• 悪評高き「ハロワの虚偽求人」にメス 厚生労働省が苦情ホットライン開設

    厚生労働省は、求人票の記載内容について求職者から申し出や苦情が、2012年度に7783件あったと発表した。これを受けて、3月から「ハローワーク求人ホットライン」を開設し、防止策の検討や実施に活用する。

    ホットラインのウェブサイトに示された苦情の例は、以下のようなものだ。

    「求人票より低い賃金を提示された」
    「正社員と聞いて応募したのに、非正規雇用の形態だった」
    「『あり』となっていた雇用保険、社会保険に加入していない」

    形式重視で「実態を確認しない」問題も

    ネットでは、以前からハロワに掲載されている求人情報が劣悪であることが指摘されていた。ある女性は、ハロワから紹介された建設会社の事務職に応募したところ、面接で「実際に働く会社は関連会社」といわれ、事業内容を調べるとラブホテルだったという。

    「給与20万円から」の求人に応募したが、入社直後はアルバイト契約を求められ、1か月後に正社員になった後も給与は14万円だった、というような例も、求職者の間では「よくある話」とされているようだ。

    ハロワに無料で掲載されている求人情報の多くは、中小・零細企業に関するものだ。求人広告に費用をかけられないほど経営力に乏しく、経営者の法的知識も不足しがちな会社も少なくない。

    募集条件を正直に掲載しても人が集まらないため、虚偽の条件で魅力的に見せているのだろう。もちろん、職業安定法は、求人票は求職者に誤解を与えないよう「的確な表示に努めなければならない」と規定しており、罰則もある。

    ではなぜ、ここまで虚偽の求人票が放置されているのか。ハロワに求人を出した経験のある会社経営者によると、ハロワは書類の形式が整っていれば比較的簡単に受理してしまうらしい。

    違法な記述があれば修正が求められるが、会社の実態を厳しく確認されることもない。この経営者は、ハロワ側にも求人件数の目標があるので「甘い基準」で受理することもあるのではないか、と推測を語った。もしもこんなことがあるようなら、必死で仕事を探している求職者が救われない。

    「雇用契約書」の条件を確認して自衛を

    虚偽の求人広告が取り締まりにくい理由は、もうひとつある。それは「求人広告」と「実際の労働契約」は、必ずしも一致しなくてもよいからだ。社会保険労務士の山際昌司氏は、カラクリをこう説明する。

    「求人票は、あくまで『こういうふうな仕事の求人を募集しています』という予定の内容にすぎません。必ずしも、この条件で契約を結ぶ約束をしている、というわけではないのです」

    それでは求職者は、どのように悪徳な企業から身を守ればよいのだろうか。

    「まずは雇用通知書の内容をきちんと確認することです。求人票と違うところがあったら、その場で質問しましょう。これで怪訝な顔をされるなら、どこかやましいところがある会社と考えてよいと思います」

    契約をしてしまえば、求人票に何が書いてあっても、契約書の労働条件で合意したことになってしまう。書類を確認する余地を与えず、「いますぐ判をついて提出して」と求職者側に即断を迫る場合も、怪しいと疑ったほうがいい。

    さらに労働契約書の条件を守らない場合には、「労働者は、即時に労働契約を解除することができる」と労働基準法にも定められている。約束が守られない場合には、退職の2週間前までに申し出る必要はないのだ。

    そのうえで、社労士や弁護士などの無料相談を利用し、第三者に解決を図ってもらうという手もある。山際氏によると「個別労働紛争のあっせん」という方法であれば、裁判ほどコストも時間もかけずに解決金の請求などができるという。

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