ゼンショー現役社員が「すき家改善案」に憤怒 「これは茶番。美辞麗句に飾られた反省ショーだ!」 2014年8月12日 企業徹底研究 ツイート 7月末に公表されたすき家の調査報告書には、社員たちの過酷な労働実態とともに、多様な改善策が提言されていた。ゼンショーHDの小川賢太郎会長兼社長も、記者会見で「改善」を約束しており、これを評価する声もある。 しかし、社員たちの信頼は回復していないようだ。ゼンショー社員のA氏は一連の流れを「小川氏の美辞麗句に飾られた反省ショー」と批判し、会社と共に改革を担うとされる労働組合のZEAN(ゼアン)に対しても「完全な御用組合で、自浄作用はまったく期待できない」と厳しい。 2011年の「ワンオペ解消」宣言も実現されず 「確か2012年3月までにも『ワンオペは完全解消する』って、警察にも新聞広告にも発表していましたよね?」 A氏はこう憤る。すき家への強盗が多発した2011年、警察庁からの度重なる指導に答える形で、12年3月末までに「全店舗を目標に、深夜の時間帯の複数勤務体制を確立することといたします」と発表している。 しかし実際には有効な対策は講じられず、危険なワンオペ(1人勤務)は続いたまま。2013年までの3年間で、全国で起きた牛丼店強盗事件(未遂を含む)の85%以上は「すき家」によるものだ。 8月5日にも千葉県市原市のすき家で、ワンオペをしていた27歳の女性アルバイトが深夜3時頃、強盗に刃物をつきつけられ現金約5万円を奪われた。11日にも栃木県高根沢町のすき家で強盗が発生している。 翌6日になって、小川会長はようやく「ワンオペの解消」を9月末までに行い、人手不足の店舗は「深夜営業を休止」することで労働環境の改善を行うと発表している。しかし、A氏の不信感はぬぐえない。 「24時間営業の見直し? 見直さなくても閉まってますよね(苦笑)。一時閉店すると、その店のアルバイトが近隣店舗に働きに行くので、結果的にワンオペも減ってるのでしょうが、たぶん一過性のものです」 「御用組合」のゼアンは「何もしてこなかった」 会社は、従業員組合会(ゼアン)との間で従業員の労働時間管理を目的に、労使双方が毎月議論を行う「時間管理委員会」を設けることを発表している。しかしゼアンは現状の問題点を熟知していて、ここまで放置していただけではないか。A氏も、労使協議の効果を強く疑問視する。 「これまでに何度も『労使協議会』を開いていますが、改善はまったく進んでいない。都合の良い数字を並べて『改善傾向にある』とすれば、また数年は時間稼ぎが可能になりますよね」 改善への取り組みの監視を期待されているのは、ゼンショーの全社員が加入しているゼアンに他ならない。しかしゼアンに期待できないのは、執行部が経営幹部に完全掌握されている「御用組合」だからだという。 「各店舗で見られるゼアンからのPRは、『これまでの労働組合はストとか、暗いイメージでした。ゼアンは全く新しい関係を会社と作ります。問題を話し合いましょう』というものばかり。従業員の問題を会社にぶつけて解決するのではなく、話し合いをして労働者のガス抜きをしましょう、としか聞こえてこない。そんな組合です」 調査報告書にも、ゼアンは「過重労働の実態を会社に共有し、対応要求を行っている」と書かれていたが、確かに労働環境はひどいものだった。A氏は「ゼアンは労組でありながら、周知の問題に何もしなかった。それが根本的な問題のひとつになっている」と憤る。 会社と労組がズブズブの関係であり、提言や対応策が発表されてもウヤムヤになる体制が続いてきたということだ。このしくみが維持される限り、きっとまた同じことが繰り返されるだろう、ということは想像に難くない。 もし報告書どおりの労働環境が存在したとすれば、不払い分の残業代の請求訴訟が起こっても不思議ではない。しかしA氏によれば、そこまでする社員は出そうにないという。 「すき家の店舗には、給与の金額が自己の計算と合わない場合に使用される『異議申し立て書面』が配布されています。例えば賃金が5000円足りない場合、その理由などを書いて提出するわけですが、会社側から目をつけられ、シフトを削られるリスクを負って、申し立てる人はいません」 「ワンオペ」に代わるビジネスモデルは見えない
ゼンショー現役社員が「すき家改善案」に憤怒 「これは茶番。美辞麗句に飾られた反省ショーだ!」
7月末に公表されたすき家の調査報告書には、社員たちの過酷な労働実態とともに、多様な改善策が提言されていた。ゼンショーHDの小川賢太郎会長兼社長も、記者会見で「改善」を約束しており、これを評価する声もある。
しかし、社員たちの信頼は回復していないようだ。ゼンショー社員のA氏は一連の流れを「小川氏の美辞麗句に飾られた反省ショー」と批判し、会社と共に改革を担うとされる労働組合のZEAN(ゼアン)に対しても「完全な御用組合で、自浄作用はまったく期待できない」と厳しい。
2011年の「ワンオペ解消」宣言も実現されず
A氏はこう憤る。すき家への強盗が多発した2011年、警察庁からの度重なる指導に答える形で、12年3月末までに「全店舗を目標に、深夜の時間帯の複数勤務体制を確立することといたします」と発表している。
しかし実際には有効な対策は講じられず、危険なワンオペ(1人勤務)は続いたまま。2013年までの3年間で、全国で起きた牛丼店強盗事件(未遂を含む)の85%以上は「すき家」によるものだ。
8月5日にも千葉県市原市のすき家で、ワンオペをしていた27歳の女性アルバイトが深夜3時頃、強盗に刃物をつきつけられ現金約5万円を奪われた。11日にも栃木県高根沢町のすき家で強盗が発生している。
翌6日になって、小川会長はようやく「ワンオペの解消」を9月末までに行い、人手不足の店舗は「深夜営業を休止」することで労働環境の改善を行うと発表している。しかし、A氏の不信感はぬぐえない。
「御用組合」のゼアンは「何もしてこなかった」
会社は、従業員組合会(ゼアン)との間で従業員の労働時間管理を目的に、労使双方が毎月議論を行う「時間管理委員会」を設けることを発表している。しかしゼアンは現状の問題点を熟知していて、ここまで放置していただけではないか。A氏も、労使協議の効果を強く疑問視する。
改善への取り組みの監視を期待されているのは、ゼンショーの全社員が加入しているゼアンに他ならない。しかしゼアンに期待できないのは、執行部が経営幹部に完全掌握されている「御用組合」だからだという。
調査報告書にも、ゼアンは「過重労働の実態を会社に共有し、対応要求を行っている」と書かれていたが、確かに労働環境はひどいものだった。A氏は「ゼアンは労組でありながら、周知の問題に何もしなかった。それが根本的な問題のひとつになっている」と憤る。
会社と労組がズブズブの関係であり、提言や対応策が発表されてもウヤムヤになる体制が続いてきたということだ。このしくみが維持される限り、きっとまた同じことが繰り返されるだろう、ということは想像に難くない。
もし報告書どおりの労働環境が存在したとすれば、不払い分の残業代の請求訴訟が起こっても不思議ではない。しかしA氏によれば、そこまでする社員は出そうにないという。
「ワンオペ」に代わるビジネスモデルは見えない