• 東京五輪決定で成長が期待されるスポーツクラブ 有望なのはどこ?

    東京五輪の決定を受け、不動産や建設と並んでスポーツ関連企業の成長が期待されている。株価も年初来の最高値を更新したり、それに近い値をつける会社が現れている。

    スポーツ選手の活躍を見て、自分もやってみようと思う人が増えるだろう。中には7年後を見越して「あわよくば自分の子供を代表に」と考える親もいるかもしれない。「スポーツ庁」の創設も、スポーツ界全体の需要を刺激するはずだ。

     団塊・シニア層に「若年層」が加われば安泰か

    健康意識の高まりに伴い、スポーツクラブ(フィットネスクラブ)業界は順調に業績を伸ばしてきた。経済産業省の産業活動分析によると、平成17(2005)年を100としたときの利用者数は平成24(2012)年で約140。ゴルフ練習場などが伸び悩む中、一貫して右肩上がりを維持している。

    ただし課題もあった。フィットネスクラブの利用者1人あたりの売上高は、2005年には1600円近くだったが、2012年には1300円強まで落ち込んでいる。会員数の年齢別構成比も、60歳以上の比率が上昇している。

    経産省では、シニア層のスポーツ志向や健康志向の高まりがフィットネスクラブを支えている、と結論づけている。しかし、いくら団塊の世代にヒマとカネがあると言っても、中長期的に見ればジリ貧になることは明らかだった。

    そこに突如吹いた「五輪」という神風。これで子供を含む若年層の会員が増えていけば、スポーツクラブ業界の将来にとって非常に明るい材料となるに違いない。

    日本のフィットネスクラブの売上高ランキングは、1位がコナミスポーツ&ライフ(売上高799億円)、2位がセントラルスポーツ(同469億円)、3位がルネサンス(同386億円)である。

    これらの日本企業は世界的にも健闘していて、「フィットネスオンライン」に掲載された『クラブビジネスインターナショナル』2011年9月号のデータによれば、コナミスポーツ&ライフは売上高で世界一。セントラルは6位、ルネサンスも8位に食い込んでいる。

    経営コンサルタントの瀧本哲史氏は「業界地図2014年」(成美堂出版)の中で、スポーツクラブ業界では業界3位のルネサンスと、新興勢力のコシダカHDと東祥の名前をあげて注目している。これらの会社には「新しいカテゴリ」や「独自のビジネスモデル」があるというのだ。

    ルネサンスは、印刷インキの世界トップメーカーDIC(旧大日本インキ化学)の社内ベンチャーを母体とする関連会社。ZAKZAKに掲載された創業社長で現会長の斎藤敏一会長のインタビューを読むと、そもそもの起業のきっかけは非常にユニークだったことが分かる。

     「男性」「アスリート」を対象としないユニークな新興勢力も

    斎藤氏が入社直後にスイスへ留学中、イタリアのルネサンス文化に触れたことで、帰国後に「日本の企業社会の前近代性」に疑問を感じた。そして社内に立ち上げた余暇サークルを健康スポーツ事業に結びつけ、現在の「ルネサンス」を創業したという。

    ベトナムに合弁企業を発足させて東南アジア進出も図っているというから、海外でグローバルな仕事をしたい人にも魅力的な会社ではないだろうか。

    コシダカHDはカラオケが本業だが、テナント活用やフランチャイズのノウハウを活かして「カーブス」という女性向けフィットネス事業を開始した。1回わずか30分、予約不要でプログラムを受けられ、スタッフも女性だけだ。

    もともと建設会社だった東祥は、建設・管理のノウハウを活かして「ホリデイスポーツクラブ」を開業。「大人の初心者のためのスポーツクラブ」をうたっており、アスリート向けのマンツーマンプログラムを提供していないのが特徴だ。

    これらユニークな特色を売り物にする新興勢力に対し、大手企業には伸び悩みも見られる。コナミスポーツ&ライフの2012年度売上は799億円と、ピーク時(2008年度)の900億円を下回る。業界2番手のセントラルスポーツも、2012年度の売上は469億円でピーク時(2005年度)の524億円には及ばない。

    もちろんこのような大手にも「五輪特需」はもたらされるし、規模のメリットを活かせる場面もあるだろう。しかし、新規開拓対象の若年者層の数は有限だ。業界内の顧客獲得競争は一層激化するに違いない。

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