休みが取れない女性店長が、店の中でつい… 居酒屋チェーン「Wの悲劇」 2014年3月27日 元社員が語る「外食産業」の舞台裏 ツイート 外食チェーンで働いていると、何かとつらいことがあります。お客さまから厳しいご意見をいただくと精神的ストレスが募るし、体力を使う仕事なので疲労の蓄積もあります。 それでも人手が十分にいるわけでもなく、毎日お店を開けるためには休みを取ることができません。そこでお客さまが少ない時間帯に店の隅で休憩することもあるのですが、タイミングが悪いと大きな悲劇が起こってしまいます。(ライター:ナイン) 女性店長に疲れのあと。「全然、人が足りなくて」 多くの外食チェーンには「ヘルプ」という制度があります。新規オープンや従業員数の少ない店舗に、別の店舗から派遣されて手伝いに行くことです。社員である私は、よくヘルプに行かされました。 ある日、私がヘルプに向かうと、その店の店長が「今日はありがとね。遠いところわざわざ」と笑顔で迎えてくれました。30歳前後の女性で、社歴は6年ほどの先輩です。 女店長は、「ウチの店大変なのよー。全然、人が足りなくて…」と愚痴をこぼします。確かに表情には、溜まった疲れのあとが…。しかし、これは結構お決まりのあいさつのようなもので、たいていの外食チェーンは人手不足なのです。 この店は以前からよくヘルプで行っていたので、アルバイトの人たちとも顔見知りです。当然マニュアルはありますが、店によって内装も違うし、客層も違うため、店独自のルールがあったりします。 初めて行く店舗など人間関係のない中で仕事をするのは大変なことも多いのですが、慣れた店だと負担は軽くなります。この日のお店は、本当に落ち着いていました。お客さまの入店も少なく、静かな営業でした。そう、あんなことが起こるまでは…。 「おう、どうだい。今日の営業は」 エリアを担当する部長が、急に店を訪ねてきたのです。部長や課長が店に来ることは珍しく、アルバイトは部長と初対面なこともあります。そんなとき、私のような顔見知りの社員は、さりげなく探りを入れる係になります。 アルバイトがようやく発見した場所は 「部長、今日は近くで何か予定とかあったんですか?」 「近くの店に行く予定があって、その帰りだよ。ところで、店長は?」 あれっ、さっきまで話してたんですけど。そういえば、先ほどから女性店長の姿が見えません。アルバイトに聞いても行方がわからず、部長も「更衣室にいないぞ」といいます。 しばらく店内を捜索しましたが、見当たらないまま1時間が経過。店の営業が落ち着いてきたので再び捜索したところ、アルバイトがようやく店長を発見しました。 女性店長は、なんと女子トイレの個室にずっとこもっていたというのです。「なんでそんなところに」というみんなの疑問をよそに、私は重要なことを思い出しました。そういえば今日、部長が来てるんだった! しかし、時すでに遅し。女性店長は部長につかまり、厳しい追及を受けていました。後々わかったのですが、休日もなかなか取れずに連勤中で、トイレの個室でグッスリ寝ていたのだそうです。よほど疲れがたまっていたんですね。 「それにしても、営業中のトイレで寝るなんて。しかも、よりによって部長が来ている日に…」 厳しい部長が来たので一時的にトイレに逃げ込んだつもりが、うっかり寝てしまったのかもしれません。私は、女性店長の忙しさと運の悪さに同情してしまいました。しばらくしてその店長が、別の店舗に飛ばされてしまったことは言うまでもありません。 あわせてよみたい:「ワタミ労働」で得られたこともある 【プロフィール】ナイン北海道在住の20代後半の男性。大学卒業後、居酒屋チェーンWを運営する会社に正社員として入社。都内店舗のスタッフや副店長として約4年間勤務した後、「もう少し発展性のある仕事がしたい」と退社。現在求職中。現場を知る立場から、外食産業を頭ごなしにブラックと批判する声には「違和感がある」という。Twitter/Facebook/ブログ
休みが取れない女性店長が、店の中でつい… 居酒屋チェーン「Wの悲劇」
外食チェーンで働いていると、何かとつらいことがあります。お客さまから厳しいご意見をいただくと精神的ストレスが募るし、体力を使う仕事なので疲労の蓄積もあります。
それでも人手が十分にいるわけでもなく、毎日お店を開けるためには休みを取ることができません。そこでお客さまが少ない時間帯に店の隅で休憩することもあるのですが、タイミングが悪いと大きな悲劇が起こってしまいます。(ライター:ナイン)
女性店長に疲れのあと。「全然、人が足りなくて」
多くの外食チェーンには「ヘルプ」という制度があります。新規オープンや従業員数の少ない店舗に、別の店舗から派遣されて手伝いに行くことです。社員である私は、よくヘルプに行かされました。
ある日、私がヘルプに向かうと、その店の店長が「今日はありがとね。遠いところわざわざ」と笑顔で迎えてくれました。30歳前後の女性で、社歴は6年ほどの先輩です。
女店長は、「ウチの店大変なのよー。全然、人が足りなくて…」と愚痴をこぼします。確かに表情には、溜まった疲れのあとが…。しかし、これは結構お決まりのあいさつのようなもので、たいていの外食チェーンは人手不足なのです。
この店は以前からよくヘルプで行っていたので、アルバイトの人たちとも顔見知りです。当然マニュアルはありますが、店によって内装も違うし、客層も違うため、店独自のルールがあったりします。
初めて行く店舗など人間関係のない中で仕事をするのは大変なことも多いのですが、慣れた店だと負担は軽くなります。この日のお店は、本当に落ち着いていました。お客さまの入店も少なく、静かな営業でした。そう、あんなことが起こるまでは…。
エリアを担当する部長が、急に店を訪ねてきたのです。部長や課長が店に来ることは珍しく、アルバイトは部長と初対面なこともあります。そんなとき、私のような顔見知りの社員は、さりげなく探りを入れる係になります。
アルバイトがようやく発見した場所は
あれっ、さっきまで話してたんですけど。そういえば、先ほどから女性店長の姿が見えません。アルバイトに聞いても行方がわからず、部長も「更衣室にいないぞ」といいます。
しばらく店内を捜索しましたが、見当たらないまま1時間が経過。店の営業が落ち着いてきたので再び捜索したところ、アルバイトがようやく店長を発見しました。
女性店長は、なんと女子トイレの個室にずっとこもっていたというのです。「なんでそんなところに」というみんなの疑問をよそに、私は重要なことを思い出しました。そういえば今日、部長が来てるんだった!
しかし、時すでに遅し。女性店長は部長につかまり、厳しい追及を受けていました。後々わかったのですが、休日もなかなか取れずに連勤中で、トイレの個室でグッスリ寝ていたのだそうです。よほど疲れがたまっていたんですね。
厳しい部長が来たので一時的にトイレに逃げ込んだつもりが、うっかり寝てしまったのかもしれません。私は、女性店長の忙しさと運の悪さに同情してしまいました。しばらくしてその店長が、別の店舗に飛ばされてしまったことは言うまでもありません。
あわせてよみたい:「ワタミ労働」で得られたこともある
【プロフィール】ナイン
北海道在住の20代後半の男性。大学卒業後、居酒屋チェーンWを運営する会社に正社員として入社。都内店舗のスタッフや副店長として約4年間勤務した後、「もう少し発展性のある仕事がしたい」と退社。現在求職中。現場を知る立場から、外食産業を頭ごなしにブラックと批判する声には「違和感がある」という。Twitter/Facebook/ブログ