• 3年未満でクビ、退職金の約束ホゴに 「在日外資」にもブラック企業はある

    カナダ人のローガンさん(仮名・男性・41歳)に外資系企業の労働環境について聞いたところ、在日外資の中にもブラック企業があると教えてくれた。カナダの大学でMBAを取得後、来日して日本の大手製薬会社に就職。海外市場を担当したのち、5年前に都内の外資系広告代理店に移り一昨年前まで働いていた。

    入社後は医療製品の市場調査を担当し、普通の会社だと思っていたが、数か月後あることに気付いた。勤務中、同僚が上司から別室に呼ばれ戻ってくると暗い顔をしている。どうしたのと聞くと、「クビと言われた」と言うのだ。

     労基署の「外国人相談窓口」は親切に対応

    外資系企業では、いきなりクビを切られるのは珍しくない。クビ宣告後30分以内に追い出す会社もある。しかし、この会社は成績の悪い社員をクビにするのではなく「入社3年に達する直前の社員」をクビにしていた。

    「この会社では、入社3年目を超えて辞めると退職金が支給されることになっていて、それを売りに人を集めていたんです。しかし実際には、その直前にクビを切るわけ。最初から払う気がなかったみたい(笑)」

    「3年直前社員」を退職させる手段には、他にもあった。終電を過ぎても終わらない仕事を与え、残業代を支払わないのだ。ローガンさんもこのワナにはめられ、これでは体が持たないと退職を申し出たが、会社はここでもブラックぶりを発揮した。

    「『引き継ぎがあるから有休(の取得)は無理だね』って言われた」

    引き継ぎに必要なのは、せいぜい2日。退職予定者に有休を使わせたくなかったらしい。頭に来た彼は日本人の友人に相談。労働基準監督署で外国人労働者の相談にも乗ってくれることを教えてもらい、所轄署に電話をかけた。

    「ロウキショの人は、『大丈夫、警告しておきます』と言ってくれた」

    労基署の対応は早く、数日たって出社したとき、外国人の上司はにっこり笑って「ローガン、好きなだけ休んでいいからね」と言ってくれたそうだ。

     外国人上司も「郷に従え」とブラック化

    ブラック企業というと日本企業独特のもののように思われるが、実際には違うようだ。本国ではワークライフバランスやコンプライアンスにうるさい外国人上司も、日本では「郷に入っては郷に従え」とばかりブラック化する。

    日本市場で競争し、日本人の上司の下で出世を狙っているからだ。「あいつは使えなかった」とレッテルを貼られては、本国に錦を飾ることはできない。

    企業インサイダー編集部には、社長が馬乗りになって社員を殴りつける外資系製薬メーカーの日本法人の情報が寄せられている。

    また「労働時間の順守」を呼びかけるメールを社員に送りながら、口頭で休日出勤を命じる外資系自動車メーカーの日本法人の情報も入手済だ。

    世界的食品大手のネスレも、2008年頃までは本社ウェブサイトにある労働者の権利保障をうたった企業活動原則が日本法人のサイトになく、最高裁も認めた不当解雇や労働委員会が認定した従業員差別による不当労働行為が多発していたそうだ。

    そういえばローガンさんは退職後、日系のエージェントを利用して日本の化学製品メーカーに就職したという。仕事の内容も充実し、労務コンプライアンスもしっかりしていて、とても働きやすいそうだ。日本企業はブラック、外資はホワイトというわけではなかった。

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