• ブラック企業をひそかに懲らしめる方法 労基署に「調査票」を送ってもらえ!

    ブラック企業の代表的な特徴に「サービス残業の強制」がある。会社にいながら社員がこれに対抗するのは至難の業だ。会社相手に個人が裁判で争うには時間も費用もかかるし、もし勝っても会社に残ることは難しくなる。

    何かいい方法はないものかと探していると、昨年までブラック企業で働いたSさんが「裁判によらずに会社をけん制する方法がありますよ」と教えてくれた。労基署にこっそりチクって「調査票」の対象にしてもらうというのだ。

    Sさんが働く大手資格試験予備校A社では、労基法違反が横行していた。どんなに忙しくても残業申請が認められず、タイムカードを押した後のサービス残業が慢性化。しかし上司は「社員は毎日23時以降まで働いてこそ成長する」と言ってはばからなかった。

    この会社の仕打ちに腹を立てたSさんは、日々の勤務状況を記した手帳を手に所轄の労基署に相談。労基署の相談員は「これだけ証拠があれば会社側に残業代を請求できます。労基署が間に立つこともできますよ」と親切に応対してくれた。

    しかしSさんは「自分はサービス残業のない職場にしてほしいだけ。名前は出さないでほしい」と請求を拒んだ。自分が告発したとバレたら、今後のキャリアに影響すると思ったからだ。すると相談員は、こんな方法を提案してくれたという。

    「労基署では毎月、企業に対して労働環境に関する『調査票』を送付しています。対象は、管轄区域にある20社ほど。調査票を返さなかったり回答から違法性がうかがえる企業には、立ち入り調査や社員への面談など次のステップが待っています。この調査票の送付先に、A社を加えるということでどうでしょうか」

    これなら形式上は労基署が調査対象を選んだことになり、Sさんに影響が及ぶリスクも減る。ただしこの方法だと、調査結果をSさんに直接知らせることができなくなる。Sさんは少し不満だったが「何もしないよりマシ」と判断して任せることにした。

     一般社員の「サービス残業」はめでたく根絶したが

    労基署に相談して1ヵ月ほどしたころ、会社に動きがあった。「労働安全衛生委員」という社員が、午後6時以降に社内に残る社員を強制的に帰宅させ始めたのだ。Sさんは「ああ、調査票が会社に届いたんだな」と思ったそうだ。

    実はこの会社には「前科」があり、労基署の調査がきっかけで数千万円の未払い残業代を払ったことがあったらしい。そのため「労基署」という名前には神経質になっていた。後になって「調査票が来たとき、幹部たちはかなり慌てていた」と耳にしたそうだ。

    これで一般社員の残業はひととおりなくなったが、その煽りを受けたのが管理職だった。「始発でシャワーを浴びに帰り、とんぼ返りで出社したよ」という管理職もいたが、過重労働を減らす根本的な対策が取られないままだ。

    「この会社にいてもこき使われるだけ」と悟ったSさんは、まもなく転職に踏み切ったという。結局、会社を変えることは難しく、自分を変えてヨソに出て行くのがいちばん手っ取り早いということだろうか。

    【その他の仕事のエコノミクスの記事はこちら】   

  • 企業ニュース
    アクセスランキング

    働きやすい企業ランキング

    年間決定実績1,000件以上の求人データベース Agent Navigation
    転職相談で副業