電通 英イージス買収で本格的な世界進出へ 社員は「新しい業種への転換を検討したほうが」 2013年4月5日 今日の口コミ&年収 ツイート 電通は、昨年7月から進めていた英イージス社の買収を3月26日に完了し、同日付けで電通の海外本社「電通イージス・ネットワーク」(ロンドン)に改組した。海外本社の取締役会議長には、電通のティム・アンドレー常務執行役員が就任する。買収額は約4090億円。 今回の買収により、電通の顧客は国内中心の約6000社から世界110カ国・地域の約1万1000社へ一挙に拡大する。 電通は、今回の買収の狙いを「事業領域やサービスにおける補完関係に加え、地理的な広がり、海外主要市場やデジタル分野における規模の拡大などにより成長を加速してゆくことにある」と説明している。 電通が書いたこのシナリオは成功するだろうか。キャリコネの口コミから手がかりを探ってみよう。 社内クリエイティブ層は枯渇か 「上司がクリエイティブすぎて珠に何を言っているかわからない。この会社の上司はいつも横文字を良く使うので珠によく言っていることがわかりません。ただ、よくよく説明を聞くとわかってくるのですが、そのじぶんがわからない時の態度といったら」(代理店営業、30代、男性社員、年収751万円) というくらい、クリエイティブな電通だが、 マーケティング担当の男性社員(30代前半)は「広告ビジネスオペレーションの単純さと、その単純さの割には余りにも高い粗利率に依存し、『考える』ことを現場レベルから軽視した方針が続いている。広告の最大の価値源泉であるクリエイティブ人材の流出について、効果的な手が後手に回り、メディア部門に全新卒を回し、あえて価値源泉となるクリエイティブ人材の育成を遅らせ離職率を高める逆効果な人事施策が、企業としての競争力を殺いでいく」と嘆き、 別の営業マネージャーの男性社員(40代前半、年収1,300万円)も「博報堂からの転職者を入れたり外部クリエーターの受け入れによって、遜色ない布陣をひいている」と語るなど、実際は、クリティテイブな人材の確保と引き留めに苦労しているのが実情だ。 【その他の口コミ&年収記事はこちら】 買収に対する市場の声は そして、肝心の買収による効果はというと、市場の反応は、電通のシナリオに反して厳しい。 「直近の株価に45%のプレミアム乗せた買収額は高すぎる」との声が投資家からすでに上がっており、また「実質無借金だった財務体質が、巨額借り入れにより悪化する一方、買収によるシナジー効果は不明」と多くの証券アナリストが指摘し、 国際M&Aの事情通も「電通の世界ランキングは5位だが、8位のイージスを足してもやはり5位。つまり、海外市場では電通が胸算用しているほどの買収効果はないということ。 国内でガリバーといっても、海外ではWPPなど『メジャー4』の陰に隠れて存在感は薄い。国内広告で電通を使っている日本企業の大半も、海外広告では電通を相手にしていない」といい、買収の効果に疑問を呈す。 加えてこの事情通は「イージスの顧客が電通を嫌って他社に乗り換える可能性も高い。多面的に検討すると、どうひいき目に見てもリスクとリターンが見合わない」とも話している。 いっぽう、社員のほうも、「博報堂はHDYグループとして、大広、読広とのグループ化をはかったため、合併当初はその効果でやられていたが、最近では彼らのシナジーも空回り。競合コンペでの勝率もウチが上昇している」 (前出・営業マネージャーの男性社員)というなど、合併による規模の追求を社員が評価しているかどうかは疑問だ。 社員の関心は、従来型ビジネスモデルからの脱却 それでは、これからの電通はどこへ向かえばいいのか。 「広告業界は将来性が厳しい。マス広告のコミッションで稼ぐ今のビジネスモデルを早急に変える必要がある。でも、どうやって?マス広告、特にTVは許認可制の規制に守られ、広告販売価格がある一定の水準をキープしているが、それ以外はそのような参入障壁がない。デジタルメディアに至っては、それぞれが小粒なので、労力の割に収益性がない。コミッションビジネスからの脱却と、それ以外での新規ビジネスの確立がテーマ」 (マーケティングの男性社員、20代後半、年収1250万円)といった声や 「マスメディアが崩壊する中で、既存の収益構造ではどうにもやっていけない時代が近いうちにやってくると思う。収益の半分ほどをTV関連で占めるこの企業にとって、今後どのようにしてその危機を乗り越えていくかが見どころである。とはいえ給料がやすくなってもやりがいのある仕事であることには変わりないと思う」 ( ルートセールスの男性社員、25歳、年収525万円)という声からすると、 社員自身も、従来の広告代理店によるビジネスモデルに、終焉の足音が近づいていることを感じ取っているようだ。 終焉の足音は、何もビジネスモデルに限らない。 アカウントエグゼクティブの男性契約社員(35歳、年収600万円)は「広告業界全体が低調気味で頭打ち感が出てきており、新しい分野への業種転換などを検討したほうがよい時期に来ている。人員整理も視野に入れた企業運営が必要。何もしない管理職が多く、人件費が経営を圧迫している。今後は残業代についても見直しが入り、残業代とボーナスで高給を維持してきた時代も終焉を迎えそう」と、 新業種への転換の必要性に加え、大手企業の中でも突出していた高待遇が終わりを迎えつつあることを示唆する。 とはいえ、今後の待遇に対する不安については、 「給料がやすくなってもやりがいのある仕事であることには変わりない」(前出ルートセールスの男性社員)といった声や、 「(報酬に関する)査定の妥当性はやや曖昧。もっとも、自分のやりたい事ができれば良いと言う人も多いので、気にしない人も多い」 (代理店営業の男性社員、24才、年収648万円)という声など、 電通社員としてのやりがいを認める声も多くあり、「世界の電通」にとっても心強いことだろう。
電通 英イージス買収で本格的な世界進出へ 社員は「新しい業種への転換を検討したほうが」
電通は、昨年7月から進めていた英イージス社の買収を3月26日に完了し、同日付けで電通の海外本社「電通イージス・ネットワーク」(ロンドン)に改組した。海外本社の取締役会議長には、電通のティム・アンドレー常務執行役員が就任する。買収額は約4090億円。
今回の買収により、電通の顧客は国内中心の約6000社から世界110カ国・地域の約1万1000社へ一挙に拡大する。
電通は、今回の買収の狙いを「事業領域やサービスにおける補完関係に加え、地理的な広がり、海外主要市場やデジタル分野における規模の拡大などにより成長を加速してゆくことにある」と説明している。
電通が書いたこのシナリオは成功するだろうか。キャリコネの口コミから手がかりを探ってみよう。
社内クリエイティブ層は枯渇か
「上司がクリエイティブすぎて珠に何を言っているかわからない。この会社の上司はいつも横文字を良く使うので珠によく言っていることがわかりません。ただ、よくよく説明を聞くとわかってくるのですが、そのじぶんがわからない時の態度といったら」(代理店営業、30代、男性社員、年収751万円)
というくらい、クリエイティブな電通だが、
マーケティング担当の男性社員(30代前半)は「広告ビジネスオペレーションの単純さと、その単純さの割には余りにも高い粗利率に依存し、『考える』ことを現場レベルから軽視した方針が続いている。広告の最大の価値源泉であるクリエイティブ人材の流出について、効果的な手が後手に回り、メディア部門に全新卒を回し、あえて価値源泉となるクリエイティブ人材の育成を遅らせ離職率を高める逆効果な人事施策が、企業としての競争力を殺いでいく」と嘆き、
別の営業マネージャーの男性社員(40代前半、年収1,300万円)も「博報堂からの転職者を入れたり外部クリエーターの受け入れによって、遜色ない布陣をひいている」と語るなど、実際は、クリティテイブな人材の確保と引き留めに苦労しているのが実情だ。
【その他の口コミ&年収記事はこちら】
買収に対する市場の声は
そして、肝心の買収による効果はというと、市場の反応は、電通のシナリオに反して厳しい。
「直近の株価に45%のプレミアム乗せた買収額は高すぎる」との声が投資家からすでに上がっており、また「実質無借金だった財務体質が、巨額借り入れにより悪化する一方、買収によるシナジー効果は不明」と多くの証券アナリストが指摘し、
国際M&Aの事情通も「電通の世界ランキングは5位だが、8位のイージスを足してもやはり5位。つまり、海外市場では電通が胸算用しているほどの買収効果はないということ。 国内でガリバーといっても、海外ではWPPなど『メジャー4』の陰に隠れて存在感は薄い。国内広告で電通を使っている日本企業の大半も、海外広告では電通を相手にしていない」といい、買収の効果に疑問を呈す。
加えてこの事情通は「イージスの顧客が電通を嫌って他社に乗り換える可能性も高い。多面的に検討すると、どうひいき目に見てもリスクとリターンが見合わない」とも話している。
いっぽう、社員のほうも、「博報堂はHDYグループとして、大広、読広とのグループ化をはかったため、合併当初はその効果でやられていたが、最近では彼らのシナジーも空回り。競合コンペでの勝率もウチが上昇している」 (前出・営業マネージャーの男性社員)というなど、合併による規模の追求を社員が評価しているかどうかは疑問だ。
社員の関心は、従来型ビジネスモデルからの脱却
それでは、これからの電通はどこへ向かえばいいのか。
「広告業界は将来性が厳しい。マス広告のコミッションで稼ぐ今のビジネスモデルを早急に変える必要がある。でも、どうやって?マス広告、特にTVは許認可制の規制に守られ、広告販売価格がある一定の水準をキープしているが、それ以外はそのような参入障壁がない。デジタルメディアに至っては、それぞれが小粒なので、労力の割に収益性がない。コミッションビジネスからの脱却と、それ以外での新規ビジネスの確立がテーマ」 (マーケティングの男性社員、20代後半、年収1250万円)といった声や
「マスメディアが崩壊する中で、既存の収益構造ではどうにもやっていけない時代が近いうちにやってくると思う。収益の半分ほどをTV関連で占めるこの企業にとって、今後どのようにしてその危機を乗り越えていくかが見どころである。とはいえ給料がやすくなってもやりがいのある仕事であることには変わりないと思う」 ( ルートセールスの男性社員、25歳、年収525万円)という声からすると、
社員自身も、従来の広告代理店によるビジネスモデルに、終焉の足音が近づいていることを感じ取っているようだ。
終焉の足音は、何もビジネスモデルに限らない。
アカウントエグゼクティブの男性契約社員(35歳、年収600万円)は「広告業界全体が低調気味で頭打ち感が出てきており、新しい分野への業種転換などを検討したほうがよい時期に来ている。人員整理も視野に入れた企業運営が必要。何もしない管理職が多く、人件費が経営を圧迫している。今後は残業代についても見直しが入り、残業代とボーナスで高給を維持してきた時代も終焉を迎えそう」と、
新業種への転換の必要性に加え、大手企業の中でも突出していた高待遇が終わりを迎えつつあることを示唆する。
とはいえ、今後の待遇に対する不安については、
「給料がやすくなってもやりがいのある仕事であることには変わりない」(前出ルートセールスの男性社員)といった声や、
「(報酬に関する)査定の妥当性はやや曖昧。もっとも、自分のやりたい事ができれば良いと言う人も多いので、気にしない人も多い」 (代理店営業の男性社員、24才、年収648万円)という声など、
電通社員としてのやりがいを認める声も多くあり、「世界の電通」にとっても心強いことだろう。