても旧態依然の宅配業界
宅配事業者の新たな動きが、社会を変えようとしている。ネット通販会社との連携で取引数を伸ばしているだけではない。ネット通販の事業そのものに進出して、内側から変化を起こしている。
こうした中、日本経済新聞は「進化する宅配」と題する連載を展開。その内幕を伝えて反響を呼んだ。
例えば、世界最大のネット通販事業者、アマゾン・ドット・コム。千葉県市川市の沿岸部にあるアマゾン・ジャパンの倉庫は、東京ドーム1.3個分の床面積がある。作業員は携帯端末の指示に従い、効率的に配送品を選び出し、スピーディーに配送準備を整える。日経の記事は、こう伝えている。
「実はこの倉庫は日本通運の運営で、作業員も日通の社員だ。アマゾンの大阪府や岐阜県の物流拠点も同様だ」。
3年前に宅配事業から撤退した日本通運だが、培ってきた出荷ノウハウなどを活用し、ネット通販事業を内側から支えているのだ。
長らく「3K職場」と呼ばれてきた宅配事業者。いま、その環境に変化はあるのか。キャリコネに寄せられた大手宅配会社の社員の声から探ってみよう。
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給与が大きく伸びることは期待できない
まずは佐川急便だ。最近は、同社のドライバーが「佐川男子」として、話題となり、写真集も出版されて注目を集めている。しかし、現実は、やはり大変な仕事のようだ。20代後半で契約社員の男性はこう言う。
「仕分けやドライバーはとてもきつい仕事。しかしながら、契約社員から正社員になるには、セールスドライバーしかないように感じる。ただしセールスドライバーになっても、そこは離職率がすごく高いことを考慮する必要がある」
佐川急便では、このように契約社員からのスタートするのが基本のようだ。30代後半の男性正社員は、次のように明かしている。
「社員になるにも、まずは契約社員スタートで、準社員、社員。そこから給与査定の対象になる」
そして、給与の実態について、こう述べている。
「数年前にずいぶん急に上がってからのものが大きいので、今からは大きく伸びることは期待できない。新人などには大変な時代になっている」
では、事務部門はどうなのだろうか。カスタマーサポート担当の40代前半の男性契約社員が言う。
「まだまだ男社会。今の世の中、このような社風が通用するのかはなはだ疑問です。その雰囲気を気にしない人であれば、いいのかもしれません」
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「不況のあおりで顧客が絶対的に優位な立場」と社員
次はヤマト運輸。佐川急便に比べるとややソフトなイメージもあるが、厳しさは変わらないようだ。20代後半の男性はこう話す。
「結構重い荷物が多く、荷台に積む作業がつらかった。素早く、かつ効率的に荷物を積み込まなければなりませんでしたので、瞬時に判断する能力、ある程度の体力が必要だなと感じました」
また、会社は「体育会系の体質」という。
「体育会系で積極的な人がベスト。この業界は、労働時間が長いのがネックですが、長労働時間を出来るだけ短くできる仕事のやり方をする事は、上の人間からの評価は高いと思います」
20代前半の男性社員は、こう述べている。
日本通運はどうだろうか。30代後半の男性社員は、仕事について、次のように話している。
「最近は不況のあおりを受け、顧客が絶対的に優位な立場のもと、明らかに過度の要求を求めてきても、それに身を削って対応しなければならないところが理不尽と感じる」
キャリコネに寄せられた口コミには、日経新聞が報じたような倉庫内の仕分け業務についての声がある。20代前半の派遣社員の男性はこう述べている。
「その日の仕事量によって、終了時間が安定しない。派遣会社から説明された定時は22時だが、19時とかに終了することもあり、給料を前もって想定できないのは困る」
こうしてみると、3社に共通するのは、とにかく「仕事はすべて客次第」ということが前提とされることによる独特の厳しさだ。それが、肉体面や精神面ばかりでなく、報酬にまでのしかかっているから残酷だ。