• ワタミの新入社員は「この会社はブラックじゃない」と信じているわけではないと思う理由

    ワタミの桑原豊社長のインタビューが話題となっているようです。彼は自社を「ブラックだなんて全然思っていない、過去も今も、将来も」と胸を張り、風評に対抗するために「実態を変えるだけではなく、実態を社会に示していくという」と答えたそうです。

    ワタミ創業者の渡邉美樹氏も、今年4月8日にフェイスブックで「一部の指摘が『正論』かつ『事実』であれば、誰ひとり入社する人はいないはずです」と書き込み、

    「今年の新入社員はそう言った面で『自分の頭で考えられる』面々です」

    と社員たちを持ち上げていました。これにはワタミ社員のフォロワーから「ワタミは絶対正義です」という熱いコメントが寄せられていました。(ライター:ナイン)

    意外と多い「ブラックを承知で入社」

    今年の新入社員たちの心のうちは、本人しか分かりません。しかし、かつて同じ立場でワタミに入社した私には、彼らの気持ちが何となく分かる部分もあります。

    これだけの批判の中、ワタミに入社するのはどんな人たちなのか。私は3種類くらいに分けられると思います。彼らは必ずしも、ワタミに対するブラック企業の噂が「正論でない」「事実ではない」と強く信じて入社したわけではないでしょう。

    1つ目は、ネットをあまり使わずワタミの実態や悪評を知らない人です。いわゆる「情報弱者」と言われる人たちで、「自分の頭」で考えてワタミに入社したわけではありません。

    彼らは入社後に会社の実態を知るわけですが、批判精神の旺盛な人は数日で辞めますし、そうでない人は何となく居続けることになります。こういう人はアルバイトにもたまに見られますが、最近は話題が大きくなっているので、かなり減っていると思います。

    2つ目は、批判があるとは承知しつつも、自分のやりたいことを試しに入社する人です。私が入社した2000年代の終わりにも、「ブラック企業」という言葉こそなかったものの「従業員の使い捨て」「労働環境が悪い」など外食企業への批判はありました。

    しかし私は「自分の店を持って働くのがカッコイイ」といった学生気分の憧れがあり、その勉強と考えて入社しました。批判の声を気にしなかったのは、「入ってみなければわからない」という部分は、どの会社にもあると考えていたからです。

    他の同期たちも同じような考えで、「将来、農業をやりたい」「商品開発に異動したい」などといった目標をもっていました。とはいえ、入ってみると噂に違わぬブラック環境に耐えかね、辞める人が続出。私も自分の店を持つ夢を実現するには至っていません。

    就職氷河期で「そこしか行き場がなかった」人もいる

    3つ目は、どこにも就職先がなくてワタミにすがるしかなかった人です。特に就職氷河期には、大卒でも正社員の働き口がなく、ほぼ無試験で入れるワタミにしか入れなかった人も少なくありません。

    こういう人は、どんな悪条件でも「自分の居場所はここしかない」と思い込んでしまい、無理をして身体を壊してしまう人が多かったです。

    ということで、彼らに共通するのは「ワタミはブラックじゃない」と信じているから入社したわけではない、ということです。そう信じているのは経営陣と、自己洗脳して「ワタミは絶対正義です」と言ってしまうような古参社員だけでしょう。

    渡邉さんは衆議院選挙に立候補した際、テレビ番組の中で、こんな発言をしていました。

    「(ワタミのブラック企業批判は)正直、何とも思っていない。たまたま一つの事故を取り上げてブラックだと責めるなら、日本中には、千・万のブラック企業がある」

    しかし、「みんなやっているからウチもいいだろ」というのは通りません。もしも「みんなやっているから」という理由で自分も振り込め詐欺をやってしまったら、れっきとした詐欺罪になります。

    いくらみんながやっていても、残業代未払いは労働基準法違反なのです。違法は違法。働いている社員が「ワタミは絶対正義」と言っても、駄目なものは駄目なのです。ただ、渡邉さんは、労基法違反なんて大したことじゃないと思っている可能性も高いのですが・・・。

    あわせてよみたい:元社員が語る「外食産業」の舞台裏 バックナンバー

    【プロフィール】ナイン
    北海道在住の20代後半の男性。大学卒業後、居酒屋チェーンWを運営する会社に正社員として入社。都内店舗のスタッフや副店長として約4年間勤務した後、「もう少し発展性のある仕事がしたい」と転職。現場を知る立場から、外食産業を頭ごなしにブラックと批判する声には「違和感がある」という。TwitterFacebookブログ

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