• 年収2000万円を「しょぼいビジネス」と言う金融マンの正体

     主催するブログ「金融日記」が月刊100万ページビューを誇るという、人気ブロガーにして、現役の外資系金融マン、藤沢数希氏。

     その最新の著書が「外資系金融の終わり」だ。

     あちこちに、ひとしきりの自慢がちりばめられている。ツイッターでも7万人超のフォロワーがいると言うし、プロゴスなどから配信される有料メルマガ「週間金融日記」も、購読者数は「日本有数」であるそうだ。

     だが本書は、たとえばアマゾンのカスタマーレビューを見ると、評価は「真っ二つ」に分かれる。星1~2個か、それとも星4~5個か。M字状態に賛否は二分され、その内容もかまびすしい。

     貶している人間は、容赦がない。

     「買う必要なし。金融日記で有名な著者だが、ブログでは面白かったものが、書籍になるとこんなにもつまらなくなるとは」

     「著者の有料ブログは面白いが、本書は期待を大きく裏切る出来栄え」

     一方で、まるで正反対の高評価もある。

     「大変有意義で是非読むべき本だ」

     「金融本としては最高峰。ブログなどの鼻につく発言で、レビューは荒れがちだが、この本は、リーマン・ショック後に書かれた金融本としては最高のでき」

     このように評価が割れる背景の一つには、著者の特異なキャラクターがあるだろう。著者自身が、高年収を誇る現役の金融マンだ。

     アマゾンでは、本書の低評価があふれる理由について、ある評者がこう書いている。

     「著者のきらびやかな生活を妬む一部の読者が、腹いせに低い評価をつけて、悪態をついているようだ」

     毀誉褒貶の激しい一冊。いったいどのあたりが、このように読者の感情を逆なでしてしまうのか。本書の特徴的な記述を見ていこう。

    ●「1億円の手数料とは、しょぼい」

     著者が、外資系投資銀行のトレーダーとアナリストを比較しているくだりは、とりわけ興味深い。両者をこう対比している。

     「トレーダーは、1日に1億円を儲けたり損したりしている」

     「しかしセールスやアナリストは、1年間に1億円の手数料を払ってもらえるか、というしょぼいビジネスをする」

     1人が、年間1億円をもうければ、普通の会社ならばとんでもない優秀社員だ。ところが外資系投資銀行は、「そんな儲けなど、1日で出せ」と言わんばかりであるらしい。

    ●「年収2000万円なんか、貧乏人だ」

     このようなトレーダーと、セールスやアナリストの比較から、著者はさらにこう書き進めている。

     「セールスやアナリストの給料は極めて安く、総じて彼らは貧乏だ。給料はせいぜい2000万円かそんなもの」

     そして、たとえ調子が良い時でも、ボーナスは「しょぼい」という。いくらか。

     「1500万円くらいしかない」

    ●「フェラーリを買うほど、みじめだ」

     著者の知人で、入社3年間くらいという新人は、この1500万円のボーナスを投じて、赤いフェラーリを買ったそうだ。著者はこう書いている。

     「同情を禁じ得ない」

     なぜか。それは、著者に言わせれば、

     「自分たちの貧乏なコンプレックスを克服しようとしている、なんとも惨めな光景」

     だからだそうだ。六本木で信号待ちをしているフェラーリを見ると、

     「なんてダサい」

     と思うのだそうだ。


    物理・数学を駆使する金融マンは3000万で頭打ち

    ●「上場企業の社長程度の給料しかない」

     では、そんな著者自身は、いくら収入を得ているのか。

     「確かに僕は一流ではなかった。それゆえに僕の給料も、上場企業の社長よりちょっと多いぐらいの大したものではなかった」

     だから毎日、朝早く起きて長時間勤務に耐えているという。

    ●「所詮は3000万円で頭打ち」

     著者は理論物理学を修めて、この世界に入ったようだ。そして、こうした物理や数学を駆使する金融マンは、高収入を得られるらしい。

     金融工学の博士号をとって外資系に入れば、初任給から年収は2000万円だという。しかし、この金額についても、著者はケチをつける。数理学を駆使するクオンツという仕事の場合は、その後に給与が伸びないのだそうだ。

     「3000万円で頭打ちになる。伸びしろがとても少ない。所詮はミドルオフィスの人間なのだ」

     ところが著者も、こうした初任給2000万円からスタートしながら、3000万円で頭打ちにならなかった。入社3年目にライバル銀行から引き抜きにあったからだ。

     「たまたま年収がほぼ2倍という条件で引き抜かれた」

     と自慢している。3年目で4000万円になった、と言いたいのだろう。

     本書には他にも、取引相手を口説き落とすために、若い女性社員を使って仕向ける「色じかけ」の話などが出てくる。

     これらがすべてが真実かどうか。読者が自分なりに判断するしかないようだ。

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