• 日本社会は「主婦パワー」を生かせるか NHKクローズアップ現代が2回にわたり放送

    NHKの「クローズアップ現代」は2014年5月19日と20日、「シリーズ 主婦パワーを生かす」と題して、女性の活躍推進のための課題や問題点について取り上げていた。

    2回の放送を通じて感じたのは、主婦にとって働きやすい職場を作ることが、主婦以外の女性のみならず男性にとっても働きやすい職場となるということだ。誰もが家庭や自分自身を大切にしながら人間らしく生活していくことができれば、ゆくゆくは少子化対策となり、未来の労働力を生み出すことにもなる。(ライター:okei)

    出産で退職した主婦が「新戦力」として大活躍

    19日の放送では、国が昨年度から実施している、高いスキルを持った主婦の「中小企業への再就職」を支援するプロジェクトを紹介していた。ねらいは、出産を機に退職したスキルの高い主婦を「新戦力」として発掘することだ。

    人材派遣会社に登録し、中小企業が求める人材と主婦のスキルをマッチングする。1300人以上の主婦の就職が決まり、即戦力として活躍している人もいる。

    プロジェクトを利用した都内の印刷会社は、大手アパレルメーカーで17年広報を担当していたNさん(46歳)を紹介された。PRのみならず商品開発にも積極的にアイデアを出すNさんを、会社は高く評価している。

    「すごいグイグイ来るんですよね。週に3回で4時間しか来ないんですけど、その中で、自分には何ができるかっていうのを常に考えていて」

    小学生の娘がいるNさんは1日4時間、週3日のパート勤務。時給は1400円で、首都圏のパートの平均の1.4倍だ。

    2人目の出産で大手アパレルメーカーを退職したNさんは、再就職活動でアパレルメーカーを4社受けたものの、残業が前提のためすべて不採用。そんなときに国のマッチング事業を知ったという。

    「前のキャリアが生かせるような仕事ができたらいいな、という希望は捨てていなかった。今は楽しくてしょうがないというか、生きる場所がまた見つかった、という感じですね」

    金属加工メーカーに派遣され、営業リーダーを務めるOさん(43歳)は、週4日、1日5時間の勤務で月収は20万円ほど。「労働時間が半分になっても、フルタイムの7~8割の成果をあげられるモデルが示せるようになりたい」そうだ。

    主婦向けの就業規則見直しが、男性にもメリットに

    とはいえ、短時間労働の社員が増えれば、フルタイムで働く人との不平等感が募るケースも出てくる。旅行プランなどを販売する会社では、社会保険労務士に依頼し、主婦を受け入れるための細かな就業規則を作り上げた。

    従業員3人のうち2人が短時間勤務のため、以前はフルタイムの社員に業務が集中し、残業や休日出勤が頻繁にあったという。このため短時間勤務の人が帰る1時間前、残った業務を重要度ごとに分類し、分担することで時間内の終了を実現していた。

    主婦を受け入れる就業規則が、多様な人材の獲得につながった例もある。施工管理の仕事を分業し短時間勤務で募集をかけたところ、経験豊かな男性社員を獲得することができたのだ。男性(44歳)は、肺に腫瘍が見つかり長時間労働を避けるため転職した。サポート役と分業しているため残業はほとんどしない。

    一方、主婦が働きやすい職場づくりがいくら進んでも、「働いたらソン」という状況が妨げになっているという指摘がある。シリーズ2日目の21日の放送では、女性の社会進出の障壁とみられている「配偶者控除」見直しによる動きを取材・検証していた。

    今年5月、政府の税制調査会で、いわゆる「103万円・130万円の壁」と呼ばれる配偶者控除見直しの議論が始まった。税金や年金の保険料を抑えようと、多くの働く主婦が収入を低く調整していると言われている。

    見直しを巡っては、女性たちから戸惑いの声が上がっている。3人の子供を育てながらパート収入を100万円程度に抑えている女性は、これ以上働くことは厳しいと困惑している。保育所は70人待ちで入れず実母に来てもらっているが、高齢のためこれ以上は頼めない。

    配偶者控除は「問題あり」とはいうけれど

    首都圏に住む40代の別の女性は、夫と4歳の子どもの3人暮らし。夫の手取りと合わせても世帯年収は240万円ほどだ。年間の所得が200万円台前後の世帯は、今の日本で最も多いグループとされる。

    この女性は在宅で時給800円・1日6時間働いて、年収は110万円ほど。年収130万円以上になると社会保険料の支払いで、かえって家計が悪化する。8時間フルに働いても取り戻すことは出来ず、正社員になろうにも資格や年齢制限の壁があり転職は難しい。

    「『なんとか自分で仕事を見つけて、壁がなくなっても大丈夫なようにしてね』というのは、ただ単に放り出されているのかなと思います」

    とはいえ「配偶者控除自体がかなり問題含みなのは明らか」と中央大学教授・宮本太郎さんは指摘する。就労の拡大を抑えるだけでなく、「相対的に豊かな層に有利な制度」になっており、制度の存在自体がパートの低賃金化につながっている。

    「結果的に制度の恩恵を受けられない、働かざるをえないシングルマザー等の環境が厳しくなっている」

    専業主婦でも子育てが終わればどう働くか考えているし、働く女性も家族を大事にしたいと思っている。最近では独身者が介護のために職を失うケースも増えている事を思えば、その時期の生活保障を強める改革も必要だ。

    税制調査会の映像は、男性ばかりで暗い気持ちになった。女性活力・子育て支援担当の森まさこ大臣の「あらゆる政策を同時に推進していくことが大切。ひとつだけを取り上げて、それが実現したら全部ハッピーというつもりは全くありません」という言葉を信じたい。

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