前園だけじゃない! タクシー運転手がおびえる「クレーマー」「事故の恐怖」 2013年10月20日 企業徹底研究 ツイート 2013年10月13日、元サッカー日本代表MFの前園真聖さんがタクシー運転手に暴行を加えたとして現行犯逮捕された。15日には女優・松雪泰子さんの弟で歌手の松雪陽さんが、16日には集英社「週刊ヤングジャンプ」嶋智之編集長も、タクシー運転手への暴行や料金不払いの疑いで逮捕されている。 前園さんの事件に関しては、タクシー会社側が謝罪を受け入れるという“大人の対応”を見せたことで一件落着となった。しかし、こうしたトラブルは何も特殊な事件ではない。 お客は暴力団員、血だらけ外国人、酔っ払いクレーマー 実はタクシー運転手は、一般の人が想像する以上に危険と隣り合わせの職業なのだ。都内のタクシー会社で運転手を務める40代男性はこう語る。 「業務中は常に1人で、深夜勤務も当たり前。ひと気のないエリアを走ることもあるので、不安はいっぱいですね。予約先のお客さんのもとへ向かったら明らかに暴力団員だったこともありますし、殴られて顔が血だらけになったアジア系外国人を繁華街で拾ったこともあります」 たとえ“ヤバそうな”お客であっても、道路運送法では運転手に危害がおよぶことが明確でない限り乗車拒否することはできない。そもそも毎日の売上のため、滅多なことでは乗車拒否できない事情もあるという。 また、ごく普通の人に見えても、酔ったお客を相手にするときは注意が必要だ。 「『同じ距離なのに以前より高くなっている!』なんて言われて、少ない料金のまま逃げられたことがあります。こういう場合の差額は、もちろん運転手の自腹。別のときには、お客に『もっと急げ!』を怒鳴られ、運転席のシートを後ろから蹴られたこともありました」 “お客様は神様”とは言うものの、さすがにこれは横暴だ。車内という人目につきにくい環境のため、一般人でも酔った勢いで威張りちらしてしまうのかもしれない。 さらに、その場では何も言われなくても、「会社に戻ったらクレームのメールが届いていた」ということも少なくないという。 (最新記事はこちら) 深夜まで続く長時間労働 交通事故率は「10倍以上」 疲れた体のまま、夜遅くまで長時間運転するという仕事そのものも不安のタネだ。キャリコネの口コミからは、事故に対する懸念が読み取れる。 「長い時間拘束される仕事で、危険に満ちている。事故のほとんどがドライバーの責任となる可能性が高く、軽い人身事故でも起こすと1発で免停。一定期間、仕事ができなかったりすることもあり、いつも不安を抱えている」(東都自動車、50代後半・男性) 実際、統計から見てもタクシーは一般車両よりも事故率が高い。 国土交通省「自動車運送事業に係る交通事故要因分析検討会報告書(2010年)」によれば、二輪車を除く自動車1万台あたりの事故件数は約82件だが、タクシーおよびハイヤーに限ると事故件数は1万台あたり約896件にまで跳ね上がる。 つまり、タクシーは一般車両の10倍以上も交通事故を起こしているのだ。 月間の労働時間についても、全職種平均が約180時間なのに対し、タクシー運転手は約197時間と17時間も長い(厚生労働省・賃金構造基本統計調査/2012年)。長時間の運転を続けることが、高い事故率につながっている可能性は高いだろう。 今秋の臨時国会からは、タクシーの台数制限を義務づける「タクシーサービス向上法案」の審議が始まる。タクシーの台数を抑制し、乗客の奪い合いが起きないようにすることを目指したものだが、果たして、タクシー運転手の労働環境は改善されるのだろうか。
前園だけじゃない! タクシー運転手がおびえる「クレーマー」「事故の恐怖」
2013年10月13日、元サッカー日本代表MFの前園真聖さんがタクシー運転手に暴行を加えたとして現行犯逮捕された。15日には女優・松雪泰子さんの弟で歌手の松雪陽さんが、16日には集英社「週刊ヤングジャンプ」嶋智之編集長も、タクシー運転手への暴行や料金不払いの疑いで逮捕されている。
前園さんの事件に関しては、タクシー会社側が謝罪を受け入れるという“大人の対応”を見せたことで一件落着となった。しかし、こうしたトラブルは何も特殊な事件ではない。
お客は暴力団員、血だらけ外国人、酔っ払いクレーマー
実はタクシー運転手は、一般の人が想像する以上に危険と隣り合わせの職業なのだ。都内のタクシー会社で運転手を務める40代男性はこう語る。
たとえ“ヤバそうな”お客であっても、道路運送法では運転手に危害がおよぶことが明確でない限り乗車拒否することはできない。そもそも毎日の売上のため、滅多なことでは乗車拒否できない事情もあるという。
また、ごく普通の人に見えても、酔ったお客を相手にするときは注意が必要だ。
“お客様は神様”とは言うものの、さすがにこれは横暴だ。車内という人目につきにくい環境のため、一般人でも酔った勢いで威張りちらしてしまうのかもしれない。
さらに、その場では何も言われなくても、「会社に戻ったらクレームのメールが届いていた」ということも少なくないという。
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深夜まで続く長時間労働 交通事故率は「10倍以上」
疲れた体のまま、夜遅くまで長時間運転するという仕事そのものも不安のタネだ。キャリコネの口コミからは、事故に対する懸念が読み取れる。
実際、統計から見てもタクシーは一般車両よりも事故率が高い。
国土交通省「自動車運送事業に係る交通事故要因分析検討会報告書(2010年)」によれば、二輪車を除く自動車1万台あたりの事故件数は約82件だが、タクシーおよびハイヤーに限ると事故件数は1万台あたり約896件にまで跳ね上がる。
つまり、タクシーは一般車両の10倍以上も交通事故を起こしているのだ。
月間の労働時間についても、全職種平均が約180時間なのに対し、タクシー運転手は約197時間と17時間も長い(厚生労働省・賃金構造基本統計調査/2012年)。長時間の運転を続けることが、高い事故率につながっている可能性は高いだろう。
今秋の臨時国会からは、タクシーの台数制限を義務づける「タクシーサービス向上法案」の審議が始まる。タクシーの台数を抑制し、乗客の奪い合いが起きないようにすることを目指したものだが、果たして、タクシー運転手の労働環境は改善されるのだろうか。