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採用担当者の私が面接で「志望動機」を聞かなくなった理由
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採用担当者の私が面接で「志望動機」を聞かなくなった理由
就活の採用面接で、よく尋ねられるとされる言葉です。エントリーシートのモデルにも「志望動機」の大きな欄が設けられていますし、社会人の先輩たちが「就活」という言葉で最初に思い浮かべるのも、この質問でしょう。
しかし採用担当者である私は、もう何年も前から面接では全く尋ねなくなりました。最近では私だけでなく、他社の人事仲間にも同様の傾向が見られます。「志望動機は何ですか?」という問いは、ほとんど意味がないことが分かったからです。
返ってくる答えは4つのパターンに限られる
就活塾やキャリアコンサルタントの方々は、いまだに「志望動機は何ですか?」という設問に答えることが一番大事だ、と言っているようです。彼らは、採用担当者をしたことがないか、もしくは、ずいぶんと昔に少しだけ経験した程度なのかもしれません。
私が「志望動機はなんですか?」と尋ねなくなったのは、返ってくる答えが4つほどのパターンしかないと分かったからです。
なぜこれらの答えが無意味と感じられるのか、簡単にまとめると以下のようになります。
まず、1つ目の「経営理念への共感」ですが、たいがいの会社は経営理念だけは素晴らしくありませんか? 世間でブラック企業だと叩かれている企業ですら、素晴らしい言葉を掲げています。書いてあることを鵜呑みにするような人は、「短絡的だなぁ」と思わざるをえません。おそらく、そこくらいしか取っ掛かりがなかっただけだと思いますが…。
2つ目の「商品へのファン宣言」をされたら、「これからも弊社のファンでいてください」と思って落とすことがほとんどです。ファンの方には、これからもお客さまでい続けて欲しいと思うだけで、社員になって欲しいと思うかどうかは全くの別問題です。
もちろん、社員が自社の商品が好きであることは素晴らしいことなのですが、それだけでは採用のご縁はありません。BtoC企業の採用担当者から、この話はよく聞きます。
入社志望の「思い」が分からない面接は無意味
3つ目の「社員・社長の人柄に惹かれた」というパターンでは、「そうか、採用業務に社員の○○さんや社長に関わってもらうのは正解だな」と思うだけです。受けに来てくれた就活生の合否には関係ありません。むしろ「社員の中でも抜群に良い人を連れてきているから、好印象なのは当たり前だ」くらいに思っています。
4つ目の「会社に興味を持ったきっかけ」も、例えば「サークルで縁の下の力持ちの役割をしたから、BtoBが向いていると思って…」「子どもの頃からモノづくりが好きで…」というようなストーリーをよく聞きますが、私たちは全く興味がありません。
強いて意味を見出すなら、来年度の採用計画におけるコンセプトの材料にするくらいでしょう。「うちの会社って学生さんからすると、そういうイメージなんだ」と思うだけで、合否にはまず関係ありません。
何百人、何千人に聞いても、返ってくる答えは、ほとんどがこの4つに分類されてしまいます。しかも、話してくれる内容は、会社案内やホームページに載っていることを覚えてきただけのものばかりです。
これでは目の前の就活生が、どんな思いで入社を志望し、採用面接を受けに来てくれたのかが全くわかりません。限られた時間しかない面接時間を、無意味な質問に使うのはもったいないだけです。
本当は「どんな仕事をしたいか」聞くべきだった
しかし、悪いのは就活生というのは酷な話です。これは質問者である私が悪かったのです。「志望動機は何ですか?」という問いが、面接で機能しないことをもっと早くに理解すべきでした。そこで今では、本当の志望動機を聞くために、この質問をしています。
入社するのは、仕事をするためであるはずです。仕事に励むと、結果的に収入があったり、成長があったりします。その要となるのは会社のイメージではなく、仕事そのものですから、仕事への思いを詳しく聞きたいのです。
この時、自分自身が携わりたい仕事を具体的に話してくれると、「よく調べてきたなぁ。本当に志望熱意があるんだな」と自然と思えていきます。どんな仕事に携わり、何を実現したいのかを本音で語ってくれることを願っています。それが本当の「志望動機」です。(河合浩司)
あわせてよみたい:採用担当者が斬る「シューカツの迷信」バックナンバー
【プロフィール】河合 浩司(かわい・こうじ)
上場企業のメーカーで人事課長を務める、採用業務15年超のベテラン。学生たちの不安を煽って金を儲ける最近の就活ビジネスを批判し、ペンネームでのツイッター(@k_kouzi7)やウェブコラムを通じて「自然体の就活」を回復するよう呼びかけている。