• 自動改札機も! 元祖ベンチャー、世界初の開発にこだわるオムロン

    2014年2月27日の「カンプリア宮殿」(テレビ東京)は、大手メーカーのオムロンを紹介していた。体温計や血圧計などのヘルスケア商品が、国内外でシェアトップ。それが主力と思われがちだが、それらの売り上げは全体の1割程だという。

    いまでこそ連結で3万5000人を超える従業員を抱える大企業だが、元々は技術を軸とした「元祖ベンチャー」だ。電気技師だった立石一真が1933年に「立石電機製作所」を大阪に創業し、世界初の「無接点スイッチ」で製造業に革命を起こすと、その後も次々と世界初のセンサー(自動制御)ビジネスを展開していった。

    40年前から障がい者雇用にも熱心

    1960年代に通勤ラッシュが社会問題化していたころ、大手電機メーカーが採算に合わないとして開発を拒んだ「自動改札機」を、4年の歳月をかけて研究開発。世界で初めて実用化に成功した。

    さらに、障がい者を働かせることがタブー視されていた40年前、障がい者雇用の先駆けとなる「オムロン太陽」を設立。独自の技術で障がい者でも働ける製造ラインを確立し、1年目から黒字をたたき出している。

    創業者の立石一真氏が、技術者たちに口癖のように言っていたのが、「できませんと言うな」という言葉だ。様々な社会問題を技術で解決することにより、社会を変えることができる。それが結果的に利益を生み、企業は発展を続けてきた。

    番組編集長の村上龍は、立石一真氏を本田宗一郎やスティーブ・ジョブズにもなぞらえ、“カリスマ経営者”として称賛。現社長の山田義仁氏に「カリスマ創業者不在のなかで、どう企業を発展させるのか?」と問いを投げかけた。

    この問いに山田社長は、「創業者の志を継いだ者たちが集まり役割分担をして、議論しながらオムロンを発展させていく」と答え、大企業がベンチャー精神を失わないよう腐心する姿を見せた。

    「老朽化したインフラ」察知するセンサーを開発中

    1980年代、組織が大きくなり過ぎたがゆえの意思決定の遅さなどの問題にぶつかっていた立石社長は、雑誌の取材に「大企業病」という言葉を初めて使った。ベンチャー精神が失われることへの危機感は大きかったようだ。

    現在オムロンでは毎月1回、部署ごとに発表会を開催。開発のテーマや課題をプレゼンしている。採用の基準は「社会の役に立つと思われるもの」で、多くの製品がこの場から生まれている。プレゼンをしていた若手社員たちは、オムロンでの働き甲斐をこう語る。

    「自分で考えて自分が納得する内容を、失敗しても成功しても続けられる」
    「自分で考えたことが実現したときは、喜びとうれしさは倍増」

    研究中のテーマのひとつに、老朽化した橋やトンネルなどの「危険度」を察知するセンサーの開発があった。高度成長期に建設したインフラが次々と悲鳴を上げ始めるこれからの時代には、本当に必要とされているものだ。

    開発者たちの表情からは、この課題を何年かかってもやり遂げるという気迫が感じられた。この人たちだったらできるだろうな、という期待が高まった瞬間だった。(ライター:okei)

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