• カルプレス氏があぶり出した「ニッポンの謝罪」の本質

    日本のサラリーマンにとって、「謝罪」はひとつの伝統芸能だ。自分に落ち度がなくとも、クライアントに深々と頭を下げて忠誠心を示すことは、取引を継続してもらうための重要な儀式となる。

    会社の不祥事が報じられると、会社の偉い人が報道陣のカメラの前で「世間をお騒がせした」という理由で頭を下げることになっている。リスクマネジメント会社のマニュアルには、頭を下げる角度や秒数まで指定されているという。

    しかし、個人の体面を重視する欧米や中国などでは、公衆の面前で頭を下げさせるなんてありえない、と非難する人もいる。そんな中、マウントゴックス社代表のフランス人、マルク・カルプレス氏がカメラの前で頭を下げたことは、異例の行為だったといえるだろう。

    謝罪に詰まり「なんだっけ……」

    2月28日のカルプレス氏の会見は、マウントゴックス社が運営する取引所への不正アクセスにより、約480億円相当のビットコインが「消失」したと公表するものだった。カルプレス氏は冒頭、マスコミに向かって頭を下げて謝罪したが、

    「あの……申し訳ごじゃいまし……た。なんだっけ……」
    「システムに弱いところがあって、ビットコインが”いなくなって”、みんなにその結果ご迷惑をおかけしまって、本当に申し訳ありませんと思います」

    と片言の日本語で説明するという、気の抜けたものだった。

    日本企業なら「なんだっけ、は不要だろう」と激しい非難があがりそうな会見にも、被害者の99%が外国人だったせいか、巷の反応は薄い。同社に約1500万円を預けていたという投資家の男性も、FNNニュースの取材に対し、

    「ビットコインに投資していた人はリスクがあると分かっていたので、ほとんどの人は『しようがない』と思っている。ギャンブルみたいなもの」

    とあっけらかんと語っていた。

    「とにかく頭を下げればすむ」会見のパロディ

    カルプレス氏の会見は、ネットでも話題となった。彼のつぶらな瞳と、少し笑っているかのように見える口元、丸々とした体格が相まってか、怒りのコメントは見られない。

    「カルプレスCEOかわいい」「地獄のミサワのキャラクターにしか見えない」
    「母ちゃんの財布から金抜いて怒られてる厨坊(中学生)レベルって感じ」

    彼も被害者なんじゃないの? と同情する声すらあがった。

    報道によると、カルプレス氏は現在28歳。アニメ好きの日本オタクで、2009年に来日した。親日的な外国人ということも、こうした見方に影響しているのだろう。

    あらためて会見動画を見てみると、まるで日本の謝罪会見のパロディを見ているような気になってくる。原因もよく分からず、責任の取り方も決めないまま、とにかく頭を下げることで当面の批判をかわす――。

    多くの外国人には屈辱的な行為も、カルプレス氏によって「とりあえず形式さえ守っていれば騒ぎは収まる」という日本的謝罪の本質があぶりだされてしまったようだ。(ライター:ロベルト麻生)

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